『ブルーマウンテン』 第四週 《想いは遥か遠く…》vol.16
【登場人物】
谷崎 涼真/25歳
カフェでバイトをしている。
いつか、自分で店をオープンするために修行中。
嶋田 樹(いつき)/20歳
大学生。両親は有名な俳優。
幼い頃から世話係に育てられ、親の愛情を知らない。
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涼真:
樹と俺は、母親の愛を知らずに育った。
あいつは、仕事でほとんど家にいない母親の代わりに、家政婦が世話をしてくれたという。
両親揃っているのに、愛情を受けられずに育った樹…
俺の場合は、母親はいなかったが、10歳歳上の姉さんが母親代わりに色々面倒を見てくれた。
父さんは、仕事で朝早く出掛けて行き、帰って来るのも夜中だったし、土日も休日出勤で、疲れているせいか、家にいる時は、寝てることが多かった…
それでなくても、無口で無愛想だった父さん。
母さんも、きっと、そんな父さんに嫌気がさして、家を出ていったんだろう。
姉さんの話だと、俺が生まれる前はまだ仕事もそんなに忙しくなかったらしく、休みの日は、3人で出かけたりもしていたらしい…
《『cafe りべるて』にて…》
樹:
『涼真さんも、お母さんとの思い出、ほとんど記憶にないの?』
涼真:
『ああ…母さんが出て行った時、俺はまだ小さかったからな…』
樹:
『僕は…母さんの姿は、テレビで見ることのほうが多かった…それも、演技をしている、知らない女の人だ。』
涼真:
『おまえの場合、かなりレアケースだからな。
有名俳優を親に持ってるなんて、なかなかない…俺も、おまえに会う前は、うらやましいと思ってたよ。』
樹:
『…』
涼真:
『だけど、今は違う。』
樹:
『涼真さん…』
(店のドアが開くベルの音)
涼真:
『いらっしゃいませ!…あ、』
樹:
『…お母さん…』
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