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お月見の団子はティッシュ丸めて

私は先日、福音館書店様よりご依頼いただき
社内講演会のための講師を務めてまいりました。

その講演会の前に編集の現場を見せていただき、
直々に作品や作家さんのことやその他諸々、貴重なお話を聞かせていただきました。


貴重な原画を間近で目にし(おそらく、これ以上ない近距離)
いわゆるボツになった同場面の絵も多数見せてもらいました。

濃い、濃ゆすぎる。
あまりに贅沢な時間でした。

あ〜
たまらんわぁ〜

あっ!
ハッ!!
私、今から講演だわっ!

さてさて
気持ちを切り替え?て?


福音館書店の役員室にお邪魔して
オンライン対応の講演会。
数名の社員様とソーシャルディスタンスを保ち
ながら場を同じに話をして
多くの社員の方はデスクにて視聴するスタイルでの
開催となりました。
(※開催スタイルの例としてご参考にしてもらえたらと思います。)


事前に打ち合わせしていた内容に沿ってお話したのですが、オフレコ感MAXのため、内容をここに綴ることができません。

普段私が親子さん向け講演会の際に
どのような話をしているのか?を引用する必要があり、そのためにいつも読んでいる絵本を同じように読みました。


これ、今になって笑いが込み上げますね。
福音館書店の役員室で
「ぽんちんぱん」読む私。

通常講演会では
「この絵本読んだことある方、どのくらいいらっしゃいますか?」などと問いかけ挙手をお願いしたりします。

しまった。
やればよかった。
「この絵本読んだことある方、どのくらいいらっしゃいますか?」

どうなんでしょうね。
自社の絵本だからって100%読んだことあるなんてことはありえないですよね?
でもまさかの皆さん網羅されているのか?

この件はさておき

私は講演会から2週間ほど過ぎて
改めて思います。
なぜ、今回私の話を聞くために時間と場所をご用意くださったのかと。

事前に打ち合わせも行われました。
そこで私なりに、できるだけ短い時間で
私にしかできないことをお伝えするには?と考えた結果、私に望まれているのは
「絵本」のある「暮らし」
についての私の考察。
さらには「子育て」のリアルと
そこに存在する主に母親たちの感情の様々が
「絵本」を読むことや、私の発信する言葉に触れて 
どのように動くのか?
そういった事を「親子に絵本を届ける」ことを業としている出版社という立場として知りたい。
と、私は理解しました。

できるだけリアルに。
との思いから、実際に私と私の話を聞いてくれたママたちとのやりとりを紹介しました。

直近のやりとりで、今の「絵本の世界」の現状と分析につながりそうなものがありました。
それが次のような話です。

とあるママから私に
「私、お月見を忘れていました。子どもには季節の行事が大切なのに、何も準備ができていなくて。
皆さんお団子作ったり、ススキを飾ったり、関連絵本もたくさんご存知だし、いつも感心してみています。なんで私はいつも何もできないのかと、この子は私のせいで体験や知ることが不足しているような気がします。」
以外略。笑。

略略略

長い
まだまだ続く
非常に長い文章が届きました。

さて
どうやら、毒さなえさんの出番のようです。

まず私はこのママにこのように
返信をしました。

「皆さんって、どこの皆さん?」

この問いに返ってきたのが
「皆さんの投稿を見て」

はい。出た。
最近の絵本好きは、とにかく季節や行事や料理や、なんやらかんやらと関連づけて絵本紹介&映えた写真を披露するのが好き。
これが現状です。

私はこの現状を悪くも思わないし、趣味として楽しんだり、子育てのいわば日記のようなものとして残したい気持ちもわかるし、何よりそれが楽しいのなら万々歳です。
同じようなことが好きな者同士が、SNSとはいえ繋がりをもち、コメントで交流を持つことも良いでしょう。
また、私のように絵本をコンテンツとした
なんらかの仕事(活動)をしている側が、その楽しみ方を牽引する役割を担うのも必然であると考えます。
SNSで人気のある人は(絵本でも、それ以外のジャンルでも)だいたい、その牽引が上手いからです。
多くの人に望まれる、してほしいとリクエストされることに応えることに長けている人が支持を受けます。
小さなお子さんを育てているママ層に人気のあるInstagramは、
「私はこう」よりも、「皆さん、こんなのはどお?」と、皆さんの期待に応えるのが得意な人が人気を得ます。

SNSも媒体は様々で、それぞれに特徴があります。
今皆さんが読んでいるnoteなどは、ある程度、読み応えのある記事を求めている人が好む媒体であり、発信側も「私はこう」を伝えたい、または文章として残していたい人に向いてる媒体でしょう。

私に、お月見やり損ねたと泣きメッセージをしてきたママが「皆さん」と書いたのは、Instagramの中にいる「皆さん」とのこと。

だいたい、お月見投稿に何か物を申したいなら、投稿してる人に直接メッセージしてその気持ち伝えろや!なんでこんな変化球で私のところに泣きメッセージやねん。
と毒づく気持ちの反面、私にはこういった些細なことが積み重なり子育てに自信をなくしていたり、楽しさ、喜び、幸せを見失っているママからのSOSが多いのも自覚しています。
※なぜ毒づく私を求めるママがいるのかを連載記事にしてくれているのがコチラ

私は、「主語、私」の発信をすることを
信条としているため、おそらく、いや
だいぶ、私のことを「怖い」「キツイ」
と感じて、簡単に言えば「好きでない」と思う人が多いだろうと自認しています。
「好感度が高いこと(人)や、万人受けすること(人)は皆に好かれるが、たった1人とは手が繋げない」
というのが、これまた私の信条です。

随分、偏った考え方だな。と思われても構いません。
ですが私のこのキャラクターは、たった1人のママを救うことに貢献できていると自負しています。

実際には〇〇ママ専属の絵本講師ではありません。
それでも、私の発信の言葉を
「これは、今の私に言ってくれた」
と受け取ってくれるママは本当に多いです。
SNS媒体を使った発信なのに・・です。
「さなえさんは、何か見える人なんですか?なんで今日の私のことがわかったのですか?」なんて真剣にメッセージをしてくるママがいるのです。

私は何も、自分がこれだけママから支持されていますよ!と主張したいわけでも、自慢したいわけでもありません。
言いたいのは、それだけママの中には、精神的に追い詰められている人が多いということ。
そして、その気持ちの吐露の先が、私のようなキャラクターの人間である点に少し考えを及ばせると
「子育て」に関わる仕事や活動をしている人の視野を広げることになるのでは?
と考えています。

私を必要とし、また逆に私の会社や仕事を応援してくれるママたちは特別に変わったママではありません。
今までの「なんとなくのルール」を一生懸命に守り、毎日子どもと向き合い、精一杯、母親をしています。

「子どもが本当にかわいい」

心からそう思え
その気持ちを子どもにわかるように伝える。
子どもが望むことをしてあげる。

たったこれだけの事を
パステルカラーオーラの人に言われても
一向に満たされることがなかったママたちが
不思議に、グレーやカーキ色の人間の言葉に救われたりするのです。

私は、人間は母になると
感(勘)は鋭くなると考えています。
その感が求めるのは
「優しそう」な人ではありません。
「優しい」人です。

そして、その感は満たされた心のときよりも
ちょっと疲れた、涙がこぼれそうな心のときに
より強くなるのです。

絵本は「子育て」の味方です。
本当に優しいものです。
本当に優しいものを生み出す仕事をしている
出版社の皆さんには
その誇りを持ち続けてほしいです。

私も絵本を相棒とし、
ママに子育てについて話す仕事をしています。
私の相棒は優しいと信じています。

会社の大小は関係ありません。
「本当に優しい」
そんな会社でいることが、社会貢献であり
会社の存在意味であると思います。
そして、それは綺麗事ではなく、この先会社が必要とされる必須条件です。
親子の側にいる児童書出版社は「本当に優しい」会社であってほしいですし、私はこれからも、その視点で出版社を見たいと思っています。

さて
前述のお月見やりそこねて泣きつきメッセージ送ってきたママに私が提案したのは以下のとおりです。

さなえ「お月見してくれないって子どもが言ってるの?」

ママ「子どもは言ってないです」

さなえ「じゃあ、ママが自分がしてあげたい、ってことやんな?」

ママ「はい」

さなえ「ティッシュある?あるやろ?それ丸めてテープで止めて球いっぱい作ってみ。
それ重ねたら団子っぽいで。
私が言ってるねん、絶対にそれで子ども喜ぶから。
絶対。」

ママ「やってみます!」

次の日にママからメッセージがきました。

さて。これをやってみた親子に
どんな時間があったのでしょう。
絵本を読むときのように
皆さんの想像力を発揮してみてくだい。

お月見の絵本はちょっとくらい遅れても
親子の味方です。
月のあかりや、団子の甘さを心で味わいながら
親子で読んで楽しんでくれたなら。

絵本は優しいのです。

2020.11.29
待ちよみ絵本講師 内田早苗



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