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「FRUITS ALBUM」セルフライナーノーツ

曲について書いてみようと思う。
曲のことは文字にするのがむずかしいから、昨年は自称ラジオ(YouTube)で解説していたんだけど、どっちもどっちかなあ〜と思って、今回は文字でやってみます。

かなり個人的なので、こういうのは熱心に聴いてくれているファンの方以外は読まない方がいいのかもなあ〜とも思いつつ、あくまでも私の目線で書いてみます。

物を作ったりなにかを表現するということは本当に楽しくて素敵なことだなあと思う。残しておいてもきっと悪くはない。


1、愛だけは
最近ははっきり公言してしまっているけど、認知症のことを思って作った曲。人は記憶がなくなっても感情がなくなることはないらしい。目の前にいる人が誰だかわからなくなっても、この人が好き、うれしい、楽しい、と感じる感覚は健在だということだ。じゃあ最期までなるべくそういうのを増やしたい。
いざ大切な人の記憶がなくなると思うと、もっとやりたかったことがたくさんあると思ってしまった。もっと抱きしめたらよかった、もっとそばにいたらよかった、もっと素直に甘えたらよかった。そばにいて、みたいな言い方はソロになってからかなり避けてきたんだけど、今回はわがままな方がいいな、と思った。


2、犬と苺
相手が加害者、自分が被害者、という構図にならないようにしたかった。自分が可哀想にならないように意識して書いた。この頃、比喩じゃなくてストレスで本当に手がしびれていて物が掴めなくて、もうどこにも行けないと確信した。ライブで毎回やる好きな曲。


3、光合成
もうこれで最後でもいいと思って遺書のような気持ちで書いた。私は日本人のわびさびが好きなので、未練や後悔をどこかに混ぜることが多いけど、そういう要素が入らないように意識した。なるべく明るい曲にしたかったから、明るいサウンドになって本当によかった。


4、レモンコーヒー
この頃、深い森に帰る、という感覚がずっとしていた。安心できる場所に行きたかった。毎日こわくて、空の光がまぶしくて目が開けられなかった。とにかく身体が動かなかった。わたしはあじさいが好き。吉祥寺のゆりあぺむぺるにレモンコーヒーっていうメニューがあった気がする。今はなくなったのかな。あった気がするんだ。飲んだことはない。


5、キッチン
2016年頃作りかけたまま完成できなかった曲を完成させた。5時あがりで終わって、は朝の5時。コンビニしかあいてなくて毎日コンビニのパスタ。さみしいたすけてって言われても、中途半端に関与はできない、助けてあげられない、冷たいかもしれないけどごめんね。強そうに見えたかもしれないけど、ほんとは私も誰かたすけてって毎日思ってたの、ていう曲。


6、あなたがいなくなってから
作った当時はよくライブで泣いてしまって、つらいなあ歌うのむずかしいなあと思ってたけど、今はるんるん歌える。この頃たくさん作った中、残った好きな曲。開き直って、ぬりえとか、少し馬鹿馬鹿しい感じなのが気に入っている。


7、Rose
一気に書いた。なるべく書き直さなかった。特に強い歌詞も入れなかった。シンプルでまっすぐなラブソングをやるのって実はすごく勇気がいる。嘘のないラブソングなんか、そもそも人に聞かせるようなものじゃないとも思う。誰かにとって一番尊いものは、誰かにとっては一番クソだと思う。DO-SHE-YOUのクソな歌っていうのはそういう意味だよ。個人的で純粋なラブソングは、馬鹿にされて笑われるようなものでいいと思う、そもそもラブレターみたいなラブソングを全世界リリースするなんて狂気でしかない。今まで書けなかった曲が120で書けてうれしかった。


8、お花見
22,23歳くらいの時に作った曲。春の光とか、桜の感じとか、うっとりするあの感じは歳を重ねてもずっと変わらないなあと思って、録音することにした。桜の曲はなにか失ってからじゃないと歌えないと勝手にずっと決め込んでいたので、録音できてよかったなと思う。部屋で小さくひとりで録った。エレキギターの録音を久しぶりにして、ちょっとうれしかった。


9、変な結末
一度好きになった人の悪口を私は言いたくない。その人を好きだった自分まで否定することになるから。「もしも生まれ変わったら」なんて望んでいない、そのままでいてほしい。私が好きになったのは、その人のそのままの姿でしかないから。何も間違ってない。それ以上も以下もなくて、すべて自然なこと。自然に逆らわずに風や波にそのまま身を任せること。生きる死ぬと出会う別れるは同じなのになんで違うことみたいに扱われるのかな。一回死んだのに。きっとこれから先はもっと素敵な日々だよ。そうやって自分を鼓舞してきた。これから先だってずっと。誰も言ってくれないなら私が言う。


10、Veils
短編映画「Veils」のために書き下ろした曲。ベールと読む。ウエディングベールのベール。女性カップルのウエディングをイメージして、脳みその引き出しを全部引っ張り出して書いた。涙でちぎれそうなのは入籍届の紙。すくいあげて助けたいのは涙の海で溺れてしまった自分たち。美しい日本語で書けた気がしている。この曲で考え過ぎて、自分の体調不良に気付いた。そこから治療して、愛だけは、を作った。そういうループのアルバムだ。いつだってすべてまわってる。ギリギリのバランスですべては成り立っている。


「FRUITS ALBUM」
小さい頃から果物が大好きだった。果物のことを考えるとわくわくする。美しくておいしくてやさしい。母が食後にむいてくれたりんごや梨、冷たい果物たち。
無意識に果物の曲タイトルが増えてきてることに気付いた。高齢者が少しずつ赤ちゃんに戻っていくような感じで、私もどんどん素直な子供に戻っていってるんだと思う。
今回はじめての横文字タイトルにした、ホワイトアルバムみたいでかっこいいと思った。力が抜けて、軽くなった今の自分を表していると思う。


意図していなくても、その時の生き方や姿勢は作るものに勝手に現れてくる。おもしろいものだなと思う。鋭い人には色々バレるだろうし、伝わらない人には何にも伝わらないのかもしれない。でもそれも含めて、なんかいいもんだな〜と思ったりする。
めちゃいいアルバムができた。

コロナ禍を挟んだこともあって、部屋で小さく作った曲が多く、やさしい音のアルバムになったなと思う。

読んでくれてありがとう。
ぜひ聴いてね。
大切になれる曲が、一曲でもありますように。

2024.7.10 release
「FRUITS ALBUM」

1、愛だけは (2024 remastered)
2、犬と苺(2024-)
3、光合成 (2024-)
4、レモンコーヒー
5、キッチン(2024-)
6、あなたがいなくなってから
7、Rose
8、お花見
9、変な結末
10、Veils(2024-)


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