未来の届けたい働き方

「主体性をもって働いているか」がこれからの稼ぎ方のポイント?

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■「社員からフリーランスへ」タニタの働き方改革

今年6月、『タニタの働き方革命』(日本経済新聞出版社)という本が出版されました。健康総合企業の株式会社タニタが2016年から取り組み始めた働き方改革について書かれた本です。

タニタのこのプロジェクトの面白いところは、希望する社員には個人事業主(フリーランス)として独立してもらうというやり方。フリーランスになった人は、それまでやっていた仕事を基本業務として、業務委託契約で請け負うことになります。これによって、仕事内容は同じでも、進め方は個人で決めることができ、主体性をもって働くことができるというわけです。

働き方改革というとどうしても「残業を減らす」など労働時間のほうに意識がいってしまいます。でも本来の働き方改革とは、働く人ひとりひとりが主体性をもって働き、もっている力を最大限に発揮し、生産性を上げるようにすることだ、というのが谷田社長の考え。

生産性を上げることで、無駄な労働時間を減らす、これが理想的な順番だと私も思います。

昨今では長時間労働をすることは悪いことだ、という流れになっていますが、私はそこに少し違和感を感じています。フリーランスの私は1日10時間とか12時間とか、どうしてもノッてしまったときには20時間くらい働くこともあり、それを悪いこと、後ろめたいことだとは思えないのです。もちろん健康を第一に考えたほうがいいし、限度というものはありますが、「めっちゃやりたい!」と思ってしまう仕事を止められるのは、ちょっとつらいです。

ただ、フリーランスのいいところは、「ああ、疲れた。もう今日は半日で休もう」と思ったら休むこともできるというところです。

私の場合は、「とにかく量をこなさなければギャラが入らない=生きていけない」という切羽詰まった業界にいるので、それも難しい場合があるのですが、タニタはそれまで社員としてやっていた仕事を業務委託契約で請け負い、報酬もそれまでの給与・賞与を基準に計算されるのが基本ですから、「死ぬほど働かなくてはヤバイ」状態にはならないはずです。

モチベーションが高いときに一気に働いて、あとは休むこともできるし、会社が決めた方法をとらなくても、自分が最も効率的にできる方法、ストレスなくできる方法を考えて選ぶこともできます。それで成果が上がれば報酬も上がり、よりモチベーションは高まります。

働くことをよりハッピーにする、いい仕組みだと思います。

■敷かれたレールが大好きな私たち

最近よく感じるのは、どうも日本人は「主体性をもつ」ということが苦手なのではないかということです。

自分の子ども時代や、今の子どもたちを見ていても、「テストの点を上げるにはこうすべき」「入試にはこれが出るからこれをやるべき」と、学ぶモチベーションは「学歴を得るための点数」になりがちです。学ぶことを主体的に楽しもうという中学生や高校生は、あまり見かけません。

社会に出ても、このクセは抜けず、「人からどう評価されるか」を気にしたり、「与えられたことをいかにこなすか」という考えで仕事をしていたりする人がとても多いのではないでしょうか。

「自分がこうやりたいからこうする」
「こんな仕事をしてこんな人たちに喜んでほしい」
「この仕事をもっと面白くするためにこうしよう」

そんなふうに主体的な考えをもって働いている人は、そう多くないような気がします。それは、横並びをよしとする価値観や、テストの点とか、年齢といったわかりやすいモノサシで自分や他人を測ろうとする姿勢が、染みついてしまっているからなのかもしれません。私自身も、ついそういうモノサシで物事を考えそうになることがよくあります。

SMAPの「世界に一つだけの花」が流行ってから15年以上が経ちました。あの歌で、ひとりひとりの個性を大切にしよう、人と比べずに生きていこうという意識は高まっても、それがただ「人と比べてしまうしんどさ」からちょっとラクになれただけなのかもしれない、なんて思うことがあります。

とりあえず社会の中にあるどこかのレールに乗って、与えられたことをこなしていけばいい。その中で優劣はつくかもしれないけれど、人と比べなくてもいい。自分には自分のよさがあるはずだから。

……それもいいんですが、今後5年先、10年先、と未来を想像したとき、主体性のないままに自分を「これでいい」と肯定して生きてしまうと、そのうちピンチを迎えることになるのではないかなと思うのです。

■主体性がなければ仕事がなくなる時代はもうすぐ

主体性をもたずに働くということは、やりがいの感じ方が弱くなってしまうとか、「やらされている」と感じることでストレスがたまるといったデメリットもあると思いますが、何よりも「仕事がなくなる」リスクがすごく大きいのではないかと私は考えています。

日本の産業はこれからIT化、AI化が進んでいくことは間違いないですし、人間ができる仕事はどんどん機械に取って代わられていくというのは、みなさんわかっていると思います。マニュアル化できる仕事から、取って代わられていくわけです。

他人に「こうやって」と指示されてやる仕事というのは、マニュアル化されているわけですから、これに慣れてしまって、自分で考えながら仕事をつくるという能力が培われないと、いつか仕事はなくなります。

収入を得るということについても、ただ「うちの会社は月給いくら」ということだけ知っていて、何も考えずに受け取っていると、自分の仕事がどれほどの利益を生み出すものなのか、いくらの価値があるものなのかということがわからなくなります。

そうなると、いざ会社が守ってくれなくなり、別の場所で自分の能力をお金にしなくてはならなくなったときに(転職とか起業とか)困ることになります。

「四大卒で30代だから、これくらいもわらないと」みたいに給料を勘定しているのは日本人くらいなものですから、グローバル化が進む社会の中では通用しなくなっていくでしょう。

主体性をもたずに働いていると、これからの時代ではちょっとヤバイ人になってしまいそうです。

そんなことを考えてみても、会社のバックアップのもと個人事業主化して働くことができるタニタの改革は、とても魅力的なものに感じます。

みなさんはどう思うでしょうか?


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。


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