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口腔アレルギー症候群:最近果物食べると口が変!

「以前は食べれていたのに」、「以前は好きだったのに」、最近ある特定の生の果物を食べると、口がいがいがする、腫れる、ようになってきた、という方は少なくないかと思います。それは、「口腔アレルギー症候群」「花粉-食物アレルギー症候群」の可能性が高いです。今回は、その口腔アレルギー症候群について、少しまとめて書いてみます。

口腔アレルギー症候群とは

ある種の生の果物や野菜を食べると、数分で(15分以内が多い)、口の違和感、いがいが感、かゆみ、腫れ、などが起こります。

このような疾患を、「口腔アレルギー症候群」(Oral allergy syndorome、OAS)、「花粉-食物アレルギー症候群」(Pollen-Food Allergy Syndrome、PFAS)と呼んでいます。

もともと普通に食べることが出来ていた、ある程度の量まで食べれていた、ような果物などに対し、花粉症になってしまった後に、アレルギー症状を起こし始める、という病気です。

「花粉と食物の一部の構造が似ている」ために、交差反応を起こす=免疫が間違って誤作動する、ことが原因となります。

現在、花粉症の患者さんは多く、花粉症の患者さんの20%程に口腔アレルギー症候群があると考えられますので(報告により10-30%と異なる)、かなり多くの口腔アレルギー症候群の患者さんが居るはずです。症状が軽い患者さんはご自身でも気が付かない可能性もあります。

というのも、そもそも、口腔アレルギー症候群では、「誤作動する果物の部分」は、熱や消化酵素に弱い部分に反応していることが多く、原因食物を、加熱したり、加工したり、口腔内や胃で消化したり、することにより、その「似ている部位」が変化することにより、違う構造になったために反応しなくなり、症状(誤作動)が無くなります。これがアレルギー反応が口腔内にだけ起こるメカニズムとなります。逆に、全身に蕁麻疹が出る、腹痛がひどい、などの全身症状が出る場合は、口腔アレルギー症候群とは言い難いので、要注意です

*花粉との交差反応(誤作動)において、時に熱や消化酵素で分解しにくい部分(GRP)に反応する患者さんが居ます(成人に多い)。そのような患者さんの場合、加工品でも症状が出る、全身症状が出る、可能性があります。スギ・ヒノキ花粉の患者さんで、バラ科、柑橘系の果物に多いため、要注意です。

これらの患者さんは一般的な口腔アレルギー症候群とは症状の出方が異なりますので、厳密な除去が必要になる場合が多いです。

また、ラテックス(天然ゴム)に触れると、皮ふがかぶれる、赤くなる、腫れるというアレルギー患者さんの中に、果物を食べると「通常の」アレルギー症状を起こす方が居ます。このような患者さんでは、果物を食べてアナフィラキシーや強い粘膜の腫れなど、高度なアレルギー症状が出ることがありますので、要注意となります。

「食べた時に付いて赤くなる」も、口腔アレルギー症候群とは少し違いますが、全身症状ではないという意味では似ております。


口腔アレルギー症候群では、ゆっくり食べれば、唾液や胃液で消化・分解しながら食べられるので、アレルギー症状が出にくくなります。

逆に、一気に食べたり、いっぺんに大量に食べたりすると、症状が強く出る、のどに直接当たってのどが腫れる、ことがあり、要注意です。特に喉の粘膜が強く腫れると、呼吸困難となりますので、要注意です。

口腔アレルギー症候群の食材の例

基本的に、花粉自体と似ている果物がアレルギー症状を起こしていきます。これらの似たような果物へのアレルギー症状については、徐々に症状が強くなる、徐々に原因食物の数が増える、ことがあります。久しぶりにアレルギーがある果物と似たような果物を食べる時は、少しずつ、ゆっくり食べると良いでしょう。また、まだ実際に症状が出ていない果物をあらかじめ中止する必要はありません

【花粉と交差性のある果物の例】

花粉症でいうと、イネ科、ハンノキが要注意です。

果物側でいうと、ウリ科(メロン、スイカ)、バラ科(リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、イチゴ)、キウイ、バナナ、などが要注意です。

交差反応を起こす果物の一例を書いておきます。

スギ:トマト

イネ科(カモガヤ、オオアワガエリなど)ウリ科(メロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリ)ナス科(トマト、ジャガイモ)、オレンジ、バナナ、キウイ、オレンジ、など

ハンノキ、シラカンババラ科(リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、イチゴ)、ウリ科、ナス科、ヘーゼルナッツ、キウイ、大豆(特に豆乳)、マンゴ、オレンジ、など

ブタクサウリ科、バナナ、オレンジ、パイン、マンゴ、など

ヨモギウリ科、ナス科、バナナ、オレンジ、パイン、マンゴ、ピーナッツ、キウイ、セリ科(ニンジン、セロリ、コリアンダー、クミン)、など

診断のキモ


口腔アレルギー症候群の診断のキモは、下に書いてあることが当てはまれば、まず確定です。血液検査よりも皮膚テスト(プリックテスト)の方が診断には有用ですが(血液検査で陽性にならないことも少なくない)、問診にて下記の3つの条件を満たせば、口腔アレルギーの診断は「ほぼ確定的」だと考えられます。

①もともと症状無く食べられていた

②花粉症になってから症状が出た、症状は口だけ

③加熱したものや加工品は食べられる

*診断や管理については、受診された先生のご指示にお従いください。

口腔アレルギー症候群の治療

治療としては、現在のところ、「原因食物を避けること」です。

基本的に、「フレッシュな生の果物」に対して口腔内のアレルギー症状は出ますが、「加熱や加工すれば症状無く食べられる」ことがありますので、そのような工夫は必要です。

*加熱しても症状が出る場合は、厳密に避けることになり、通常の即時型アレルギーと同じ対応となります。

軽い症状のお子さんは、「好き嫌い」との区別は難しいですし、口の違和感がありながらも、その果物が好きでそのまま食べているというお子さんも居ます。「軽い症状だから食べたい」というお子さんは、「ゆっくり食べる」、「加熱・加工して食べる」、ことを守るようにお話しておいてください。いくら本人が好きでも強い口腔内の症状がある場合は除去してください。

繰り返しになりますが、原因果物を一気に食べたり、いっぺんに大量に食べたりすると、分解・消化が間に合わず症状が強く出る、のどに直接当たって強くのどが腫れる、ことがあり、要注意です。

生の果物においても、反応するアレルゲンの含有量が果物の銘柄、食べる部位、熟度、などより多少異なるため、症状が出る時、出ない時があったりします。

また、花粉症が悪化している時期には症状が強めに出ることがありますので、要注意です(例えば、春は豆乳で症状が出るが春以外は飲めるというハンノキ花粉症の方が居ます。イネ科花粉症のメロン、スギ花粉症のトマトでも花粉の時期だけ悪化するという方が居ます)

口腔アレルギー症候群は花粉に対する抗体の誤作動がメインですので、基本的に治りにくい疾患です。

花粉症を治せば、また果物を症状無く食べられる可能性はありますが、通常、花粉症は勝手には(自然には)治りません。現状、花粉症の治療が出来るのは、「スギ」だけです(スギ舌下免疫療法)。スギ花粉症の治療により、スギに伴う口腔アレルギー症候群が改善する可能性はあります。また、一部の方が果物自体を少しずつ食べ続けることで治ることもありようですが、一般的には勧められておりません。

*詳しいお話、除去などにつきましては、受診された先生のご指示にお従いください。

 


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