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絵本で描く家族のかたちについて考えてみた

私はすぐ結論を出す人間だと思われているが
(実際決めるのは早い)
長く考えることもある。

かれこれ3年前
福音館書店に伺い
社員の方対象に社内勉強会の講演をしたことがある。

その時に何人かの編集の方から絵本をいただいた。
その中の一冊がこちらの絵本です。

『こたつ』
麻生知子
福音館書店


時期になると多くの書店で目立つように展開されているしSNSで良く紹介されているし良く売れている絵本なのではないでしょうか、きっと。
(同じ作者さんの『なつやすみ』という絵本もある)

この絵本
まだ未読の方のために出版社さんの紹介文をそのまま引用したい。


こたつの定点観測で描く、ある家族の大みそか

ある家族の暮らしの中心・こたつでのできごとを、定点観測で描いたユニークな絵本です。大みそかの朝、「今日は夜中まで起きている」と宣言して、こうたくんの長い一日がはじまります。宿題せずにごろごろしたり、おせち料理づくりを手伝ったり。年越しそばを食べた後は、初めての夜ふかしを堪能します。真上から、俯瞰(ふかん)で見る独特のスタイルで、こたつのある生活の楽しさと、家族のあたたかさ、新年を迎えるよろこびを描きます。
(福音館書店ホームページより)

さて
この絵本を編集の方からいただき
少し経ったころ、その編集の方からお手紙(ハガキ)をいただいた。
絵本は、愛情深く作られ、常に届く先の読み手である親子さんのことを思いながら作品が生まれることを改めて感じられるお手紙でした。
そこには、このようなことが書いてありました。
(お手紙の文章をそのままでは書けませんので、私が抜粋して箇条書きにします)

・いま家族のかたちがさまざま
・あの家族構成には、迷いもあった
・ステレオタイプを押しつけないように
・いろんな家族のかたちにあった本を今後もとどけたい

私はこのお手紙を読んで以降、『こたつ』を読む季節になるたびに毎年考えている。

絵本で描く家族の形について


ちなみにわが家はご存知の方が多いように
シングルマザー家庭で
私と息子の2人家族です。離婚前は3人家族でした。

では
あの『こたつ』がわが家がモデルで
私と息子2人家族の様子を俯瞰した絵で描かれていたとして

家族のあたたかさ、新年を迎えるよろこび
は、感じられないのであろうか。

そんなことはないでしょう。
そこに「あたたかさ」が実際に在り、それを描きたい作家さんがいたら、その描いた絵は「あたたかい」に決まってる。

『こたつ』の絵があたたかく幸せなのは作家の麻生さんの思いの画の力であって、あの家族構成だからなのではないと思う。
もし夫婦ふたりやうちのように母子ふたりの家族の絵でも同じように「あたたかさ」のある『こたつ』になっていたと思う

でもやっぱり
あの絵本は、あのくらい人数がいる家族構成が良かったと思う。
だって

おもしろいから

人数がいることで、おもしろい。
絵をよむ楽しみが増す。

「いろんな家族のかたちにあった本」
を作るのではなく

おもしろさ
たのしさ
おかしさ
を追求して絵本を生み出したら
結果
絵本って色んな形の家族が描かれてるよねー。

になるんじゃないでしょうか。

つまりは単純に
面白い絵本は、あんまり読み手に関係なく
面白いってことじゃないでしょうか。

読む側のかぞくのかたちへの
配慮も遠慮も
必要がなくて
描かれるかぞくのかたちは
作品のおもしろさにとって、そのかたちが
ベストならベスト。

というのが私の出した答え。

私が書いた文章が
こんなときにもぴったりだな、と我ながら思うので、一文を引用します。

絵本は人を選びません。

童心社「母のひろば」2023年3月号に
寄せた3000文字の中の一文です。

2024.1.19
待ちよみ絵本講師
内田早苗

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