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宇宙はゼンマイ式の掛け時計

ここ最近、夜空を眺めていると

月の満ち欠けがはっきり見えて

綺麗だと思うことが多い。

空気の澄み具合か、

地上に近いところに見えるせいとか

そんな理由があると思っているのだが、

そのことに関連して、子どもの頃から

不思議に思っていることがある。

それは

宇宙に関係する基本的なことなので、

科学的に説明できる

内容なのだと思うのだが。

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月の満ち欠けには周期があり、

規則に沿って見え方は決まっている。

それはきっと、

私が生まれるずっと前から変わってなくて、

ほぼ全く狂いのないリズムで

規則的に廻っているのである。

月に限らず

地球の自転や公転も正確に廻っており、

太陽系の惑星や

そこを通る彗星においても、

やはり決まった周期で廻っているという。

それはまるで、

宇宙は月や地球も含めて

機械仕掛けの時計のようだと思ったことがあり、

そのことが不思議でたまらなかった。

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子どもの頃、祖父と話をした記憶がある。

祖父の家には、

ゼンマイ式の大きな掛け時計があった。

祖父がその大きな掛け時計に向かって

小さな踏み台に立ち、

何やら手入れしているところを見ていた。

祖父は、時計に積もった埃などを拭き払い、

文字盤のところにある穴に

鍵のようなネジ回しを差し込んだのだ。

子どもである私は、

大きな掛け時計が壊れたのかと

心配でその作業を見ていた。

ガチャガチャ、ギリギリと

時計が音を立てていたのを眺めていると、

祖父が教えてくれた。

「ゼンマイを巻いているんだよ。」

「こうしないと(時計が)止まってしまうんだ。」

なるほど、そうなんだと感心していると、

祖父はその掛け時計を外して、

文字盤の裏にある

機械の部分を隙間からそっと私に見せてくれた。

そこには大小様々な歯車が規則正しく動いており、

薄いぐるぐる巻きの金属でできた大きなゼンマイが2つほど見えた。

機械仕掛けの歯車の動きが、

なんとも言えないカッコよさに

感動したのを覚えている。

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そんな記憶からか、

月の周期や地球の自転や公転の規則正しい動きを知った時には、

この宇宙の動きは、

祖父の家にあったゼンマイ式の掛け時計のようだと思ったのだ。

月や地球が狂いなく

正確に廻っていることが

実に不思議なことであり、

ゼンマイを回さなくても

勝手に廻っていることの不思議さと

何だかわからない心地の悪さを感じてしまっていたのだ。

もしかしたら、

宇宙の存在自体が

ゼンマイ式の掛け時計のような

機械仕掛けの仕組みになっていて

それを管理する祖父のような存在が宇宙の外のどこかにいて、

定期的にゼンマイを廻しながら、

管理しているのではないかと思ってしまう。

(そうでなければ、なぜ動力もなく、

そんなに規則正しく動いているのか?)

もし、そうだとすると、

私達の地球や人間の存在は

一体なんなんだろうと考え始めたら、

なんだかものすごく怖くなってしまった。

あまりの怖さに、そのことについて考えたくないから、

図鑑や星座表とかを見ながら、

いろいろ調べて知ったふりをして、

それは、科学的にはっきりと解明しているのだと思うことで、

子どもの頃は何となく気を紛らわしていた。

しかし、大人となった今になっても

それが頭の片隅にあって

不思議さを消し去ることはできずにいるのだが、

月日が時計の針のように

勝手に進むことの都合良さと

締め切りのある自分の仕事を間に合わせながら

それをこなすだけの忙しい毎日に追われていることで、

大人になった今となっては

もうどうでもいいことだと、

自分自身に言い聞かせてる。

だが、しかし、

そんな自分でいいのかと、

この歳になっても

密かに自問自答を繰り返している。

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作品:「記憶のかけら」部分 アルミ箔、アクリル絵の具、墨/板
きはらごう

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