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おめかしして、出かけよう。

お出かけ前の妻が可愛らしい。

久しぶりに会う友達とランチだということで、朝から妻は少しソワソワしていた。長男を保育園にを送り出して、朝のコーヒーで一服してから、相変わらずソワソワしながら彼女は支度を始めた。洗面所のある2階と、寝室のある3階を行ったり来たりする足音が聞こえる。

「どっちがいいかな?」

黒のスカートを手に持ちながら、彼女が僕の前に来た。第一候補は、「北欧、暮らしの道具店」の秋イチボトムスと、モカ色のベーシックニットの「おじさんコーデ」。第二候補は、ボトムをスカートに変えたもの。

「今日の主役は、新しい靴下なの。」

足元から覗く黒地に花柄の靴下を見せながら、彼女はこちらを向いて首を傾げる。そんな姿に、「あぁ、可愛らしいな」と自然に思ってしまった。長い付き合いで、彼女がおめかしするときは、ワクワクしているときだというのを知っているから。家族以外の誰かに会いに、1人でお出かけする機会がすごく楽しみなんだなぁというのが滲み出ていて、それが遠足前の子どもみたいで可愛かったのだ。

スカートの方が、僕は好きだな。靴下が主役なら余計に。そう伝えると、彼女はふむふむと着替えを始めて、次はニットをインするかどうか悩み始めた。「靴下が主役なら、ニットはインかな…。」と呟きながら、また階段を登って行ってしまった。きっとメイクをしに行ったんだろう。髪の毛もまだ跳ねていたから、オイルが何かつけてくるのかな。と、想像しながら、僕も残りのコーヒーを飲み干す。

欲を言えば、たまには僕のためにもおめかしをしてほしいなぁと思った。今日のところは可愛い姿を1番に見れたからよしとするか。階段を軽快に降りる音が聞こえてきた。いってらっしゃいをいうために、僕はソファから腰を上げた。

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