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パクリとオマージュの違い(簡潔に)

(モデル 優里)

パクリとオマージュは何が違うのか、パクリとは何か、簡潔に考えをまとめてみます。(著作権等の法律的な話ではありません)


パクリとは何か、どこまで許されるのか・・・

表現活動をしている人であれば、誰しも悩んだことがあるはずです。


オマージュ

既存の作品に敬意を込めて、敢えて部分的に演出や表現を似せること。全体を似せると「カバー」や「インスパイア」になりますが、オリジナリティが欠如しているとただの「二番煎じ」になってしまいます。

「創作昔ばなし」にきびだんごを登場させるのが「ももたろう」のオマージュです。



リスペクト

既存の作品に敬意を込めて、意識したものを創作すること。単に真似るのではなく、対抗したり、別の解釈を行ったりすることも含みますので、アイデアは似ているけれど表現方法や方向性は真逆、ということもあります。

「創作昔ばなし」で犬が裏切るのが「ももたろう」のリスペクトです。



パスティーシュ

フランス語ですね。既存の作品や作風、ジャンルなどを下敷きにしたオリジナル作品を創作する行為。こちらは非常に幅が広くて、例えばロックは全部「ビートルズのパスティーシュだ」なんて言えなくもありません。あるひとつのジャンルを確立させるということは、ひとつの文化を作ることですから、素晴らしく偉大なことなのです。

イタリア語ではパスタと同じ語源で「混ぜこぜ」という意味もあるそうです。違うジャンルの作品をまぜたり(コラージュ)、雰囲気や世界観を似せる(文体模写やモノマネなど)こともパスティーシュです。

「創作昔ばなし」で中世ヨーロッパ風の「ももたろう」を作るのがパスティーシュです。



パロディ

既存作品を部分的に面白おかしく再現すること。基本的には元ネタよりも誇張されます。モノマネがわかりやすいですね。よくあるのが、有名なキャラクターのセリフや有名作品の表現を借用する(もじり)、というものです。パロディがパロディを生むと、元ネタは知らなくてもパロディは知っている、ということも多くなります。

「創作昔ばなし」で鬼が「親父にも殴られたことないのに!」と言ったらガンダムのパロディです。



インスパイア

既存作品から刺激や影響を受けること。英語のインスピレーションがわかりやすいですね。パスティーシュと同じく非常に幅が広いですが、ひとつの基準として「表現者が元ネタの影響を自覚している」ということがあると思います。意図せず似てしまった場合は「ネタ被り」となってしまいます。

「創作昔ばなし」で主人公のライバルを鬼とするのは「ももたろう」にインスパイアされています。



モチーフ

創作のアイデアを既存作品や歴史、他のキャラクターや事件などに求めること。インスパイアと似ていますが、インスパイアが表現の発想や意味など精神的な影響にあるのに対し、表現される内容や手法など物理的な影響の方をモチーフということが多いようですね。

「創作昔ばなし」で主人公が鬼退治をするのは「ももたろう」をモチーフにしています。



もじり・本歌取

名詞やセリフなどをわざと他作品から持ってくること。単なるパクリと違うのは、元ネタを自作品にうまく取り込む(ダブルミーニングを持たせるなど)ほど効果が上がる、ということでしょうか。ダジャレなんかはその代表例です。

余談ですが和歌の大家である藤原定家は、著作権法の「引用のルール」ばりに細かな「本歌取のルール」を定めています。平安時代から、パクリと本歌取の違い、みたいな議論があったのかもしれませんね。

「創作昔ばなし」で「桃じゃろう」というセリフが出てきたらそれは「ももたろう」のもじりであり、某居酒屋チェーン店のパロディであり、それを知っていると「もじり」という言葉のダジャレであることがわかります。



カバー・リメイク

既存作品を新たな解釈や手法で作り直すること。大原則として原作者の了解の下に行われます。例えば言語や文化の違い、あるいは時代における違いにあわせて作り直すこともリメイクですね。

講談、漫才、ダンス、演奏など、同じものであっても表現者の個性によって印象や評価が変わることはありますが、これはカバーやリメイクとは言いません。表現者が独自の意図でダンスの振り付けを変えて踊った場合はリメイク、ピアノ曲をバイオリンで演奏するのはカバー、と言えそうです。

「ももたろう」を英語に翻訳することもリメイク(ローカライズ)の一種です。


以上に挙げたものは「パクリ」とは言わないものです。共通点として「元ネタが明確」「元ネタがわかった方が楽しめる」という点が挙げられます。要するにやましいところがないので元ネタが知られても全く困ることはないし、何なら元ネタが何かを知って欲しい、元ネタ込みで楽しんで欲しい、と表現者が考えているものですね。


次に挙げるのが、パクリ呼ばわりされることもあるが、セーフのものです。


王道・テンプレ

よくある演出のこと。定型や様式美、パブリックドメイン。

「創作昔ばなし」が「むかしむかしあるところに」で始まるのはテンプレです。




ネタかぶり・二番煎じ・孫引き(パロディ作品のパロディ)

セーフですが、こう評価されてしまうのはオリジナリティに乏しいということです。きちんと元ネタを勉強しなさい、ということでしょうか。



劣化コピー

「コピー」はリメイクとは違ってオリシナリティをなるべく排除したものを言いますし、その「コピー度合い」が高ければ高いほど(つまりオリジナリティが少なければ少ないほど)評価される、というものです。例えば写真の模写は「手で描いたように見えない」方が完成度が高いわけです。

ところが、コピーが不十分で余計なオリジナリティが出てしまった上に、元ネタよりもそれが面白くないという状態が劣化コピーです。要するにパクろうとしたが下手すぎた場合です。

「コピー」は場合はよってはアウトなのですが、劣化コピーはコピーが下手なあまりオリジナリティを持ったのでセーフ、という不名誉なものです。



次に賛否両論・グレーゾーンなものを挙げていきます。グレーソーンとしていますが、基本的にはアウトと考えた方がよいと思います。


コピー

リメイクと違って、できるだけ元ネタを忠実に再現しようするものです。原作者の了承があれば問題ありませんが、勝手にやってしまったら場合によってはアウトです。



サンプリング・コラージュ

既存作品から素材を集めてきて新たに構成するものです。素材(パーツ)をどの程度細かく取ってくるかによりますが、パーツ単体に原作者の権利が認められるような場合はアウトです。



上記のどれにも当てはまらず、既存の表現と同じ・似通ったものを「私のオリジナルです」として発表した場合、パクリや盗作となる可能性があるので注意しましょう。




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