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けらけらと話す人。

先日、初めてサイン会というのに行った。noteをご覧の方ならよくご存知の、岸田奈美さんのサイン会である。

Twitterでサイン会があるのを見つけた。サイン会場は職場からそんなに遠くなかった。岸田さんの本は買ったことがなかったけど、noteやTwitterの文章はとても好きで、だからどんな人か会ってみたかった。

仕事をいそいそと抜けて、レンタサイクルに乗る。会場に着くと、すでに行列ができていた。本は会場で買おうと思っていたから、少し心配になった。列はゆっくりと進んでいく。

近づくに連れて、岸田さんのけらけらとした声が聞こえてくる。いそいそと本を購入。買ったのは新刊の、飽きっぽいから、愛っぽい。かぞかぞは書き下ろしが追加された文庫本で買おうと思った。カバンから手紙を出す。一言だけど、なにか伝えたくて手紙書いてきた。応援してますって、ファンみたいだなと思う。

「はーい、お茶飲ませてもらいますね。」が彼女の一言目だった。手紙とか、渡していいですか?ときくと、「もちろん、今読んだ方がいい?」と聞かれるから、後でと答える。同い年だと思うんです、初めて買いました、にわかだけどきちゃいました。何を言っていいかわからなくて、支離滅裂だ。

「石原さとみに似てるね」と、サインを書いてくれながら、岸田さんが言った。「似顔絵も描いていい?」さらさらと、僕の顔が、岸田さんの顔の隣に描かれていく。

ありがとうございます。写真を撮ってとは、恥ずかしくて言えなかった。お礼を言って足早に階段を降りる。後ろ髪は不思議と惹かれなかった。階段を降りながら、そういえば手紙にはペンネームで署名したなと思い出した。そこには、ある種の対抗意識というか、決意があったはずだけど、岸田さんにあったことでそんなものはどこかへ行ってしまった。

レンタサイクルにまた飛び乗って、職場へと帰る。背中のリュックに入れた本から、岸田さんのけらけらとした声が聞こえてくる。

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