未来の届けたい働き方

フリーランスは自由でカッコイイ働き方……ってホントでしょうか?

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■フリーランスだから自由なのでしょうか?

多様な働き方の実現を、という声があちこちで聞こえてくる中で、noteでも今、「#はたらくを自由に」をテーマに投稿コンテストが始まっているようです。おそらく、このコンテストではフリーランスや起業した人たちのさまざまな働き方のスタイルが見られることと思います。

私も執筆や編集という仕事でフリーランスになってから、8年が経ちました。私の場合、実は「フリーランスになろう!」と何か大きな期待を持って独立したのではなく、やむを得ずフリーランスになったという形でした。

当時、私は2社の出版社に所属をしており、朝から夜まで1社に出勤した後、夜から明るくなるくらいまでにもう1社で仕事をしていました。どちらも少しずつ融通を利かせてくれていたので、締切まで余裕があるときなどは自宅作業のみでOKということもあり、完全に平日5日間睡眠がとれないということはなかったのですが、それでも無茶な働き方だったと思います。

なぜこんなことになったかというと、どちらの会社の仕事もやりたかったから、それに尽きます。でも、無茶な働き方ゆえ、持病の変形性頸椎症が悪化して体の痛みに耐えきれなくなりました。

そこで、「どちらの会社の仕事もフリーとして請け負えば、会議への出席や出社日数を気にせずに働けるじゃん!」と思い、退社をさせていただくことになったわけです。そして、そのままこの2社以外の仕事も増えていって、フリーという立場をリセットしてどこかに就職するという機会がないまま、今に至ります。ずるずる……。

フリーランスという働き方は、私には合っていると思います。ただ、昨今「フリーランスです」というと「かっこいいですね」みたいに持ち上げられることが多くなり、世の中が過剰にフリーランスに憧れを抱いていやしないかと心配になってくることもあります。

「自由でいいじゃないですか」などとみなさんおっしゃいますが、自由って、時間に縛られないということでしょうか。仕事を選べる自由ということでしょうか。それは確かにそうですが、ときに生きて行くために頭の中が「金、金、金」の計算でいっぱいになったり、時間に縛られるどころか無制限ゆえに1日20時間くらい仕事をしていたりということもあります。休みという概念はないに等しい生活です。
それで、ふと思うのです。

会社員ってそんなに不自由だったっけ……?と。

■会社の中でも、自由に働けるはず!

私が会社勤めをしていたのは9年ほどですが、その間「会社員は不自由だ」と感じたかというと、そんなことはなかったように思います。朝が弱いので、毎日出社時にはヘナヘナになりながら通勤電車に乗っていましたが、会社にたどりつけば完全にスイッチオン。今考えれば、そうやって出社をすることですぐに仕事モードに入れるというのは、自宅で仕事をするフリーランスにはないシステムなのでよかったですね。

これまで務めてきた会社では雑誌の編集のほかにも、営業や通販事業などの業務や、経営企画会議などにも参加していたので資料作成などにも追われていました。どれも、「これをやってくれ」と会社から決められた仕事ではありましたが、出社してからそれを何時までにどうやるかは自分の裁量で決めることができます。

私はこれが結構好きでした。「何時までにこれをやったら、取材に出て、戻ってきてから次はこれをやる」という作戦を立てるのは自分で、それが上手く決まったときはとても気持ちよく1日を終えられます。

今、会社員時代を思うと、やるべきことはある程度決められてはいるけれど、その中で自分でどのようにやるか決めて、実行して、その成果を誰かが見て評価してくれるというのはとてもよかったと思うのです。売上など数値に表れるような成果以前に、取引先とのちょっとしたやりとりや、やってみたい企画を社内でどうプレゼンするかなど、毎日の仕事で迷ったときにアドバイスをくれる人がすぐ近くにいること。これはすごくありがたかったなと。

常に誰かに評価されていることに、息が詰まるような不自由感を感じる人もいると思うのですが、それがなくなったときにはきっと、そのありがたみがわかるのではないかなと思います。

会社員、悪くないと思うのですよね……。

■会社員をバカにする風潮は嫌いです……

このところSNSなどでよく目にするのが、「年功序列や終身雇用といった仕組みによって、使えないのに高い給料をもらってるオヤジたち。あんなふうになりたくない!」といった年配の会社員たちに対する批判です。そして、「若者は会社に縛られず、自由に働くんだ!」と続く。でも、それって本当ですか?とじっくり考えてみてほしいなと思うのです。

会社勤めだからといって、一挙手一投足すべてを管理されているわけではないはずですし、組織の中で自分のポジションをしっかり作り、上手に生きている人たちもたくさんいます。会社員は実力勝負をしていないという声もありますが、絶対そんなことはないはずです。

会社の中で、常に周りに自分の仕事ぶりを見られながらも、自分の裁量でさまざまな業務をこなせる人というのは、恐らく「ここから抜け出したい」という閉塞感で苦しむということはないんじゃないかなと思います。そして、そういう人はフリーになっても自由度が高い状態で仕事ができるでしょう。

でも、決められた仕事がある会社の中で閉塞感を感じている人は、独立したらなおさら苦しくなるのではないかなと思います。先週の記事でも書きましたが、むやみにフリーランス推進をすることには違和感しかない、というのが今の私の考えです。フリーランスは厳しいよということではなく、会社員という立場をそんなに「かっこ悪いもの」にしないでほしいのです。

会社員だけど、その社内規定の中で自由に働いて、こんなに楽しい毎日を送っている……そんな人たちの声をもっと聞いてみたいので、noteの投稿コンテストはそこに着目したいと思います!


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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