自分でも意外なことに、ヘミングウェイが好きである。と言っても、その作品をたくさん読んだわけではない。私が好きなのは『日はまた昇る』と『武器よさらば』に限られている。とりわけ好きなのは『日はまた昇る』で、4,5回は読んでいるだろう。 どこが面白いのかと言われても、説明がむずかしい。若いアメリカ人の新聞記者(ヘミングウェイ)がパリでメシを食べワインを飲み、夜ごとに若い男女と羽目をはずす。バカンスでスペインに行き釣りを楽しむ。パンプローナで闘牛に夢中になり、複雑な恋愛関係があり、
生前、父から戦争の話を聞いたことがない。 父は6年前の8月に亡くなった。葬儀の前、故人略歴を確認するために私は叔父に「父が徴兵されて戦争に行ったのは、何年だったのか」と訊いた。すると、それは違うという返事が返ってきた。「兄貴は志願して戦争に行ったんだ」と叔父が言ったとき、私は心底驚いた。父が志願して戦争に行ったなどとは、まったく考えたことがなかったからだ。 「兄貴は泳ぎが上手くて海軍に行きたかったんだが、その試験に落ちたんだ。それで次は陸軍に志願して、今度は受かった。馬に