未来の届けたい働き方

働き方の違いが社会の分断につながらないように!

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■フリーランスへの助成は正社員の半額に

感染が広がる新型コロナウイルスへの緊急対応策として、政府は企業に雇用されている保護者が子どもの休校で仕事を休んだ場合、1人あたり日額上限8330円の助成金を企業に支払うと発表しました。

その後、フリーランスにも一定の条件下において日額4100円を支払うということに。

そもそも「フリーランスは対象外」だったのが、批判を受けてフリーランスにも助成がなされることになったのですが、この額の差を見て疑問を覚えた人も少なくないでしょう。

日額4100円という金額は、東京都の最低賃金(1013円)で4時間働いた場合を想定したとのことです。フリーランスは働く時間や収入も多様であることから、このような金額になったとのことですが、なぜ1日4時間しか働いていない前提なのかよくわかりません。

しかも、フリーランスとフリーターを混同していないか?という疑問もわいてきますね。この説明、アルバイトやパートなどの時給労働を指しているようにしか思えませんので。

3月11日にTBSのワイドショー『ひるおび!』を見ていたら、ジャーナリストの田崎史郎さんもこの件を説明する際、「フリーター」と連呼していました。田崎さんといえば安倍総理とも親密で、政権寄りのジャーナリストとして知られていますが、その方がフリーランスとフリーターを一緒くたにされているのを聞いて、「ああ、やっぱりか」という気持ちがいたしました。

そういえば政府が進める「働き方改革」ではフリーランスなど多様な働き方を推進するはずではなかったでしょうか。今年2月7日に開かれた未来投資会議(議長は安倍総理)でも、「フリーランスなど雇用によらない働き方の環境整備」は重要テーマに挙げられていたはずです。

でも結局、フリーランスは“偉い方々”からしてみたら「最低賃金で1日4時間程度働いている人」というイメージだったのでしょうか。

■正社員VSフリーランスの不毛なディスり合い……

フリーランスで、新型コロナウイルスの影響で仕事が飛んでしまった人、お子さんの休校により仕事ができなくなってしまった人、減らさざるを得なくなってしまった人は、恐らく今とても不安な気持ちでいらっしゃるかと思います。

政府は先ほどの日額4100円のほかに、非正規労働者やフリーランスが休業した場合には、「生活福祉資金貸付制度」に特例をつくって10万円を融資するということも発表しています。ただし、これは借金ですからいつか返さなくてはなりません。それを考えると容易に手を出していいものかどうか、迷う方も多いでしょう。

私は幸いにして今のところ損害を受けていませんが、もし仕事が一部でも飛んだらと思うと、やはり絶望的な気持ちになると思います。

でも、ネット上ではこんな声も上がっています。

「フリーランスになった人の自己責任。都合のいいときだけ国に頼るの?」
「リスクはわかっていたはず。こんなときだけ税金をくれというのはおかしい」
「いやなら企業に雇われればいい」

ギスギスしますね……。

こういう大きな出来事が起こると、社会はやっぱり分断してしまうのでしょうか。
フリーランスは「正社員だけずるい」と感じてしまい(でもやっぱり自分で選んだ道なので、それを言葉にする人はあまりいないと思いますが)、企業に雇用されている方々は「好きで自由な働き方を選んだのに文句を言うな」となる。

すごく不毛な言い争いがネット上で延々と続く……。

どうしてみんな「お互い無事に、安心して暮らせるといいね」とならないのでしょうか。こういうときこそ、どんな立場の人も安心して働けるようにみんなで知恵を出し合っていけるのが、成熟した社会だと思うのですが。

■分断が続けば、ウイルスが消滅しても社会は壊れます

分断で言えば、ネット上では他にも、「休校となって公園で遊びたい子どもたちVS子どもたちにウイルス感染させられたくないから家にこもっていてほしい高齢者」という構図も見かけるようになりました。

子ども(とその親)と、高齢者という世代間の分断も起こり始めています。これも不毛な気がします。

私は最近、近所のプレーパーク(子どもたちが主体となって工夫して、遊びを作り出せる遊び場)に行ってきたのですが、そこには小さな子どもたちに、竹で作った弓矢の飛ばし方を教えているおじいさんの姿もありました。

こういうときだから、どろんこになっている子どもたちと接触するのが怖いと思う高齢者もいるかもしれませんが、子どもか高齢者かで遊び場を取り合うのではなく、お互いに気をつけながら、相手を排除せずに一緒に社会の中で生きていこうという気持ちはとても大事なのではないでしょうか。

プレーパークでの光景を見て、つくづくそう感じました。

「若者はウイルスをうつすから出歩かないでほしい」
「高齢者は感染したら危険なのだから家にこもっていてほしい」

こうやって他人へのリクエストばかりして、それを守らない相手に怒りを覚えても、状況は何もよくなりません。

分断が大きくなればなるほど、ウイルス騒動が安定してきた頃には、取り返しのつかないほどのストレス社会が生み出されているのではないかという気もします。それはウイルス以上に、私たちの生活に暗い影響をもたらすのではないでしょうか。

働き方に関しても、フリーランスと正社員は、いつでもどちらでも選べる、行き来できるものです。自分の生活状況や、目標、やりたいことに合わせて、働き方を選べるのであれば、みんなもっとラクなはずです。

でも、互いに「あっちの働き方は嫌だ」と分断が起こり、相手に対する侮蔑的な気持ちが混ざってきてしまったら、私たちは自由に働くということの自由を奪われることにならないでしょうか。

今大切なのは、どんな立場の人も安心して働き、暮らせるように事態にあたっていくことです。そのことを忘れてはいけません。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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