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白髪染めたら絵本が買いたくなった

「白髪を染めたら
気分が晴れて
いつものように
寝かしつけをして。

今までには感じたことのない
幸福感をあじわい
なんて子どもはかわいいんだ
なんて愛しいのだと
心から思えた。

明日はさなえさんが
すすめてくれた絵本買いに行ってきます
本屋行くのも楽しみです」

4年前
そう私に話してくれたママは
今では私と同様たくさんの
絵本に囲まれた生活をし、
時折私に、
「いい絵本見つけました!」
と情報を持ち込んでくれます。

私は自宅リビングを利用して
週1回絵本cafeを営んでいます。
『きいろいおうち』
といいます。

『きいろいおうち』は
地元のママというよりは
SNSや子育て情報サイトで存在を知り
電車やバスに乗って
来てくれる方が多いのが
特徴です。

このママは、電車二駅を
当時11ヶ月だった赤ちゃんを連れて
来てくれました。

リネンのワイドパンツに
若草色のブラウスを合わせ
紺色のトートバッグ

センス良く色合わせの素敵な
ファッション

ランチに出したお弁当箱を
包む布は
茶色×白のチェック柄

そうなんです
もう
私が好きなテイストだらけの
実におしゃれなママでした。

『きいろいおうち』は
お出しするお茶の器や、
お部屋のインテリア、雑貨など
豪華ではないけど、店主の私は
こだわりを持っています。
絵本もインテリアの一部と捉え
カラー別陳列を始めました。
この並べ方の第一人者は私なのでは?
と自分では思っています。
(確かめようが無いのですが)

そんな私なので
このママのおしゃれに心ウキウキ。
「そのブラウスの色、いいなぁ。真似したいくらい!」
なんて話で盛り上がったのです。

そして話しながら気になったことを
歯に衣着せず言いました。

「こんなにおしゃれなのに
なんでそんな髪してんのー
ママかわいいのにもったいない」

そうなんです。
このママ
髪の生え際から10センチ弱白髪が
伸びてきてとても目立っていました。

赤ちゃんを育てていて
白髪伸び放題。

こういうママを見て良く言われるセリフ。

「子育てしてる間は美容院なんていく暇ないわよね。
髪振り乱して、子育て頑張っているんだもの。
あなた、偉いわね」

まぁなんて
優しい言葉なんでしょうね。

子育て期のママの心に寄り添う言葉
代表でしょうか。

でも私はこのママに
この言葉は必要ないし
むしろ偽善的なものになるように
感じました。

私のかけた言葉を聞いて
ママは一瞬絶句したのち
エーンエーン泣きながらこう言ったのです。

「今、私が、1番気にしていることです」

「そうか。そうだよね。
だって、あなたは、こんなおしゃれで
センスが良くて、この自分の状態を
許容できる人ではないよ。」

「じゃあ!
探そう!!」

ママの顔はクエスチョンマーク

私が次に発した言葉は
「美容院・子連れ歓迎
って検索してみたら、今。」

私はママに積極的に美容院を探すように
促しました。

私も一緒に検索ワードを少し変えたり
エリアを付け加えてみたりして
『きいろいおうち』から
そのママの自宅までの帰り道に寄りやすい
駅近の美容院を見つけ、
すぐに電話で予約を取りました。

ママは『きいろいおうち』で14:00まで
絵本を読んで過ごし、帰り道に
美容院に寄りました。

その日の夜
お子さんを寝かしつけたあとくらいの
時間に電話がありました。

「さなえさん。髪がすごくいいです!
カラーがとても上手な美容師さんで。
私、子育てはじめて今日が1番気持ちが晴れやかです!!」

そして
晴れやかで明るく
でも涙ぐんでいるのがわかる声で
冒頭の言葉を私に話してくれました。

私は
どのママも美容院で髪を綺麗にすることが
大事だとは思っていません。
ちょっと毒舌な私が正直に言わせてもらうと、
別に、そこに気持ちの重きをおいていない
服装にも髪型にも無頓着な女性もたくさんいます。
子育て期だからしないのじゃなくて、
別にいつだって特に気にしない人もいますし。

だけど私がこのママに
強く美容院に行くことを勧めたのには
ワケがあります。

ひとつは
「いいママ像」に縛られてほしくないという
気持ち。

もうひとつは
「自分がしたいこと」に少しだけ
積極的になってもらいたい。

そんな気持ちです。

「子連れで美容院に行く」
こういう成功体験がママの
子育てにおける肯定感を高めていくと
私は思います。

他にしたいことがあった時も
のっけから諦めるのではなく
できる方法を考えてみたり調べてみたりする
ちょっとばかりの積極性が
育まれるのです。

したいことがどれも叶うとは思えません。
親になって気がつくのは
子育てにおいては、「計画」や「準備」などが
実に無力で
思うように事は運ばないということ。

それでも
どんな小さな成功体験でもいいのです。

1番大切なのは
自分が何が好きなのか?
自分は何がしたいのか?

主語が自分の気持ちに
蓋をしないことだと私は思います。

そして
主題に戻ります。

どうして白髪を染めたら
絵本が買いたくなったのか。
本屋に行くのが楽しみなのか。

それは
このママが
子どものために絵本を買いに行くからでは
ないからです。

ママ自身が
愛しいわが子に
絵本を読んであげたいから
自分と子どものために
絵本を買うからです。

主語が自分だからです。

♦︎♦︎♦︎
先日、金沢21世紀美術館にて
トークイベントに登壇いたしました。

パネリストさんからの質問に答えながら
トークを繰り広げるという内容のもので、
パネリストさんから

「さなえさんの絵本cafe『きいろいおうち』での印象に残るエピソードを教えてください」
との問いがありました。

そこでお答えしたのが
この、白髪染めに『きいろいおうち』から
美容院へGO!のエピソードです。

この日の回答に
少し私の思いをつけ加えて今日は
綴りました。

待ちよみ絵本講師
内田早苗










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