顔を知らない好きな人が消えた 20211004

Twitterが好きだ。

その中で、顔も知らないけど、生きていく上で忘れたくないことを独り言のようにつぶやく人がいた。本を出版したので買った。でもその人のことは、素敵なことを言っていること以外、何も知らなかった。多分二年くらい。ツイートされるたびに、その味をスルメイカのように噛み締めた。素敵なパフェ、素敵な映画、素敵な小説。僕はコーヒーが飲めないけど、紅茶の美味しさが分かるようになったりもした。一度憧れたら、しばらくはその影響を受け、恩恵に預かっているタイプだから。いいなって。僕の思う素敵だ。

事態がついさっき急転した。

突然、消えた。消えていた。さっき、ある曲を聴いて、その人をまた思い出して。アカウントを探した。

『このアカウントは存在していません。』無機質なインフォメーションがそこにあるだけだった。表情を変えずとも、唖然とした。

いなくなっている。存在が。心の風通しが良くなった。

難しい映画やコーヒー、全部君が教えてくれたね

好きなアイドルがそう歌っていた。まさに曲中の「君」に似ていた。失恋とは違う。でもたしかに好きなんだ。現在進行系で、僕の一方通行な、好きな人。著書を思い起こして、連想する。作中の登場人物は、誰にも知らせず亡くなった。あなたも、同じ道を辿るのだろうか?

ずっとツイートを見ていたい反面、いつかフラッと姿を消すのだろうと予感していた。猫が死ぬ直前、姿を隠すように。突然消えることを、いとも簡単にしそうな、ある種の身軽さを持っていると思っていたから。少/年ノートの穣のような、イメージの定着と軽っと居なくなるあの感じ。

悲しいな この感情の行き場が見当たらない。

どうして姿を消したか?

理由などないのかもしれない。なんとなく、「」の名前やイメージが定着したから、そろそろ何かしらの頃合いだと思ったのかもしれない。だがあくまでも僕個人の想像にしか過ぎない。追求するのは野暮。

好きな人。恋人、崇拝対象、自分自身。意味はたくさんある。その沢山に含まれるのかは分からないけど、確かにあなたは、僕の好きな人。

こんな秋の夜風が身に染みるこの時期は、あなたっぽい気がする。

これは一方的な、あなたの外側に憧れ恋した人間の、ラブレターです。

好きなだけ好きな生活を続けてほしい。生活に、よかったなって思ってほしい。忘れられない人だから、大切で。なんとなくログアウトしただけなら杞憂に過ぎないけど、そうじゃないのなら、?戻らなくてもいいと、そう思ったのなら、もう関われないかもしれないから。運命に身を任せることにします。

どうか、どうか。この世のどこかで、今日に満足していけますように。

拝啓、声も顔も香りも知らない、僕の好きな人。


p.s.もう二度と会えない予感がした。

そんなの小説の中だけで十分なのに。


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