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湊浜薬師堂「暁の薬師」
湊浜薬師堂は、陸奥国の国府(多賀城)が置かれていた宮城県多賀城市の隣、七ヶ浜町にある。
同町には、国府ゆかりの延喜式名神大社である鼻節神社が鎮座し、湊浜薬師堂は薬師堂周辺地区の鎮守として、長年信仰を集めている。
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薬師堂の本尊は、洞窟内に彫られた7体の薬師坐像(磨崖仏)で、現在は4体が現存。仙台市宮城野区岩切の東光寺、利府町菅谷の道安寺の薬師像とともに、宮城郡内三薬師に数えられる。
また、慈覚大師円仁が一夜で彫ったという伝説にちなみ、湊浜薬師は、「暁の薬師」とも呼ばれている。
薬師坐像は、慈覚大師円仁の作と伝わるが、彫りの特徴から、平安時代後半から鎌倉時代初期のものと考えられている。薬師坐像の一部には、赤色や黒色の顔料が残っており、当初は彩色が施されていたと推測される。
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現在、薬師坐像は保護のため覆堂がかけられ、見ることはできない。その代わり、「七ヶ浜町歴史資料館」(入館無料)に2分の1サイズのレプリカが展示されている。
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駐車場はないが、薬師堂裏手に駐車できそうなスペースがあり、車をとめる。
薬師堂裏手には、日本武尊が東征の際に発見し、身を清めた場所と伝えられる「冷鉱泉」なるものがあった。
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かつては、出羽三山に参詣する者は、必ずこの場所で身を清めてから出かける習わしがあったとのこと。しかし、現在は柵が建てられ、内部への立ち入りはできなくなっている。
この「冷鉱泉」は、昔から眼病や傷病、神経痛などに効能があったとされ、大正12年に東北大学薬学部が成分を分析したところ、諸病に効くことが認められたという。
この霊験あらたかな泉に薬師如来の加護を重ね、薬師如来が彫られたのではないだろうか。
【所在地】宮城県宮城郡七ヶ浜町湊浜砂山29-1
【駐車場】なし