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ドラマ『ハケンの品格』スタート、大前春子から学ぶ令和の働く姿勢

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■リーマンショック、年越し派遣村を経て第2シーズンへ

ドラマ『ハケンの品格』(日テレ)が6月からスタートしました。2007年の第1シリーズから早13年。当時、出版社の雑誌編集部で働いていた私はあのドラマをネタにいろいろ企画を立てたものでした、懐かしい……。

第1シリーズが放送されていたのは、リーマンショックの少し手前。2000年代前半まで続いた就職氷河期の少し後で、働く30歳前後の人の中には思うような就職ができなかったり、正社員で採用されず派遣社員になったりという人たちも多くいました。

このドラマ放送の翌年にリーマンショックが起き、たくさんの企業で派遣切りが行われ、「年越し派遣村」が設置されたわけです。

当時は、派遣社員というと、正社員になれなかった人たちというイメージが強かったように思います。そして、そういうメンタルで働いていた人たちも多かったのだと思います。

「今の仕事は生活のため、本当にやりたい仕事は別にある」と常に言い聞かせるような日々。私も2006年に半年ほど派遣社員をやっていたことがありますが、正社員の人たちと自分を比べて、どこか卑屈になっていたり、食いつなぐための仕事だと割り切ってロクに交流もしなかったりといった感じでした。

『ハケンの品格』の主人公・大前春子さんの場合は、正社員で働いていた会社をリストラされて、転職した2社目でも突然の解雇。そんな経験から、会社を信用せず、さまざまな資格を取って腕一本で生き抜こうとするわけです。

当時、きっと多くの派遣社員が、奮い立たされたに違いありません。

そして、第2シーズンの今。社会は13年の間に少しずつ変わっていて、正社員にこだわらない多様な働き方が認められつつある時代に入っています。

とはいえ、ドラマの中では相も変わらず正社員が派遣社員を見下すような場面も多く、そこは当時と変わりません。「古い」と思う人もいるでしょうが、おそらくほとんどの会社ではまだそれが現実です。

「働き方改革、やるべきだよね」と言いつつも、「でも自分は正社員でいたいなぁ。だって非正規って……」と思っている人は少なからずいるはずです。

子どもをもつ親たちは今でも「安定した職についてほしい」というのが願いです。「少しでもいい大学に入って、大きな企業で働きなさい」と口に出して言ってしまう大人たちがいる限り、ドラマで描かれる「正社員による非正規雇用者への見下し」はしばらく現実であり続けるのでしょう。

■正社員でも派遣でもバイトでも、責任と誇りをもって働こう

働き方改革とか、働き方の多様化とか、耳障りのいい言葉を世の中の大多数は肯定的にとらえていると思います。

その一方で、「じゃあ、これからは自分の腕一本で生きていってください」と言われたら、きっと大勢の人が困ります。自分の腕一本で生きられるような力をもっている人の中にも、会社という看板を外すことに踏み切れずにいる人はたくさんいるはずです。

ただ、大前春子さんが経験した突然のリストラは、リーマンショックで多くの人が実際に経験していますし、今の世の中の動きを見ていると誰にでもあり得ることのように思えます。

「働き方改革いいよね、でも自分は今のままでいいや」

ではいられないのが、2020年です。

第2シーズンの2回目の放送で、大前さんは別の派遣社員に向かってこう言いました。

「派遣には会社の責任はとれませんが、派遣にだってとるべき責任はあります。それは自分に対する責任です。『ハケンなんか』などと自分の仕事を軽く低く考えるのは、あまりにも自分に対して無責任です」

自分に対する責任。

これは「この働き方で、この仕事をする」と決めた自分に対して、きちんと納得のいく行動をとれということでしょうか。

他にないから今これを選択しているだけという考えで働くことは、仕事を軽く見ることにもつながります。今働く自分を低く見ることにもなります。そうではなく、今の積み重ねで実力をつけ、自分のポジションを築いていくことが重要だということですね。

これは派遣社員に限らず、働く人誰もがもっておくべき考え方のような気がします。

正社員であっても、正社員として給料をもらいながら、見合った成果を出し、実力を上げていくこと。アルバイトであっても、与えられた仕事を通して関わる人たちに喜んでもらえるよう努力すること。どのような立場であっても、自分の仕事に誇りをもつということが大切なのだと思います。

それを怠って、何となく仕事をして何となく合格点に達していればいいや……と過ごしてしまうと、いざ一人で何かをしなくてはならない場面で、何もできなくなります。

転職活動をする人たちの中には「今の会社が合わなかったから」というネガティブな理由しかもっていない人たちがいます。次の会社は雰囲気が良くて、長く働けるところへ。それでは苦戦するのも、次に入った会社で同じような理由で辞めることになるのも当然です。

一度自分が決めた仕事に誇りをもち、プロフェッショナルとして実力をつけていれば、どこかで自分のポジションを作ることはできます。でもそれを怠って、周囲が自分を育ててくれるはずだと委ねていたら、どこにも居場所は作れないでしょう。誰もが、自分自身に責任をとりながら働いていかなくてはならない時代なのです。

さて、第2シーズンは令和の新たな労働課題がどのように描かれていくのか。そしてこの時代を大前春子がどういう価値観で生き抜き活躍していくのか、楽しみですね。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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