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ストリートウェアブームが終わったら、センスのいいあなた達のターン

2019/9/22

ストリートウェアのブームが思ったより長かった。ていうか今もレイトマジョリティの間では続いている。

俺の記憶している限り、2014年にスタンスミスが復刻した辺りを潮目に、所謂ストリート系が大衆にも広まって人気を確かなものにしていった。


個人的には、ストリートウェアブームに楽しませてもらった部分もあるし、面白くない流れだなと思った面もある。

今日は面白くなかったところについて、ちょっと理由を考えたい。

面白くなかった理由1:初心者の参入障壁が低い

ファッションというのは端的に言って、差別化である。

いろんな意見はあろうが一先ずそう定義したい。少なくとも俺は、オシャレして出かけるときに他のみんなとどこが違うかを重視して着ていくものを選ぶことが少なくない。


そういう意味においては、実践するファッションの系統が複雑なほど差別化しやすい。

単純にアイテム数が多ければ人と違いを出せるポイントがたくさんあるとも言える。


例えばスーツスタイル。(スーツはスーツで苦手なのだがそれは今度別の記事で)

ジャケット、ベスト、シャツ、パンツ、靴、ネクタイ、ベルトと、選択するべきアイテムが7点もある。

一方ストリートウェアはどうだ。

フーディ、パンツ、スニーカー。

終了である。


複雑なことはある程度その分野に精通していないと手を出せない。

この例で言えば、スーツスタイルは初心者には難しく、ストリートウェアは初心者にも易しい。

初めてカウンターだけのBarに言った時は何を頼めばいいのか良くわからないが、鳥貴族や四文屋なんかに行けばビールかレモンサワー頼んどけばまあ万事オッケーみたいなこともあるし。

単純に考えるとストリートスタイルは初心者にも手を出しやすいジャンルだと言える。

というわけで選択肢の少ないストリートウェアはシンプルで参入障壁が低いため、ともすればファッション上級者を自負する人も初心者と近いアイテム構成になってしまって辛いなあという話し。

面白くなかった理由2:価格勝負やプレ値アイテム至上主義のラットレース化

上で参入障壁が低いとは言ったが、実はシンプルで選択肢が少ないほどセンスで差がつく。

実は、というほどもったいぶっていうことでもないのだが。

ゲームがシンプルなほど、経験によって養われた引き出しが活躍したり、研ぎ澄まされた審美眼が威力を発揮する。

例えばパーカーとパンツと靴のコーデでも、ビッグシルエットのパーカーに黒スキニー、サンローランのハーネスブーツを履いて三代目ジェーソールブラダーやK-popっぽくするとか、
肉厚でちょっとスポーティなパーカーに太いディッキーズとvansのold skoolでスケーター風にするとか、
与えられた選択肢の中でアドリブが効く。

ちなみ俺は最近チャーハン作りにハマっているのだが、自炊を始めて10年近く経ち、32歳になってようやく自分のチャーハンに自信が持てるようになった。知るか。


しかし、自称ファッショニスタのみんなが経験で培ってきたセンスに一つだけ対抗できる手段がある。

金だ。


ファッションという、気を使い出したらキリがない上に人の評価も気になったりして面倒なものに参入してしまったら、やっぱり人から褒められたいとかバカな気を起こしてしまうのが初心者の悲しい性(さが)。


でも時間をかけてセンスを磨くのはもどかしい。なので、ネットで情報だけは簡単に手に入るから、「大学生 メンズ 人気ブランド」とか、「ストリート系 何歳まで」みたいななんか努力の形跡が悲しい感じのワードでググってショートカットしようとしてしまう。


その結果何が起こったかというと、あらゆるブランドのプレ値化だ。

ストリートの王たるSupremeやNIKEのジョーダン系や一部の復刻モノなどは昔からだし言わずもがな。

さらに、今やストリートの人気ブランドになったノースフェイスの一部のダウンや、セレクトショップのオリジナルアイテム、果ては、ユニクロですら時折プレ値化するのである。


人間というのは単純なのもので、インスタでいくつか投稿されていれば、「流行ってる!買わなきゃ!」という風になるのだろう。ユニクロのプレ値化なんかはその最たる例だろう。


別にユニクロがプレることが気にくわないわけではない。

俺自身も、発売時に複数買い込んでメルカリで転売するみたいなセコイことをやったのは一回や二回ではない。

ユニクロは汎用性が高すぎて、「とりあえずイロチで買っといて着なかったら売ろ」ってモノが多すぎてスゴイから悪い。悪くはない。


そのように「人気になっているものを買っとけばオシャレです」とGoogleが検索に対して返すものだから、よくわからん初心者ちゃんや服選びにスタイルもカルチャーもない日和見主義者がプレってるアイテムを買いに走る競争になっているのがなんともつまらない。


参入障壁が低い(ように見える)ストリートの分野に多数のユーザーを引き込んで、販売量を限定したりコラボでプレ値化させ、かつそれを繰り返すことで無知蒙昧から金を巻き上げる。怖いぜ。

しかもTriple Sがバズった辺りで高級メゾン界隈もストリートで金が動くと見るや一気に舵を切って、どのブランドもダッドシューズやらフーディを投入してきて、奴らやっぱりデザイン力とかマーケティング力が半端ないのでアウトプットもエゲツなくカッコいい。


これでは騙されない方がおかしい感じになり、最初ストリート系に懐疑的だったファッションインテリ(というとインテリを気取ったアホのようだが、ファッション感度の高い層ということにしてね)も、同じアホなら踊らにゃ損損の精神で乗っかり、ストリートに覇権を握られ、やがてファッションに興味がある人間は「カッコいいものはプレ値になる」状態に慣らされ、今でもどこかでプレ値アイテム争奪戦が続いている。


面白くなかった理由3:正解の用意されたテストのようだったから

これはまあ、つまるところ上記1、2の掛け合わせなのだが、ストリートウェアにおけるオシャレに用意された正解コーデみたいなものがあって、ストリート系でオシャレたろうとしている人たちが一定数のパターンのコーデに収斂していくのがつまらなかったなあという主張。


要するに、うーんそうねえ、

トップス:グッチのロゴTee/Supのボックスロゴの何か/OFF-WHITEの何か

ボトムス:Fear of Godのクラッシュデニム/アディダスのトラックパンツ

スニーカー:BALENCIAGA Triple S/YEEZYの何か/NIKEのTHE TENとか


これに適当にBLENCIAGAのキャップでも被せておけばストリート系オシャレボーイのいっちょ上がりですよ。
※イメージしやすいように思いっきりステレオタイプなチョイスにしたので今やってたら古いけどね。


かつてここまで金がかかる上にテンプレ化し、なおかつ拡散したコーデがあったかなと。

金がかかってテンプレ化はまだわかる。高級ブランドは高いからこそ希少なんであって、どうしてもテンプレ化しやすいから。

しかし拡散ぶりが異常だ。

あまりファッションのアンテナの高くなそうなTinderの女子が、プロフに「BALENCIAGAのキャップ被ってる男は嫌いです」みたいにトレンド抑えてるアピールとマウンティングを一遍に済ませられる一言を書くほどに拡散しているのである。

ここまで一般層に認知されてるコーデって今までなかったんじゃ無いかと思う。

まあもしかするとその女が三浦翔平ガチ恋勢で、桐谷美玲と撮られた時にオソロで被ってたBALENCIAGAのキャップにトラウマがある可能性も否定できないが。


俺がファッションを好きな理由を思い浮かべてみると、やっぱり早い段階で、一番簡単に他人との違いを表明できることが浮かび上がってくる。

社会的に特に何も成し遂げていない俺としては、自分の存在の独自性を肯定するのにオシャレするのが非常にお手軽かつ有効なんである。


だから、正解のようなコーデやブランドがあって、みんなしてそこに群がることは到底理解しがたい。


ということでスト系が死んだら本当にオシャレな君らの出番だよ

そんなこんなでかれこれ5年ぐらい人気を保持し続けるストリートブームに対して自分なりに否定的な見解を書いてきたよ。

別にスト系に恨みがあるわけでもないし、俺自身もその系統のを着てみた時期もあった。M+RC NOIRとか日本に来たての頃結構着てた。結構何でも着るほうなので。


ストリート系の次は何が流行るんだろう。


いや。ここで「ネクストトレンドは〇〇だ!」なんつって通ぶったり評論家を気取るつもりはない。

そういうのはどっかのくだらんキュレーションサイトとか、ブランドの中の人ぐらいのテンションでブランド解説するブランドと全く無関係なユーチューバーに任せるよ。ユーチューバーにも好きな人いっぱいいるけどね。


そういうことを言いたいんではなくして、多分ストリートブームが終息したら、次にここまでわかりやすく流行るジャンルはしばらく現れないだろうねってことを言っときたい。


というか、ジャンルが流行るとかいう概念がなくなるかもしれない。

従来のトレンドは、マーケティングに成功した一部のブランドとか、アイテム単体とかそういう単位の短いバズりに矮小化するとかね。

そうやって正解が曖昧になってくれると個人的には面白くなると思う。

多分、今ストリート系を日和見主義的に“やってる”ユーザーの中にも本当は結構センスのあるボーイがいるはずである。

今日的ストリート的な紋切り型の正解みたいなコーデがなくなったら、そういう隠れハイセンスボーイがまた違ったスタイルを見せてくれるような気がする。


俺はそんな奴らの活躍を待っている。

オレハマッテルゼ。

このロクでもなくやはりロクでもない世界の目を瞑ってはいけない部分を目を見開いて見た結果を記してゆきます。