未来の届けたい働き方

20歳の子たちへ。この社会で生きて行くために身につけてほしい力とは?

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■AI化、グローバル化の中で求められるものとは

先日、私の無料塾の生徒だった子たちが成人式を迎えました。第一期生の成人式です。中学生だった彼らも、今は高校を卒業して就職をして頑張っています。送ってくれた成人式の写真が、とても輝かしく見えました。

これからは毎年、教え子たちの成人式を喜ぶことができるようになります。そこで、彼らにどんな社会人になってほしいかなということを考えてみました。

今後、世界はAIの発展と普及が進み、ビジネスも大きく変わっていきます。世界のさまざまな国の人と働く機会も増えていくでしょう。

そんな中で大切になっていくのは、ただ言われたとおりのことをこなす力ではなく、今手元にある材料から新しいものを生み出す力だったり、さまざまなことに疑問をもち、どう変えればいいかと考える力だったりします。言われたことを理解して、言われた通りにやるという能力だけでは、これからのビジネス社会の中で居場所を見つけていくのは難しいでしょう。

でも、私たち大人は、子どもたちに「テストでいい点をとれ」とか「受験テクニックを身につけて偏差値がひとつでも高いところに入れ」なんて教えてきてしまっているものですから、そこへいきなりクリエイティブなことを要求するというのは無茶な気もします。

それでも、わくわくするようなものを考えて生み出していく力を磨いていかなくてはなりません。車や家電製品やスマホみたいな、世の中を大きく変えるようなものを発明することは難しくても、マニュアル化された物事しかできなければ仕事はなくなっていくわけですから、小さなことでも「もっとこうしたらいいんじゃないか」と考えて何かを変えていく能力は身につけていかなくてはなりません。

それって、どうやったら身につくんだろう……。

■まずは「幸せ」を感じ、考える力を身につけてほしい

思考能力やクリエイティブな力を磨いていくためのメソッドというのは教育現場でもさまざまなことが試行錯誤されていますが、私は、最も手っ取り早いのは「人の幸せとは何か」を常日頃から考えることではないかと思います。

そもそも仕事というのは、人を幸せにするためのものです。だからこそ対価がもらえるわけです。「誰かの幸せ」ということを考えられない状態では、新しいものを生み出したり、今あるものを改善したりすることはできません。

でも、「人を幸せにすること」は何だろうと、常日頃の生活、行動の中で考え続けていれば、自然に「これをやってみよう」ということが生まれてくることがあります。

ところが、今の社会は残念ながら、「誰かの幸せ」を真剣に考えるような余裕がなくなってきています。あいつより自分のほうが上だと誰かにマウントをとって必死に自分の幸せを守ろうとしたり(でもそれって本当に幸せなんでしょうか)、人が困窮状態から救われようとするのを快く思わなかったり。こういう状態に陥ってしまっていると、誰かの役に立つような新しいものを生み出すことはできませんね。

こんなふうにギスギスするだけで何も生み出せないような状態に陥るのではなく、まずは「自分にとって、人にとって、幸せなことって一体何なんだろう」ということをしっかり考えてみることが、大事です。

そのときに、社会が押し付けてくる「幸せの尺度」に惑わされないこと。高い学歴を得ること、大企業に入ること、年収○○円以上稼ぐこと、そういったことが幸せなのだと思い込んでいる人もいるかもしれませんが、本当に自分にとってそれが幸せなことなのか、人間にとって大切なことなのかどうか、心の奥深くを覗いて考えてみなければなりません。

人間はどんなときに幸せを感じるんだろう。その答えはさまざまですが、自分なりに「これは幸せだ」と感じられるものをいくつも見つけられるようになれば、その中に社会に役立つ何かを生み出すヒントが隠れているのではないでしょうか。

私が成人していく教え子たちに望むこと。それは、まず「幸せ」なことをきちんと感じられる人になり、次に人にとっての幸せとは何かを考えられるようになり、そこから誰かを幸せにする行動をしてほしいということです。

それがこれからの社会で人に必要とされて生きていくためにも、必要なことだからです。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。


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