大学バレーを追いかけた1年だった話。①(といいつつ今回は『2.43』の話)


年度が替わってしまう前に…!!
私がここまで大学バレーを一生懸命追いかけられたのは、この代、この1年だったからというのもきっと大きな要因なので。

といいつつ、どこから書き出そうか…(笑)
『2.43 清陰高校男子バレー部』という本を読んでそのキャラがどういうところで動いているのか実際に空気を感じてみたい!と思って大学バレーを見に行ってみたら大学バレーにはまりましたという話。

春季リーグ、東日本インカレ、秋季リーグ、全日本インカレ、果ては推し大学が出場するので天皇杯まで見に行った1年だった。
そして1年間追いかけた子たちが卒業してVに行くっていうんで、先日Vリーグの試合も観戦デビューしてきました…。

大学バレーの話といいつつ、私の中でそれは『2.43』ありきの話なのではずはその話から。

『2.43 清陰高校男子バレー部』。その名の通り、清陰高校に通う男子バレー部の生徒が主人公の、小説です。(2021年にノイタミナでアニメも放送されたよ!)


そもそもなんでこの作品を読み始めたかと言ったら、作者が壁井ユカコさんだったから。


私、彼女のデビュー作からほぼすべての作品を読んでるくらい大好きな作家さんなのです。でも、この『2.43』の1作目が発売された当時はTwitterとかも全然やってなかったし、一人暮らしを始めて本屋さんにあんまり行かなくなってたっていうのもあって、新作が出ていることを知らなくて。たっまたま本屋さんに行ったらキャンペーンで平積みされてて「えっ!?」って思って即買いしたのを今でも覚えてる。


壁井さんってデビュー作もファンタジーだし、その後もファンタジーというか、特殊設定(というと語弊がある気もするんだけど)というか、現実世界からちょっとはみ出した世界観の作品が多かったから、表紙を見て、「バレーボール…?これは本当に私の知っている壁井さんの作品なのか???」って思ったけど、読んでみたらやっぱり壁井さんが書く世界は分厚くて骨太で読み応えバツグンで、私の感性にぶっ刺さりまくりました、、、。


ぶっ刺さった結果、『2.43』との出会いがどれだけ私の人生にインパクトを与えたかというと。

そもそも私は小さいころからわりとスポーツには慣れ親しんできたので、メジャーなスポーツはだいたいなんとな~く楽しめるんだけど、バレーボールだけは!全然できない人生だったのよ(笑)もともとバスケをやってたからその思考がベースになってて、相手チームとネットで分断されているバレーボールの動き方が全然わかんないっていうのもあるし、ボールの飛ばし方もわからない。戦略戦術とまでは言わないけどそもそものセオリーもわからないというか。
だから自分ができないのはもちろん、見ててもなんでやられているのかがわからないし、どこに差があるのかわからないし、何が勝敗を分けているのかがわからなくて、「よくわからんうちに勝った」か「よくわからんうちに負けた」くらいしか感想がなかったんだよね。


それが今では、まぁ、いまも相変わらず戦略戦術なんてものはわからないんだけど(笑)、それでも、「動線つぶすためにここにサーブ打ったんだな」とか、「1打1打ディグの位置取りこんなに動いてるんか…!」とか「今はこういう意図があってこう動いたのかな?」とか、情報量が圧倒的に多くなってバレーボールめちゃくちゃ面白いスポーツじゃん…!!!ってなってる 。

で、その見どころというか見るべきポイントを学んだのが私は『2.43』だったわけです。



『2.43 清陰高校男子バレー部』といいつつ、最初は中学時代から始まるし、最新のシリーズは大学生になってるんだけど、その成長もまた、なんというか感慨深い。。。

公式のあらすじを引用すると
"東京の強豪中学バレーチームで深刻なトラブルを起こしてしまった灰島公誓は、子供時代を過ごした母方の郷里・福井に転居し、幼なじみの黒羽祐仁と再会。
ずばぬけた身体能力を持ちながらプレッシャーに弱い黒羽と、バレーへの圧倒的な情熱と才能ゆえに周囲との摩擦を引き起こしてばかりの灰島はエースコンビとして成長していく。"
っていう話。
※最新シリーズの連載も完結しました!しばらくは無料で読めるはずなので、ご興味があればぜひ!!(2023/3/3)


私がこの作品に魅力を感じている理由は多分大きく3つあって、
①複数の視点が入れ替わることで、世界観を立体的に感じることができる
②ちゃんとバレーボールの魅力が伝わる
③現実とリンクするモデル・舞台設定
ってところだなと思ってる。


①複数の視点が入れ替わることで、世界観を立体的に感じることができる
主人公2人の視点だけじゃなく複数の視点が入れ替わっている、かつ、ライバル校の選手のエピソードがこれでもかってくらい骨太に書かれているから、なんというか、「解像度が高い」っていう感覚が近いのかもしれない。

私はかなり感情移入をするタイプなので、視点が変わるたびにそのキャラに100%感情移入しちゃうからさ、その時の私は灰島であり、黒羽であり、三村であり、弓掛であり、浅野であり、太明なのよ。
学校も学年も違うし、これまでどういうバレーボール人生を歩んできたかも違うし、バレーボール以外の環境だって違う。

主人公2人が成長する話ではあるんだけど、その2人が立ち向かっていく『王者』にもそこに行きつくまでの過程がある。苦労があって挫折があって乗り越えてやっとその地位にたどり着いて、そしてそれを維持するために誰にも負けないように努力をしている。

各々の目線・立場から見た「1試合」があるのよ。

自分の人生では全然通ってこなかった未知の世界だけど、そんな各々の立場から見たバレーボールという世界の話を聞いて、バレーボールってこんな1面もあるのかっていう「面」をたくさん知ることができた気がする。そしてその面と面がつながって、「こんな形なのかな?」っていうのが少しずつ見えてきたような気がしている。


②ちゃんとバレーボールの魅力が伝わる
これ、すんごいざっくりなんだけど、これ以上の言葉はないんだよなぁ、、。

試合のシーンとかね、臨場感がすごいの…!!!
文章のテンポがなせる業なのかなぁ。なんというか、「小説を読んでる」んじゃなくて「試合を見てる」んだよね。なんなら解説付きで。

テンポ感(これは大学バレーを追いかけた今だからわかることかも)も含め試合展開の描写はもちろん圧巻なんだけど、そこに選手の目線とか戦術の描写が絡められているから、こんなこと考えてるのか…!とかこのプレーにはそんな意味が!?っていうのをめちゃくちゃ知れる。
それによって、1点の重さだったり試合の流れだったりがより「わかる」ようになるから面白いっていうのもあるんだけど、試合のシーンに至るまでの各々のエピソードでさ、もう全員のこと好きになっちゃってるわけ(笑)全員に勝ってほしいのよ(笑)

ネットのこっち側の子たちのエピソードも、あっち側の子たちのエピソードももりもりで、どっちの子たちの「この試合」にかける想いもわかってしまっているから、なんかね、どっちが勝ってもおかしくないんだよ。どっちが勝っても納得できる。1点が嬉しくて、悔しい。

メタっぽい話をすると、主人公のチームだからこっちが勝つだろとか、残りの分量的にこっちが勝つだろみたいなのが全然あてにならない。「どっちが勝つかわからない」加減が、まっっったく違和感なく、いつの間にか刷り込まれている。

でもそれがめちゃくちゃリアルだと思うんだよね。
どっちが勝つかわからないからドキドキする。勝ってほしいからヒヤヒヤする。負けてほしくないからハラハラする。

昔、何かで『スポーツ観戦に行く人は感情の起伏にお金を払っている』っていう主旨の記事を読んだことがあって、確かにそうだなと思っているんだけど、この本を読んだときまさにその感情の起伏が臨場感を持って引き起こされてた。


③現実とリンクするモデル・舞台設定
①と②のポイントで私はバレーボールに俄然興味が湧いてはいたけど、そこから実際の会場に見に行くに至る最後の一押しになったのは、作中にちりばめられたモデルたちの存在なのです。

私が明確にモデルがいるなと認識しているのはサードシーズンの春高編から。
長野県の強豪として北辰学園っていう学校が登場するんだけど、作中でインハイ・国体・春高の三冠を2年連続で達成しているんですよ。
はじめは「えらい現実離れした学校だな」って思ってたんだけどさ、なんか調べてみたら現実にもそんな年があるじゃないですか…!

それが、現日本代表キャプテンの石川くんが在籍した当時の星城高校。(私がそれに気づいたときは石川君はまだキャプテンじゃなかったけど)
そこから石川くんがちょっと気になるようになって、実際のバレーボール事情への興味がぐんと増した。

バレーボール事情への興味がました状態で読む4thシーズン。舞台は関東一部の春季リーグ。
実際に、大会が、ある。(いや、春高も実際にある大会なんだけどさ。笑)
そして読んでみるとかなり詳細な会場の描写。

これ会場名もじってるけどモデルあるんじゃない?

でも、100%鮮明にイメージできるかと言ったら私の知識量じゃちょっと足りない。
越智は今どこに座っていて、浅野はどの角度で立ってるの?
チカとユニはどんな空気を感じて、どうやって動いている?
旗持ちって、なに?カモシカのように飛び出すってもっとなに!?笑

チームごとの特色がかなり差別化されて書かれているけど、これ、登場する学校にもモデルがあるんじゃない?
作中で描かれているこの学校のモデルはどこなんだろう?実際はどんな学校なんだろう?

そんな気持ちで、『2.43』の世界をもっと鮮明にしたいと思って、春季リーグについて調べ始めた。
ご時世柄、中止になったり、無観客になったりしていたみたいだったけど、何とか今年度は有観客で開催される試合もありそう…!ということで、小田原アリーナに足を運んでみました。

そしたら、「沼にはまる」って秀逸な表現だなぁって思うほどに、いつの間にかゆるゆると足を取られ(笑)、現在に至る。


ということで。
『2.43』を読まなければ私は大学バレーという世界を知らなかったし、Vリーグを観戦することもなかった。
そしてこれまでに書いた3つの要素のどれかが欠けていても、多分私は実際に見に行くまでには至らなかったと思う。

私にとっては、『2.43』がとてもちょうどいい情報量で、ちょうどいい距離感で、そしていいタイミングで、大学バレーに手招きしてくれたなぁと思います。
(『ハイキュー!!』も全巻持ってるし、大好きな作品だけどね!)


バレーボールがすでに好きな人にもとてもおすすめな作品だし、『2.43』が好きな人には大学バレーの観戦をおすすめしたい。

今となっては、私も卵が先か鶏が先か状態なくらい、切っても切り離せないとても素敵な作品とその舞台のお話でした。



では、満を持して、次回こそ「大学バレーを追いかけた1年だった話」をするぞ!笑

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