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藍より青し

「Go!サニックスボムズ!Go!サニックスボムズ!」
外国籍選手の子供達が、試合展開に関係無く叫んでいる。

2002年秋・まだネーミングライツも無かった頃の、博多の森球技場。
翌年からトップキュウシュウリーグに名称を変更する、最後の西日本社会人ラグビーAリーグ。
優勝すれば、翌年から発足する全国社会人ラグビーリーグ・ジャパンラグビートップリーグへの参加が確定するとあり、上位チーム同士の激しい潰し合いが展開されていた。

オックスフォード大からの留学帰りの淵上選手を擁するコカ・コーラウエストが、創部以来初となる名門・九州電力からの勝利を、ラストワンプレーで逃した第1試合に続いて。

優勝候補・サニックスが登場した。

「我々がニュージーランドに合宿に赴くのは、ニュージーランドスタイルを覚える為では無い。ニュージーランドスタイルを倒す為なんです」

当時のラグビーマガジンの、シーズン開幕前のリーグ毎のチームインタビューで、対抗馬と目されていた九州電力のキャプテンがそう答えていたのを記憶している。

現・日本代表HCであるジェイミー・ジョセフ氏がまだ現役で、先述した通りニュージーランドスタイルを取り入れていたサニックスは新興チームながら、西日本社会人Aリーグで3強の座を確立していた日新製鋼・ニコニコドーの廃部、マツダの活動規模縮小と入れ替わる形で、王者に君臨し続けて居た。

この日の対戦相手のマツダを、ダブルスコアで圧倒。
先程まで叫んでいた子供達は、飽きたのかスタンドを走り回って遊んでいた。

今のリーグワンよりも遥かに観客数の少ない、まだ宗像どころか福岡も付いてない、知る人ぞ知る愛称でしか無かった「ボムズ」(トップリーグ参入後、正式にチーム名に加わったが)時代の、当時鹿児島県に在住してて、福岡に行く用事のついでのお話。

これが後の宗像サニックスブルースを生で現地で観た、最初の試合でした。


トップリーグで初めて観たのは、約14年後の2016年。
瑞穂ラグビー場でのナイター開催、Honda HEATの開幕戦の相手として。
3度目のトップキュウシュウリーグからの復帰を果たしたサニックスは、かつて西日本社会人Aリーグを席巻したニュージーランドスタイルでは無く、独自に築き上げたランニングラグビーで後半Hondaを圧倒。
このシーズンからトップリーグが再編されジャパンラグビーリーグワンに生まれ変わるまで、サニックスが降格する事は無かったです。


前年(2015年)からラグビーのW杯が日本で2019年に行われる事もあり、丁度15年大会の日本代表の躍進も重なって、ラグビーに興味を持つアカウントの方も増えたので、Twitterのフォロー/フォロワーさんと交流を深めて、少しでもラグビーの認知度を上げよう、

・・・と、今思えばなんちゅうおこがましい事を考えてたんやろう?って話なんですが←、そんな時に、1人の熱心な宗像サニックスブルースファンの方と出会う事になりました。

お世辞にもお互いの贔屓チームが強い訳では無く、
「パナソニックやサントリーのファンには分からないですよ。この気持ち」
「強さとか、そういう事じゃ無いんですよ」
と熱く語られる姿にいつも笑いながら共感を覚え、でも対戦相手になった時にはバチバチに張り合う。

試合が終わったら素直に悔しがって、でも談笑しながら試合を振り返る。

ライバルチーム(○○ダービーみたいな)って関係では無かったんですが、こういう所はほんまにラグビーらしいなぁ、と思いながら、対戦するのを楽しみにしてました。

何やかんや言うて、現地には来られる方やったんで。

パロマ瑞穂ラグビー場で近年行われたHondaーサニックス戦は死闘続きで、昨季全敗同士で対戦した試合(25-24でサニックスの勝ち)の帰りに、みんなでお茶しに行く道中。

「来季、リーグが再編されますけど、どうなるんでしょうね」
「Hondaもサニックスも、1部は無さそうなんですよね」(1部が12チームになるのは、この頃既に公表されていた)
「同じ部(ディビジョン)になるかも知れませんしね」
「何部になっても行きますけどね(笑)」

こんな感じの、他愛のない会話をしたっけなぁ。

「同じ部(ディビジョン)になるかも知れませんしね」
この願いは、叶わなかった。

宗像サニックスブルースが、活動規模を縮小するかも知れない。
そんなニュースが、シーズンの終わりが近付いてた4月に流れた。

その後、宗像サニックスブルースは選手の大量離脱・廃部になった、同じ福岡を本拠地に構えていたコカ・コーラレッドスパークスの選手をメインに補強を行い、再編されたジャパンラグビーリーグワンのディビジョン3からのスタートとなった。

Honda HEAT改め三重ホンダヒートは、ディビジョン2スタート。
「ディビジョン1で再会しましょう」
そう言って開幕を楽しみに待ち、シーズンも佳境に入り出した頃。

その願いも、叶わなくなる。

宗像サニックスブルースが、今季限りで休部(事実上の廃部)を検討している。
昨年と同じ様なタイミングで情報がリークされて流れ、後日、正式にチームからの発表が行われた。



2022年。
5月8日。

愛知県・パロマ瑞穂ラグビー場。

NTTジャパンラグビーリーグワン 2022 ディビジョン3 順位決定戦 第3節。

宗像サニックスブルース、最後の公式戦。

そう。
パロマ瑞穂ラグビー場。
最後に贔屓チームとの対戦を観た、試合会場。
最後にサニックスファンの方々と談笑して帰った、試合会場。

対戦相手は、三重ホンダヒートじゃないけど。

ディビジョン3のリーグ戦で、宗像が2位になって無かったら。
1位が、対戦相手の豊田自動織機シャトルズ愛知じゃ無かったら。

贔屓チームの三重ホンダヒートが、同じくディビジョン2のリーグ戦で3位になって無かったら。

日程や試合会場の関係で、恐らく観に来れて無かったと思う。
巡り合わせって不思議ですね。

見届けに来い、って事やったんでしょうね。

宗像サニックスブルースと言う、日本ラグビー界に一石を投じたチームを。
そして、そのチームに魅せられた人の姿を。

どちらのホームか分からないくらいに、宗像のプレーにスタンドが沸いていた。
あぁ、サニックスのラグビーだ。
立って繋ぐ、相手を振り回すラグビーだ。
セットプレーは弱いけど。

豊田自動織機シャトルズ愛知 55-29 宗像サニックスブルース

先制して。
途中追いすがったが。

宗像サニックスブルースの28年間が幕を閉じた。

ホストチームの愛知の粋な計らいで、サニックスの歴史を振り返る映像が流れ、松園監督の挨拶があり、ファンとの記念撮影も行われた。
優勝したのは自分達なのに。
Div2に昇格したのも自分達なのに。
主役は自分達なのに。

改めて、みんなに愛されてたんやな、と実感する。

パロマ瑞穂から名古屋駅に向かう道中。
いつもと変わらず談笑して。
新幹線の改札を通るのを見送って。
宗像サニックスブルースに魅せられた人は、福岡への帰路に着いた。

私もラグビーファンなので、宗像サニックスブルースと言うチームが無くなる事は寂しいけど。
今後も、ラグビー日本代表の試合会場等でお会いする機会はあるんやろうけど。

対戦相手のファン同士って形でお会いする事は、きっと無くなるのかな。


それが、何よりも寂しい。


昨季、コカ・コーラが廃部になった時もやったけど。
ラグビーを、日本最高峰の舞台を現地に観に行く楽しみが、また一つ減った。



九州電力もある。
うきは市に新しいチームが立ち上がる。
福岡には、まだ他にチームがあるじゃ無いか。

そういう話じゃ無いですもんね。


推し(チーム)の決断は、黙って見守る。見届ける。


これも愛だよ。



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