未来の届けたい働き方

男性の育児休暇を当たり前にするために

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■目立つ人が声を挙げることは大切です

男性の育児参加を、という声が高まる中、小泉進次郎環境相が育児休暇をとったことで話題になっています。大臣の育休取得には賛否両論が上がっていますが、男性の育児参加をどう思うかということを改めて世の中の多くの人が考えるきっかけになったのではないでしょうか。

以前、人材コンサルタントの方から、こんなお話を聞きました。

「最近の転職者の中には、男性でも育児休暇がとれる会社かどうかを気にする人が出てきています。会社側もいい人材をとるには、女性だけでなく男性が育児休暇をきちんととれる環境を整えていかざるを得なくなっているように感じます」

でも、2018年の時点で男性の育児休暇取得率はたったの6.16%(これでも過去最高)。その方が言うには、いくら法的に育休の申請を拒否することはできないとは言っても、「出世を諦めるのかと脅されたり、なぜ男性がやる必要があるんだと説得されたり、上司からの評価が落ちるなどの理由で、とれない空気になっているところが多いんです」と、職場の「空気」が育児取得を阻害しているとのこと。

でも、子どもができたら育児参加をしたいという若い男性は増えているし、そもそもそういう古い価値観が広がっている職場には行きたくないと考えている人も多いという話でした。

今回、小泉環境相の育休取得に反対する意見の中には、

・国を動かす重要な立場にあるのに育休をとるべきではない
・何かあったときにどうするんだ

という声が多くありました。

多くの職場でも同じように、育休をとろうとする男性に対して、「仕事に対する責任感はないと思われそうだから」と圧力がかかっているがゆえに、育休制度があってもとれないという男性がほとんどなのだと思います。

小泉環境相の育児休暇取得は、こうした職場の価値観に変化をもたらし得る、大きなきっかけになったのではないかと思います。賛否が巻き起こり、多くの人が議論をすることができた時点で、プラスになったのではないかと。

■育休取得率10倍のドイツから学べること

と、そんなことを考えていたときに、こんな記事をネットで目にしました。

「なぜドイツは男性の育休が急増した?社会の空気を変えたものの正体」
(BUSINESS INSIDER/大嶋憲子 [リクルートワークス研究所主任研究員])
https://www.businessinsider.jp/post-206372

ドイツでも、男性の育児休暇取得は15年ほど前に大きな議論になっていたそうです。メルケル首相の第一次政権時代、男女が平等に育児に参加し、出産した女性もはたきやすくするための施策を進めている中で、日本と同じような批判が起こっていたとのこと。

でも、両親の育休中の給付を大幅に引き上げるなどの施策によって、男性の育児休暇取得率は10年足らずで3.5%から36%まで上がったそうです。

ここまで育休取得率が上がったのには、新しい給付制度の効果もそうですが、メディアが果たした役割も大きかったと記事にはあります。メディアで「新しい父親像」を盛んに取り上げていったことが、社会の雰囲気を変えていったのだ、と。

男性の育児参加を推進するためにも、女性が仕事と子育てを両立しやすい社会にするためにも、私たちがつくりあげる「空気」はとても重要です。それにはメディアの働きかけもポイントになりますが、私たちひとりひとりが声を上げていくことも大切。今はSNSというメディアもあります。

働いているからには、その仕事に対してきちんと責任を果たしたいと思うのはみんな同じです。でもその思いを育児休暇をとれない理由にさせるのはおかしな話。人生においてなすべきこと、責任を果たすべきことは仕事だけではありません。そういう声を、みんなで挙げていって、空気を作り上げることが大切ですよね。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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