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時間で管理から、成果を管理にシフトしていこう

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■リモートワーク下で、労働時間チェックにうんざり

緊急事態宣言下で多くの企業がリモートワークを導入しました。会社員の人たちに話を聞いていると、宣言解除後も、まだリモートを続けている企業も多いようです。

中には、「出社したほうが価値が出せると判断される場合のみ出社を許可するが、そうでなければ今後は基本的には在宅」というお達しのあった企業も。大企業でも、リモートを進めることでオフィススペースを大幅に削減するところが出てきています。

出社と在宅で成果が変わらない仕事が多いのであれば、会社としてはリモートを推進して家賃や光熱費、社員の交通費などを削減できるというメリットもあります。

今後はオンラインでの会議、研修、電子押印などがますます導入されていき、リモートワークは「新しい働き方」から「当たり前の働き方」になっていくでしょう。

ところで、リモートの状態では、上司のマネジメント能力は大きく問われることになったのではないでしょうか。さまざまな企業の若手社員たちに、その会社ではどうやって部下が管理されているのかという話を聞いていると、こんな声がありました。

「勤務時間がスタートしたらシステムにログイン。あとは勤務時間が終わるまで不定期的に画面の前にいるかどうかチェックされる」
「オンラインでの朝礼時やミーティングでは、スーツにネクタイ必須。あとは何時に何をやったかという細かい日報を1日の終わりに出すことになっている」

いずれの人も、「これって意味あるの?」「生産性に何か関わるの?」という疑問を抱いている様子でした。他にも、リモートワーク中に「時間を管理されている」感覚を抱いた会社員は多かったようです。

ですが、部下が決まった時間にきちんと働いているかどうかだけに目を光らせることが、果たしてマネジメントだと言えるのでしょうか。

■不況でも「必要な人材」とされるマネジメントを

日本社会は、ちょっと前からすでにIT化されてきています。さまざまな作業がITを取り入れることで効率化され、労働時間を削減することが可能になっています。

そんな中で、ただ「この時間からこの時間まで、パソコンに向かっていること」を強いても、何の意味もありません。今日何をどこまで進め、どんな成果を出したのか。うまくいかなかった部分はどこだったのかと、仕事の本質的なことを問わなければ、マネジメントにはなりません。

それなのに、どうして多くの上司は「決まった時間、必ず仕事をしていること」にこだわってしまうのでしょうか。

ライフワークバランスという言葉が言われるようになってからも、もう久しいと思います。残業をして長時間労働する人が偉いのではなく、個人のプライベートの豊かな時間も大切にして、心と体の健康を保ちながら働くことのほうが、価値がある。持続可能性という言葉も出てきています。多くの企業はSDGsを進めようとしています。

それでも、「決まった時間、必ず仕事をしていること」、なんなら「たくさんの時間を仕事に費やすこと」が正しいと思っている人が多いのはなぜなのでしょう。

時代の価値観が変わっていることに気がついていないからでしょうか。自分が長時間働くことでしか価値を生み出せないからでしょうか。それとも家庭に目を向けることが怖いからでしょうか。

人間って、「つらい思いをしていること=頑張っていること=偉いこと」みたいについ考えがちですし、自分がされた教育をつい下の世代にも繰り返してしまいがちです。また、他人がラクをしているように見えると、どうもイラッとしてしまうこともあるでしょう。

でも、否応なくこれからの社会は変わってしまいます。

IT化とか、ライフワークバランスとか、そういうじわじわ浸透してきたものを、一気に「当たり前」として受け止めなくてはなりません。

リモートワークの時代に、「ただ決まった時間パソコンの前にいること」を重視してしまえば、いくらでも仕事を「してるフリ」で給料をもらえる社員が出てきてしまいます。逆にいくら短時間で成果を出しても「まだパソコンの前にいろ」と言われたら、嫌気が差してしまいます。

上司は今自分が推し進めるべき仕事がどのように成果を出していくか、そのために部下たちにどう動いてもらうのがベストなのかを計画立て、それを着実に遂行していくマネジメントを強く意識しなければ、会社が成長できなくなってしまいます。

部下や後輩がいる人は、そのことをしっかり意識しておかなければ、会社にとって「必要ない人」と判断されてしまうでしょう。

今まさに始まった大不況の中、生き残るためには変わることが必須です。

■リモートの時代だからこそ、人との関わりやチーム力が重要

ちなみに、これは教育においても同じことが言えると思います。

6月に入り、ようやくチラホラと公立の小中学校でもオンライン教育の導入が始まったように見受けられます。

でも、ただ授業映像を流すだけ、決まった時間それを見てもらうだけ、決まった分量の課題をこなしてもらうだけでは、本質的な教育とは言えません。それはただの個人個人の勉強で、教育ではありません。

人との関わりの中で生徒たちの知識と興味の幅を広げ、深く考える機会を与え、それぞれの力を引き出していくこと。そういう、学校がこれまでしてきた教育を、オンラインではどのように実現していくのか、期待ですね。

(現場の先生方は本当に大変だと思いますが、ここからが腕の見せどころ、仕事に対する考え方の表れどころではないでしょうか。頑張ってください!)

仕事も、学習も、ひとりひとりが家にこもりながらできる時代。そんなリモートワーク時代に大切なのは、個人個人の力を磨くこと以上に、複数の人と関わりながらいかに大きな物事を推し進めたり、成長したりできるかを考えることではないでしょうか。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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