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「骨になる現実」

中風邪(大風邪に対して)をこじらせたまま、10日くらい経過。
途中、ゆるやかに回復しては、また発熱の波を数回繰り返して、いま。
明日はだいじな行事(子どもたちが通う牧場のお祭り)があるので、そのためにふつかを費やして身体を休めた。甲斐あって、「ビールが飲みたいな」と思えるくらいによくなっている。
身体はほんとうに偉い。意識を傾ければちゃんと「その日」に合わせて調整をしてくれる。

風邪の10日間のあいだに寺尾紗穂さんのライブがあった。
その日も朝から動けるくらい身体はつかのま仕上がっており、おむすび隊4名で207個のおむすびを結んだ。
○玄米小豆
○青菜とじゃこと梅酢
○とうもろこしとドライトマト ケッパー、セロリの葉っぱ、オリーブオイル
○鶏おこわ 芽ひじき、人参、椎茸

今年のおむすび隊は、15歳のテラに始まり、来月今帰仁に引っ越してくる南美ちゃん、そしてうちの母である。母は手を真っ赤にしながら、何度か「熱っつ!」とおむすびを放りなげた。おむすびコロリン、である。
南美ちゃんの手はものすごくちいさくて蓮の花びらみたい、且つとても器用。テラは歳のせいもあって場数こそ踏んでないけど、若さと根性で結んでくれて、最後はものすごく上手になっていた。


さて、紗穂さんのライブは今年で6回目。
今年の音が今まででいちばんよかった、と皆さん口を揃えておっしゃっていた。目に見える操作、見えない作用、各所にいろんな工夫を施してくれた音響チームに頭が上がらない。

で、次の日わたしはちゃんと寝込んだ。そのためにお休みをとったのだ。
熱もきっちりあるし、ぜんぶ予定通り。

布団にひきこもり、梅肉エキスとNetflixをスタンバイ。うひゃひゃと穏やかにしていたけれど、それでもしっかりと現実はやってくる。
雌鳥の黄色ちゃんの突然の死。
雌猫シャケが鼻血タラタラで明け方帰宅。(今は無事に止まって羽毛布団で泥のように眠っている)

速やかに処置をしながら、「ああ、みんないつかは骨になるのだ」とふと思う。

というのは、初めて聞いた紗穂さんの曲、「姉さんの骨。桜色の骨」という歌詞。
「ほ、ね」
のところで、ドバーッと涙が溢れた。わたしも、隣の大沼ショージも胃袋の麻ちゃんも。

黄色ちゃんはたぶん、雄鶏のクロちゃんが交尾をしようと無理に体重をかけてしまって、その勢いで首が折れたんだと思う。
なんてこった、ほんとうに哀れ。黄色ちゃんも、クロちゃんだって。

クロちゃんの「コケコッコー」が、集落に響く。その雄叫びにいちいち反応しては、黄色ちゃんの不在に心痛む。
でも、このとめどない感情の波も、いつか鎮まりみんな等しく骨と化すのだ。
骨はまるで、ゆり上げられた砂浜の貝殻のよう。

とはいえ、今日もポーカーフェイスの現実に背中をぐいぐい押され、やることとやらないことを仕分けしながら、いちにちが過ぎてゆく。

熱はもうない。



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