今は自分の強みを見つめ直し、磨くときかもしれません
働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?
このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。
■強みがあれば、手段を変えてやれることがある
仕事も生活も、さまざまな制約がかけられ、不自由な日々が続きます。
休みたくても休めず、多くの人の生活のために現場に出て働いてくださっている方々もいらっしゃると思います。仕事に出られず、ぽっかり空いてしまった時間をもてあましている方々も、いらっしゃると思います。それぞれに不安を抱えた毎日ですよね。
こういう事態になって、私はいろいろなところで「今、自分にできることを探していこう」と書いています。私の場合は、とにかく取材をしてさまざまな人の声を聞き、情報を得て、文字として発信することしかできません。ですから、その「文字として発信する」ことの中身をどうしていくか、精神をなるべく研ぎ澄まして考え続ける日々です。どんな情報があれば、どんな人の助けになるのか。同じことを伝えるのにも、どのような文体で書くことが今ふさわしいのか。そんなことを考え続けています。
アーティストやスポーツ選手なども同じようにして、ネット上から自分たちのお仕事を活かして、いろんな発信をしています。そんな様子を見ていると、いつも立っている場所にいなくても、いつもと同じ手段を使わなくても、自分の強みをきちんとわかっている人には、何かしらやれることがまだあるんだなと思います。
アーティストは、ただ作品をつくりあげるスキルに優れているだけでなく、人の心を癒したり、さみしい気持ちや不安な気持ちに寄り添ったりする力をもっています。その力はステージの上やイベント会場の中だけでなく、パソコンやスマホの画面を通しても発揮することができます。
スポーツ選手というのは、ただ試合で勝つだけでなく、つらい状況を耐え抜いたり乗り越えたり、努力する姿を見せることで、人に夢を与える仕事です。耐える力、乗り越える力というのは、普通の人よりもはるかに強いものをもっています。だから彼ら彼女らが画面の向こうで明るく笑いかけ「大丈夫」「頑張れる」というメッセージを送ってくれると、何か頼もしいものを感じます。
何か強みをもっている人は、いつもとは手段が違っても、今使える手段を使って、社会に価値を提供することができるということです。
これを自分に置き換えると、私にとって「書く」というのは手段で、いつもどおりその手段を使うことができていますが、それなら中身はどうだ、ということになります。私だからこそ伝えられることって何だろう。そんなことをじっくり考えるチャンスを与えられているような気もします。
■自分が培ってきた、人よりちょっとできることを探そう
今、思うように仕事ができず、「自分は何もできない」と思っている人もいるかもしれません。でも、こういうときだからこそ、自分の本当の強みは何かと考えてみるのもいいかもしれません。手段はその後に考えればいいので、まずは「自分が人よりちょっと得意なこと」を考えてみてもいいのではないでしょうか。
私の実家は、日本人形店を経営しています。お雛様や五月人形を売るお店で、ちょうどこのシーズンは毎年なら鎧兜などの五月人形を売る時期です。でも、まさに不要不急の商売……。買いたいというお客さまもほとんどおらず、やることがありません。
そこで今やっているのは「日本の伝統工芸の布を使った、マスクづくり」です。
人形店というのは、日本の伝統文化を伝える役割を果たしています。私の家族も、私以外はめちゃくちゃ詳しいです。そして、人形の着物や、節句の飾りをつくるのも仕事なので、縫い物も得意です。
これを組み合わせて、人形店が今できることと言えば、「マスクづくり」しかありません。というわけで、日本の伝統的な布をお得意先から仕入れ、せっせとマスクを自家製造。たくさんはつくれませんが、マスクがなくて困っている、高齢者や赤ちゃんのいる世帯、それから学童保育などに無償で提供を始めました。
こういう活動をすることで、こういう素敵な布があるということを知ってもらい、伝統工芸や文化に目を向けてもらえればということです。我が実家ながら、面白いことをやっているなと思います。
みなさんにもそれぞれ、きっと「人よりちょっとできること」をお仕事や日々の生活の中で、身につけているのではないかと思います。ケーキ作りが得意とか、車の運転が得意とか、人と人を結びつけるのが得意とか、たくさんの人の話を聞くのが得意とか、数字を分析するのが得意とか。
いつもどおりの動きができないからといって、その得意なことを封印するのではなく、活かしていくことを考えてみてはいかがでしょうか。手段を変えてみれば、できることがあるかもしれません。また今だからこそ、その強みを研ぎ澄ませていくこともできるかもしれません。すぐに収益につなげることを考えなくても、今強みをしっかり磨いておくことが、後に何かチャンスにつながることもあるかもしれません。
まずは自分がもっている、人よりちょっと得意なことを棚卸しするところからやってみませんか?
大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。
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