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シニアの退職届提出。

新型コロナウィルス罹患で
退職に追い込まれた私である。

本当は、もう少し働いていたかった。 
でも、もう無理だわ、、もうダメ、、と
身体も心も言っている。


だから、
離職票、源泉徴収票、離職票、源泉、、、と
うるさく事務員に言った。
ところが、
離職票には1と2があるにも関わらず、
届いたのは、離職票2だけだった。

なんでやねんっ。

コロナの後遺症が、まだまだ私の身体を
蝕んでいて辛かったが、
心はイソイソ、足もとはヨタヨタで
ハローワークへ
高年齢求職者給付金の申請に出かけた。

ハローワークの職員さんは、、

「とーっても、いい仕事ありますよぉ〜」
「今もね、90歳の人たちがね、お元気でね、
働かれているんですよぉ〜」
「ねっ、どうですかぁ?」
「ただね、頭を床にくっつけるほど、
礼儀正しくしなきゃいけないですけどね」と、

言ってニヤッと笑った。
ちょっと、バカにしてる?

あぁ、はい、考えてみますね。
ありがとうございます。

と、にこやかに(マスクで分からないけどね)
言ったが、

何それ、90歳ばかりって、、
頭を床に? どんな仕事やねん。

本当に働けるの?

急に突然、引き継ぎもしないで辞める、、、と
会社周りの反応が冷たかった。

仕方がないじゃない。

30代のコロナ罹患は、回復も早いだろうが
高齢の私は、とても長引き辛かった。
何もやる気が起きなかった。
不眠と24時間の耳鳴りに苦しんだ。

急に突然、急に突然、、と言われた。
まるで、
今年の流行語大賞にノミネートされるくらいの
勢いである。

コロナは突然来るのじゃないのか!

「来月の中旬頃に罹患しますよー」とでも
厚労省から連絡があるのか!

「もうすぐ罹患予定なので、なるべく
今のうちに引き継ぎしておいてね」と、
区役所からお知らせがあるのか!

私が担当した仕事は、
カオスになってしまったと言われたが、
私は、身体全体がカオスだわっ。

たった2週間だけの、ゲスト研究員には
5000円もするボールペンを  
プレゼントしたくせに、私には何もなかった。

私の人間力がないせいなのか。

レタスの葉っぱ一枚すらなかった。
トマトの種一粒さえない。

だから、私も何もしなかった。
何もしないのが、最後の私の挨拶であった。

仕方ないじゃん。

「お茶しない?いつでもいいよ。
体調が良い時にでも、、、どお?」と、

大学研究室のスタッフから誘われた。
給料支払い元は違うが、
いつも一緒に仕事した彼女である。
穏やかで、優しく、親切で頭脳明晰。

「淋しくなる、、、」

私もだよ。淋しい、、、。

毎週月曜日、朝9時。
研究室と私の所属する会社は、
合同で掃除をすることになっていた。
作業部屋はたくさんあり、
それぞれメンバーが決まっている。

私と彼女は、皆んなから遠く離れた建物の
4階の実験室が担当であった。

私たちは、掃除機や雑巾を手に、
2人だけの朝ミーティング、、、、、。
「ふたりの朝ミー」と称して、たくさん喋った。

楽しい思い出ばかりだ。

最後のお茶を終えて、
秋風がわたる中、彼女の黒のTOYOTA は、
エンジン音と共に視界から消えた。

二度と叶わないことだけれども、
もう一度、あの部屋で
「ふたりの朝ミー」をしたいものだ。


「You always kindness and warmhearted to talk with us foreign 」

全文を書けないのが残念だが、
ある男子留学生が、お別れにくれたメールの
一文である。

泣いてしまった。

彼は、真剣に実験や研究に
励んでいる留学生である。
英語、中国語、日本語が堪能である彼だが
とても寡黙で、静かだ。

きっと将来、立派な研究者となり、
活躍する日が来るだろう。

あっ、私、この人知ってるわ、、、と
何らかのメディアで見かけることが出来たら、
こんなに嬉しいことはない。


退職届という、紙切れ一枚を提出したことで、
人が分かる。会社が分かる。自分も分かる。

いろんな思いが交差した。
暖かい言葉や、冷たく感じたことや、
全部ひっくるめて終わった。

^(-.-)y-., o Oʅ(◞‿◟)ʃ、、、複雑な気持ちで、
枯葉がハラハラと舞散る大学構内を後にした。

禍福は糾える縄の如し。

後日、
高年齢求職者給付金を手にした私は、
すっかり元気になった。

ふ、ふ、、🎵

ゲンキン ナ ワタシ デアル。

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