絵本導入期の5要素【もの】
絵本導入期の子どもは【もの】の絵本が大好きです。
具体的には
のりもの、どうぶつ、くだもの。などです。
いくつか絵本の例を挙げてみます。
「くだもの」
平山和子
福音館書店
まるで実物がそこにあるかのように
微細に描かれたくだもの。
差し出す手の人の服装が旬の季節のもので
あったり、手に取りやすいように
描かれたフォークの向きや、
「さあどうぞ」という丁寧な相手への
言葉など、作品の魅力は、たくさんある
「くだもの」をテーマにした絵本の中でも
群を抜いて小さな子どもに長年愛されている
ことで定評済みです。
「さあどうぞ」と差し出されると
子どもは手にとり口に運び
もぐもぐもぐ。
読み手のパパやママにも
「さあどうぞ」と食べさせてくれる
優しい子も。
こんなやりとりができるのも
子どもが安心して手にとることの
できる【身近なくだもの】であることが
理由のひとつでしょう。
小さな子どもは
【知っているもの】が好きなのです。
だから、小さな子にとって「くだもの」が
テーマの絵本は
りんご・バナナ・いちご・みかん
など、近所のスーパーで見ることができ、
日頃から家庭で食べるものが描かれていることが
重要なのです。
「のりものいっぱい」
柳原良平 作
こぐま社
柳原良平さんはウイスキーのトリスさんの
絵を描いた人。とお話すると
「あー!やっぱり、この絵、そんな感じします!」
と言われます。
「のりものいっぱい」の乗り物も
味のある絵で私は大好きです。
乗り物に目がついていて、
とても愛らしい絵です。
乗り物が何種類も出てくるのですが、
船のページには
「きゃくせん」(客船)「タグボート」
など、少し本格的な名称も出てきて、
なるほど、作者の柳原良平さんが
帆船日本丸記念財団理事をつとめられるなど、
船が好きで著書もたくさんある方だということで
納得です。
こういう赤ちゃん絵本時代から、
オタク心をくすぐっているんですね。
うちの息子は2歳のはじめには
特急の名前を200種類くらい覚えていたくらいの
子鉄で、リアルな電車図鑑も大好物でしたが、
「のりものいっぱい」のような
イラストの乗り物も好きでした。
良く
「本物のように描かれているものが良いのですか?」と聞かれますが、
絵本は何かを正しく覚えるためのものでないので、
そこに、どちらが良い、優れている。と
いう考え方はありません。
わが子の好みに合わせるもいいし、
作品により、様々な描かれ方をしている絵を目にするのは、美術館で絵画鑑賞するくらい価値があるかもしれませんね。
絵本導入期に必要な
【もの】の絵本は
実際の生活といったりきたりできる
身近な親しみのあるものが題材で
子どもの喜びを満たすために読んであげてほしいです。
虫が大好きな子が虫の絵本ばかりを読みたがる。
電車好きな子が電車の絵本ばかり。
といった「ばかり読み」を好ましく思わず
子どもが読んでほしいと選んだ絵本を
取り下げてしまう人がいますが、
それは、とてももったいない話です。
好きなことで十分、心(=脳です)が満たされる経験のある子は、知ることや確かめること考えを深めることが好きな子になります。
まだ幼い、生まれて何年も経たないのに
「好き」を見つけられるのは幸せですし
「好き」を共感してくれる人がいるのも幸せです。
子どもの「好き」に寄り添ってあげることが
【もの】の絵本を一緒に読むことで叶えられます。
とはいっても、
子どもと一緒に読みたい他の絵本もたくさんあるのに、ずっとその絵本ばかりじゃ読んでる私はつまらない…というママやパパの気持ちは良くわかります。
そのような「ばかり読み」への対処法というか、あ!そうか!そうすればいいのね。というやり方があります。
その方法については、また別に綴ります。
2020.4.13
待ちよみ絵本講師 内田早苗