「伝える」ことが上手にできれば、仕事はうまくいく!
働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?
このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。
■「伝えたいことをうまく伝える方法」ってあるんでしょうか
先日、酒場でちょっと意識の高い若手の営業マンとお話をしていたら、こんなことを言われました。
「人にものを伝えるのって難しいですよね。聞きたいと思って会ってくれている人が相手ならいいんですけど、人の話を聞かざるを得ないような場で話すとき、伝えたいことを伝えるのってすごく難しいなって」
たしかに、考えてみたらたとえば学生時代、朝礼での校長先生の挨拶は苦痛だったし、会社員時代には会議で長々と説明をする人がいると眠くなったりしたものでした。つまり、あんまり伝わってなかったということですね(いいこと言うなっていう校長先生もいたような気はしますが)。
伝える側としても、大学などで講義をするときには、「後ろのほうで眠そうにしている子」たちにどのように聞いてもらうかということは、ちょっと意識したりします。
私は基本的には文字で伝えるということを仕事にしているので、その営業マンには、「不特定多数の人に響くような言葉とか、伝わる構成みたいなのってあるんですか?」と聞かれたのですが……。「スミマセン、そういうのはないです」としか答えようがありませんでした。他のライターのみなさんは、何かそういうテクニックをハッキリともっていたりするのでしょうか。
私がひとつ言えるのは、「どんな人に向かって伝えているか」を意識することが大切ということかなと思います。私がフリーのライターとして初めて手がけた書籍は、素粒子物理学の本でした。「ヒッグス粒子」を扱ったのですが、文系も文系、日本文学科出身の私にはそのような知識があろうはずもありません。ですが、編集さんはこうおっしゃったのです。
「同じように、よくわからないという方を読者対象にしているので、わからないライターさんがまずわかるようになって、書いていただくのが一番いいんです」
なるほど……。確かに、その道の専門家が書かれると、わからない人にとって何がわからないかがわからないので、小難しくなりがちです。そうすると、わかりたいけれどわからない人は、ずっとわからないままになりますね。では私の出番ですね、と思って取り組みましたが、まぁ大変でした。4カ月くらい、勉強に費やしたと思います。
勉強しながら、自分が「何がよくわからなかったか」をきちんと整理しておいて、執筆時にはそこをわかりやすくするように心がけました。実はこの本、今まで私が手がけた中で1・2位を争う売れ行きとなったのでした。
営業マンとそんな話をしながら、「やっぱり、相手がどんな人なのか、何を面白いと思ってくれそうな人なのか、どれくらいの知識があるのかということを考えて伝えれば、おのずと表現のしかたが選択できるんじゃないですかね」ということになりました。自分が伝えたいと思ったことを頭に浮かんだまま伝えるのでは、うまくいかないことも多いですよね。
■手段、頻度、内容のトーンも考えてみましょう
伝えるということでいうともうひとつ話がありまして。私は無料塾を運営していて、同じ地域内の無料塾や子ども食堂の運営者さんとお話しする機会がときどきあるのですが……。
そこでよく聞くのが、
「自分たちのやっていることがうまく地域に伝わっていない」
「ボランティアや子どもが集まらない」
といった話なのです。でも、私の無料塾には、毎月4〜5人のボランティア希望者さんから連絡が来ます。生徒募集をかけると、わりとすぐに定員いっぱいになります。ボランティアをご希望される方に「どうしてうちを選んだんですか」と聞くと、ほとんどの方がこうおっしゃるんですね。
「ブログやツイッターを見ていて、楽しそうだと思ったから。それに、頻繁に更新をしているから、ちゃんと運営しているんだなっていうことがわかるので」
他の団体を見ても、更新がしばらく前に止まっていて、活動しているかどうかよくわからないんですよ……、ということを、本当にみなさんよくおっしゃるのです。なので、他の運営者さんにも、「SNSなどで小まめに発信することは大切ですよ」とお伝えしています。
多くの団体さんは、チラシを配ったりホームページだけ作っていたりはするのですが、ネットを使って小まめに情報を発信するということまで手が回っていません。せっかく素敵な活動をしていても、このIT化の時代に、それを使わずして広報活動をしていては、広まるものも広まりません。
そして、そのSNSでの発信にしても、やっぱり「世の中をこうしたい!」みたいな熱い思いだけを綴っていると、スルーされることのほうが多いような気がします。それで「そうだそうだ」とすぐに反応してくれる人もいるとは思いますが、「理念はわかった、でも具体的にどんなことをやってるの?」「現場はどんな様子なの?」ということがわからないと、二の足を踏む人のほうが多いような気がします。
伝えたい熱い思いを伝えるためにも、その核心部分ではなく、周辺の情報を、より伝わりやすく伝えていくということは大切だと思います。
私の無料塾で言えば、生徒やボランティアスタッフたちの何気ない会話とか、子どもにこんな変化があったよということや、勉強に関係しそうなマメ知識みたいなものを、意識してブログに書くようにしています。そういう部分から「何だか面白そうだな」と思って、うちを選んで来てくれるボランティアスタッフや生徒が多いのです。
何を使って伝えるかと、相手に何を感じてほしいかを意識した伝え方をよく考えること。これは、どんな仕事にも活きるのではないかなぁと思います。
……と偉そうに書きましたが、先日発売しました電子書籍『無料塾に今、できること』をどうやってたくさんの方に読んでいただくか、目下悩み中の私でありました(笑)。
大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。
▼大西さんご執筆の最新刊はこちらです。
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