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サードプレイスを見つけて自分を変えていこう

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■地域の人が集えるサードプレイスがあるメリット

私は仕事の他に、無料塾というコミュニティを運営しています。低所得層の子どもたちに無料で勉強を教えるボランティア団体です。また、近隣の子ども食堂でも、広報担当としてお手伝いさせてもらっています。

無料塾や子ども食堂の世界では、サードプレイスがあることの重要性という話がよく出てきます。

家庭と学校しか居場所がなく、どちらか、あるいは両方がつらい子どもたちにとって、地域の人たちとゆるやかにつながれる場所があると生きやすさはだいぶ違う、という話です。

子ども食堂においては保護者の方々も、家庭だけあるいは家庭と会社だけの生活で、子育てに不安やストレスを感じたときに一人でそれを抱え込まず、食堂に来ることで少し気持ちが楽になれるということもあります。

また、ボランティアで参加する社会人や学生も、家と会社・学校を往復する毎日ではなく、ボランティアというコミュニティがあることで毎日が充実したり、自分らしく人と関わることができたりします。

そしてどんな年齢の人も地域の人々と関わることで、すれ違えば挨拶をしたり、困りごとができたら相談をしたり、お互いに支え合っているという安心感を得ることができます。

無料塾や子ども食堂は、このように関わる多くの人たちに、サードプレイスとしてさまざまなメリットを与える場所となっているのです。

さて、このサードプレイスの需要ですが、働く人々の間でもこのところ高まってきているようにも感じます。ボランティア活動に限らず、会社と家以外に価値観を共有できたり、人と無理なくかかわれたりする場所が、求められてきているように感じるのです。

実際、4月の緊急事態宣言以降の2カ月で、私の団体にもボランティアでの参加希望者が毎月2倍ほどになっています。もちろん、このような社会情勢の中で子どもたちを助けたいという思いをもった方々ばかりですが、多くの方が「自分も会社以外の人たちと関わっていきたい」ということを話してくれます。

■働き方の変容で高まるサードプレイスの需要

サードプレイスの需要が高まっている大きな理由としては、リモートワークや時短出勤などが取り入れられ、多くの人に自分の時間ができたことだと思います。

でも、自分の時間ができたとしても、まだ頻繁に飲み会をしたり遊びにいったりするような状況ではありません。いつもより時間がある毎日をどう過ごすか、自分を見つめ直したときに、やはり何らかの形で誰かと関わりたいと考える人が多いのではないかなと思います。

先がわからない不安な状況だからこそ、誰かとつながっていることで毎日を安心して過ごせるようになるわけです。リモートワークで会社の人たちと仕事以外の話がなかなかできなくなった今、人との繋がりを感じるためにもサードプレイスの重要性は高まっているのではないでしょうか。

また、働き方や毎日の生活が大きく変容する中で、自分はどう行動や考え方を変えていくべきか、迷っている人も多いと思います。そんなときには、似たような価値観をもった人たちと関わることで、自身の変化の方向性を定めていくということも有効でしょう。

自分と似たような人たちは、みんなどうしているのか? それを知ることで、自分一人ではなかなか難しかった変化ができるようになるのだと思います。

考えてみれば私も、「やっぱり飲み会はみんな我慢してるのかな?」「外出仕事をどれくらい戻していけばいいのかな?」と、似たような価値観の人たちの話を聞きながら判断をしているところがあります。

■自分とは違うコミュニティを理解することで視野を広げる

自分と共通の価値観をもったコミュニティだけでなく、ときにはまったく違った職業、年齢、生活、価値観の人たちとかかわってみるのも、今だからこそ面白いような気がします。

自分と似たような人たちだけのコミュニティしか見えていないと、社会全体の雰囲気がどうなっていて、これからどう動いていくのか、見誤っていく可能性もあります。政治家がときどき貴族のような采配をふるうのもそのせいですね。

私の場合は、最近Vtubeの世界にを突っ込んでみました。

仕事で存在は知っていたのですが、アニメやマンガに疎く、おそらく同世代はほとんどいないだろうあの世界に、私は無関係な存在だと思っていました。でも入ってみると、案外みなさん優しくフレンドリーに接してくれて、新しい言葉や文化を知ることができ、日本各地の若者たちがどのような暮らしをしているのかも見えてきました。

東京などの都会で、メディア関係者、ITや金融、メーカーなどに勤める若者たちが、これまで私が描いていた「将来を担う若者たち」の像でしたが、これがいかに偏っていたかに気付かされました。

考えてみれば当たり前なのですが、イメージというものはどうしても自分が知っている人たちからしか具体的には湧いてきません。地方の製造業や運輸業で働いていたり、都会の中でもさまざまな理由でアルバイト生活をしていたりする20代の人たちと話すことで、ようやく彼らの姿が生き生きと見えてくるようになりました。

■みなさんも、サードプレイスを作ってみてください!

これから先、日本の働き方はどう変わっていくのか、人との関わり方はどう変わっていくのか、まだハッキリとはわかりませんが、変わっていくことだけは確かです。

その中では、自分だけ今のままでいては、ビジネスだけでなく個人的な付き合いにおいても、取り残されていってしまいます。時代が変わっていく中で、自分だけ取り残されるというのは相当こわいことだと思います。お金が稼げなくなるとか、友達が減るということだけでなく、漠然とした孤独感を常に抱えていなくてはならなくなるからです。

昨今、人が亡くなるような悲しい事件を見ていると、孤独は人間にとって最大の敵のような気もします。

ですから、価値観を共有し合って安心できるコミュニティや、違う世界の人たちと関わって視野を広げられるコミュニティなど、サードプレイスをきちんともっておくことは、今とても重要なことのように感じます。

なかなか踏み出せないという人は、近所にある昔ながらの喫茶店に行っていつも同じ席に座ってみるとか、ご近所の人に挨拶をしてみるとか、そういうことから始めてみてもいいかもしれません。自分を認識してもらうことが、コミュニティに属する第一歩です。

ぜひみなさんも、サードプレイスを作ってみましょう。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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