仕事を「誰とやるか」で、出せる成果が変わる!
働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?
このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。
■そもそも「誰とやるか」でモチベーションが変わりませんか?
新型コロナウイルス感染者数がようやく減ってきました。テレワークをしているみなさんも、そろそろ出社の時期が近付いてきているのでしょうか。それとも、テレワークや時差出勤を導入した柔軟な働き方ができるようになるのでしょうか。
テレワーク中、「どうもやる気が出ない」という声をあちらこちらで聞きました。自宅ではなかなか気持ちが切り替えられないという人も多かったですが、「オンラインミーティングでつまらない上司の話を聞かされて苦痛」「オンラインだとうまく意思疎通がとれなくてストレスがたまる」といった声も。
私も、会議や取材はすべてオンラインにしてもらってずっと引きこもってきましたが、案件によってはすごくテンション高く仕事ができるものと、そうでないものがありました。この違いは何だろうと考えてみたら、「人」なんですね。
直接会ってやりとりをしているわけではなくても、その人の仕事に対する思いが私の思いにフィットするケースでは、とてもテンションが上がりました。
仕事に対しての「思い」というのはわざわざ言葉にして話し合うようなことではありませんが、仕事をしながら感じることってありますよね。あ、この人はこの業界を本当に大切に思っているんだなとか、世の中がこうなればいいって本気で思っているんだなとか。
そういう気持ちが伝わってくる人に、私はいつもエネルギーをもらっているんだなということに、改めて気がつきました。ずっと自宅で作業をする単調な毎日でも、一緒に仕事をしている相手によって本当に気分が変わるんです。
プロなので、誰と仕事をするかによって成果物に差が出るようなことはいけないし、そうならないように気を付けていますが、やっぱりテンション高く仕事したものは、後からその成果物を「愛せる」度合いが違うように感じてしまいます。
テレワークしながら「一向にやる気が起きない」という人は、もしかしたら「誰とやるか」という点でうまくいっていないのかもしれません。誰と仕事をするかというのは、思いのほか重要なことのような気がします。
■チームの力で動き出せたオンライン指導
誰か一人、この人とやりたいという人がいるわけではなくても、「このチームでやりたい」というのも同じことです。
私が運営している無料塾は、いつもは教室に集まって顔を合わせてマンツーマンで生徒たちに勉強を教えているのですが、4月からはオンライン指導に切り替えました。
オンライン指導も基本的にはマンツーマンで、生徒たちの通信環境や学力などに合わせて使うツールや進め方、学習内容を変えています。すべての生徒のカリキュラムは私がざっくりと決め、それを各担当スタッフに進めてもらう形です。
私は最初、「通信環境もみんな違うし、直接会えない中でどこまでうまくやれるのか」不安でした。3月には「オンラインはムリ!」と言っていたくらいです。
ただ、スタッフたちと話している中で「オンラインできると思う」「テレワークになって少し時間もできたし、やりますよ」という声が聞かれるようになり、背中を押されてスタートすることにしました。
「やろう」と思ったときには、完全に「やれる」気になっていましたね。なぜなら、今いるボランティアスタッフの面々が最強だからです。
そこからは、IT関係のトラブルや「もっとこうならないの?」をズバッと解決してくれるチームが自然にできあがり、生徒たちとのオンラインおしゃべり会が定期的に開かれるようになり、4月中は入塾を待ってもらっていた新1年生たちも5月には受け入れて指導を開始することができました。
毎回の学習成果の報告も細かく挙げてくれるので、カリキュラムの作成もとてもやりやすい!さらには、うちの無料塾を卒業した高校生たちの学習サポートにまわってくれている人たちも。
最高のチームだなと思います。もしこれが「自分一人で何もかも考えて、指示通りに動いてもらうだけ」のチームだったら、私はオンライン指導には踏み切れなかったと思います。学習指導はもちろん安心して任せられるし、それだけでなく運営の面でもみんながそれぞれの得意なことを発揮してくれて、成り立っているのが私の無料塾です。
ゆえにこの期間、他の無料塾からも何度か「どうやってやってるの?」という問い合わせをいただきました。ありのままを説明すると、「それはうちではできない」になってしまうので、ざっくりとシステムだけを説明するのですが、それでも言われるのが「そういうメンバーを集めないと厳しいですね……」。
そうなんです、一人ではできないのです。
■長く続くNPOはチームワークが上手
無料塾や子ども食堂のような活動は、どうしても代表がグイっと前に出て全部を動かそうとしがちなのですが、一定以上の規模を動かすにはチーム力が必要なんですよね。昔、ベンチャー企業にいたときにも思いましたが、代表者ひとりだけの力で動かせる物事には限界があります。
でも、5人でも10人でも、チームとして力を発揮できる土壌を作っておけば、その成果は10人分、20人分のような大きなものになったりもします。特に、支援を必要としている人たちがいる活動では、代表者ひとりが動けなかったら何もできなくなるという状態にしてしまうのはマズイです。
だから、強いチームを作っていかなくてはいけない。
「そんな優秀な人を選んで集めるのは難しい」と思う人もいるかもしれませんが、簡単なことです。やりたいと熱意を持って入ってきた人の、その気持ちと能力をまず信じること。これに尽きるのではないかなと思います。
相手の能力をリスペクトして見ていると、「この人はこんなこともできるんだ!」といろいろなプラスの発見が出てきます。そこに、代表は甘えちゃえばいいというわけです。「もしかして、できちゃいます?」と相手を信じていろいろお任せしていれば、自然と強いチームになっていく、そんな気がします。
これまでいろいろなNPOを見てきましたが、ひとつのことを長く続けて、しかも活動規模の大きな団体は、やはりどこも、チーム力が優れていると思います。トップの発信力だけでなく、スタッフがそれぞれの持ち場で力を最大限に活かしている。そして、熱い思いでみんながつながっている。
だからこそ成果を上げられるし、次々に新しいアイデアも生まれ、すぐに取りかかることができるわけです。
「誰と働くか」は、やっぱりすごく大事なことだなと、今改めて思います。最高の仲間たちに、感謝です。
大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。
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