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「好きでその仕事やってんなら文句言うな」はちょっとツライけど

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■だから、保障をめぐって分断するのはやめましょう

このところ、休業や減収に対しての手当や助成金など保障の話で持ちきりになってきています。他の国の例を見ていると日本はこの経済的な保障の話がなかなか進まないように思えて、多くの人がストレスを溜めていることと思います。

ただ、この保障の話題の中で、チラホラ見かけるのがこういう言葉です。

「好きでその仕事やってるんでしょう。なのに困ったときだけお金をもらおうとするなんて……」

仕事を好きで選んだ人は自己責任ということですが、こういう言葉の多くは、フリーランスや芸能人に対して投げつけられることが多いです。いわく、

「自由になりたくてフリーになったのに、仕事なくなったら泣きつくのはズルイ」
「好きで芸能人になったくせに、こういうときにお金もらおうとするんだ」

こういうことを言われてしまうのは、人によってはフリーランスや芸能人って、特権階級みたいに見えることもあるからなんだと思います。

細かいことを言えば、フリーランスでも組織より個人で動くのが好きで選んだ人もいれば、その職業につきたいと思ったらフリーランスという働き方しかほぼ選択肢がなかった人、もっと自分の力を幅広く活かそうと思ったら会社の枠組みを出ざるを得なかった人など、いろいろいるんですが……。

こんなふうに「みんながそうじゃない!」なんて事例を挙げていくことに意味はないですね。もうどう言われても、ここはいったん腹に収めておかないと、きりがありません。きっと、隣の芝生は青く見えているだけなんだと思います。

この連載でも少し前に書きました。こんなことで、「あっちはずるい」「こっちのほうがつらいのに」とやりあって、分断を起こしている場合ではありません。国民同士で立場や意見が違うからといってひがみ合い、非難し合い、なんてやっていたら、この難局はきっと乗り越えられないでしょうから。

政策や制度がおかしいのなら、それは政治家や自治体や国にきちんと意見すべきであって、国民同士で蹴落とし合っている時間は私たちにはムダでしかありません。

■今は、頼ることも大事です!

フリーランスなど非正規雇用にリスクがあるのと同じように、会社員にも倒産、リストラ、賃下げなどいろいろなリスクがあります。

そういう目にあったときに、堪え忍ぶだけではダメです。もしも理不尽な出来事であれば闘うことも必要ですし、うまく逃げ道を作って自分の生活を守ることも大切です。困ったら社会保障にしっかり頼りましょう。特に今のような事態では、「何か頼れるものはないか」と探すことはとても大切です。

これはどんな仕事の人も同じです。いろいろな事情があって働けない人も同じです。堪え忍んじゃダメ。ひたすら堪えて壊れるのではなく、みんな少し図々しいくらいに自分を守って、しぶとく生き残りましょう。

一人が壊れれば、それがみんなに連鎖してしまうかもしれません。だから、堪えずに頼り先を探しましょう。なければ、的確なところに声を挙げましょう。

社会保障は、みんなで助け合うシステムです。困った人のために使ってもらえるようにみんなで税金を払っているので、困ったときには使わないとダメです。そこに「好きで選んだ仕事かどうか」なんて関係はありません。税金をたくさん払った人が偉くて、少額しか払えない人は偉くないなんていうこともありません。

日本国憲法第14条にはこうあります。

すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

中学の社会の授業では、これはまるまる暗記させられることが多いです。なぜなら、この条文が人間にとって、この社会にとって、とても重要なことだからです。

■やっぱり、みんなが好きで仕事をできたらいいな

ところで、「好きでやってる仕事なんだから」という言葉だけ、やっぱり私は気になってしまいます。願わくば、みんなが自分の仕事を「好きでやってる仕事」と思ってほしい……。みんなが、理不尽に搾取されることなく安心して働けたり、誰かの「ありがとう」に喜びを感じたり、「もっとこうしたい」と仕事でワクワクしたりできたらいいのにと思います。

どうして仕事が「苦痛なもの」になってしまうのか。その苦痛を和らげて、余裕を持って仕事の困難に立ち向かえたり、それを乗り越えて喜んだりできるようになるには、何が必要なのか。

そういうことを、私も考えていきたいと思います。そういう働き方をみんながするために、社会がどう変わらなくてはいけないか。個人がどう考えたらいいのか。

幸せな働き方について連載しているこのコーナーですが、答えはなかなか出ません。引き続き、お付き合いくださいませ。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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