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旅する性別のない子供たち 1

第1章 カナの場合

 この世界に生きてる人は、子供の頃、性別がない。もともとからそうなのか、環境ホルモンとかの影響で、いつのまにかそうなったのかわからないけど、とにかく性別がない。男の子も女の子もいない。ただ子供なだけ。

 仲良しみんなは、まずは保育園みたいなところに行く。保育園というか学校というか、みんなで暮らし学ぶ場所。だいぶんおおきなお友達もいて、月の初めに行って、月の終わりに家に帰る。だから、その間は子供達と先生とお世話をしてくれる人たちだけで暮らす。大人達はその間、仕事に専念できる。

 大人になって性が決まるときは、誰にも見られちゃいけない。そうしないと、望む性になれないから。大人になる少し前からなんとなく、わたしこっち側かなぁとかに気付くものなのだけど、なかには望む性が明確じゃなくって決まらない子もいる。

 そんなとき、大人になっても1回だけ性を変えることができることもある。極まれだけどむりじゃない。望めば自然と体はかわるみたい。わたしは子供だからよくわかってない。

 わたしはカナ。いま10歳。この学び暮らす場所にはいってもう9年ぐらいになる。赤ちゃんのときからいるから。いまは初等科

 0〜5歳が保育科、6歳〜10歳までの5年間が初等科、11歳〜18歳までの7年間が高等科なので、わたしは初等科最後の5年生。グレードはそのままカウントアップするから、12年生までいることになる。

 自分の性が見えてくるのが、18歳から、すくなくとも20歳ぐらいまでの間なので、学校を卒業したら、知ってる人にはあわないように、自分探しの旅に出る人が多い。わたしもそうするつもり。

 まだ難しいことはわからないのだけど、私たちがこういう暮らしを始めたのは、大昔からというわけでもないみたい。むかしは、産まれた時から性はきまっていて、子供達は、おとうさん、おかあさんに育てられてたらしい。

 でも、食べてきたものや、暮らしていた場所の環境や、進化?退化?の影響で、こういう風に自然とかわったんだって歴史の授業で習った。まだまだ変化の過程だから、産まれた時から性がきまっちゃってるお友達も、少ないけど、いないわけじゃない。

 そもそも性って、体の性、心の性、好きになる人の性、社会的に見られてる性の四つがあるって習ったけど、イマイチよく分からない。わたしたちこどもは、そこのところ全く白紙だから。白紙は中性っていうことじゃないとおもう。まだなにも書かれてないっていう意味で白紙は白紙。

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