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書物の転形期:和本から洋装本へ

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このエッセイでは日本で洋装本が登場してから定着するまでの時期、すなわち十九世紀後半から二十世紀初頭までを対象として、書物の技術と当時の新聞広告や目録の記述などとを照らし合わせつつ…
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書物の転形期08 洋式製本の移入5:印書局設立前後の官庁洋装本

『官版国立銀行条例附成規』 1872年11月に刊行された『官版 国立銀行条例 附成規』は、『傍訓英語韵礎』とともに「ボール表紙本」の嚆矢とされる。そしてこの本は現在確認できる官庁が刊行した最初の洋装本でもある。1871年8月、大蔵省内に紙幣寮が置かれた。12月には渋沢栄一が紙幣頭を兼任し、1872年8月には銀行課が設置され、金融制度の確立と国産紙幣の製造という大仕事が進められていた。そこで定められたのが国立銀行条例である。6月に草案が完成したこの条例を大蔵省は印刷製本し頒布し