見出し画像

もう怒鳴らないで欲しい

朝の通勤電車での事。 

その日も電車は混んでいた。
息苦しいほどではないが簡単には体の向きを変えられないくらいの混み具合。

僕は座席の前に立って吊り革につかまっている。
駅に着くたびにたくさんの人が電車の中から押し出されるように街に放たれる。
そしてまた、それと同じか少し多いくらいの人たちが小さな箱に押し込まれる。

途中の駅を発車した直後、僕の後方から怒鳴り声がした。

「おい!何やってんだよ!」
おじさんの声。

後方だし少し離れてもいるのでどんな人かは分からないが、声の感じからして50代くらいかな。

間髪入れずもう一人の怒鳴り声が続く。

「そっちが先にぶつかってきたんでしょ!」
という女性の声。

こちらは声の印象だと20代か30代の女性。

その後も二人の応酬は続く。

男「肘打ちしただろう!」
女「最初にそっちがぶつかったんでしょ!倒れそうになったんですけど!」
男「だからって肘打ちしていいのか!
乗る時にこんなに混んでるんだから仕方ないだろ!」
女「ここのスペースが空いてますよね!なんで私の方に来るんですか!」
男「そんなの背中向きで見えないよ!」
女「じゃあ私は倒れたら良かったんですか!
はい、分かりました、私が悪いんですね!」

みたいなやり取りを延々と続け、
1ラリーごとにボルテージは上がり音量も増す。
きんに君が「パワー!!」って叫ぶくらいの声量が車両中に響き渡っている。

顔は見えないけど、たぶん二人とも赤鬼も驚くくらい真っ赤な顔をしているに違いない。
赤鬼もまっ青(←まぎらわしい)

手を上げたりしない限りは東京の満員電車ではたまに遭遇する揉め事なので
周りの人達も二人の気が済んで落ち着くのを
「やれやれ」という表情を滲ませて待っている。

10秒くらい無言が続いたので
ふぅ終わったか、と思ったら突然女性が第2ラウンドをおっぱじめる。
この繰り返しでもうかれこれ第4ラウンド目だ。
あんたガッツあるね〜お見事!
けどそろそろいいじゃない。。

僕は大きな音が苦手。
怒り狂った大声は特に苦手だ。
苦手な『大きな音』に加えて、やはり苦手な『誰かの悪意』がプラスで乗っかるから
聞いていて胸が苦しくなる。

僕は思う。
『もう怒鳴らないで欲しい。。』

もうやめてーー!!
争わないでー!



そんなにやりたいなら糸電話でやってほしいよ!


怒鳴らないでほしい



もしくは
LINEでやって欲しいよ!


無音でやってほしい


もしくは
絵手紙でやって欲しいよ!


仲良くしてほしい


とにかくもう
僕の近くで怒鳴らないで欲しい。

糸電話もLINEも絵手紙も出来ない時は
「あと3分後に口喧嘩はじめまーす!」って言ってくれたらイヤホンするから。お願いします。


ちなみにお二人は6ラウンド目で
近くのお姉さんから
「ちょっといい加減にしなさいよ」と
低音ボイスでぴしゃりと言われ
試合終了となりましたとさ。






サポートして頂けたら画材を買いたいです!