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書物の転形期:和本から洋装本へ

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このエッセイでは日本で洋装本が登場してから定着するまでの時期、すなわち十九世紀後半から二十世紀初頭までを対象として、書物の技術と当時の新聞広告や目録の記述などとを照らし合わせつつ…
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2020年5月の記事一覧

書物の転形期04 洋式製本の移入1:幕末の洋装本

江戸期の洋装本 江戸期に最も洋装本にふれる機会があったのは、阿蘭陀通詞と蘭学者である。しかし洋装本の製作が試みられるのは、確実なところでは、長崎に設けられた活字判摺立所で1856年から1859年の間に製作された長崎版和刻洋書まで下る。ただし、それ以前に製作されたと覚しい洋装本も複数報告されている。現在、洋装本の蘭書や洋学書はほとんどが貴重書扱いで、製本の内部構造を確かめることは難しい。しかし、貴重書ゆえに文化財の修復や管理の専門家による解体も含めた調査が行われており、近年は数