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おみくじのルーツを探しに:エピソード

こんにちは、前回安産祈願をしてもらった安子様あれからどうなったでしょう。
 
 「安子様は無事に皇太子妃となり、やがて皇后となられるでしょう。そして藤原師輔様が心配されていた出産も、無事に成し遂げ、お子様にも恵まれることでしょう。しかし、他の人にも優しく接しなければなりません。もしそれができなければ、不吉なことが起こるかもしれません」良源上人はそう続けて説明した。
「安子様なら、私たちを助けてくれたし、人に優しくすることに関しては心配ないわね」海は、安子の運勢が良いと聞いて、自分のことのように喜んだ。
「さて、私たちは時間がないので、次はさらにおみくじについて調べに別の時代に行きましょう。それに、今はまだ君たちに話せないことがあるの」ミクは意味ありげに良介と海に言った。
「いいよ。あんなに長いお経を読むのは僕にはちょっと無理だしね」「私も無理だわ」と二人は同意した。
「良源上人様、安子様、残念ですが私たちはこれで失礼させていただきます」ミクがそう告げた。
「そうか。おみくじについては理解できたか?」安子はみんなに尋ねた。
「はい、よく分かりました。どうもありがとうございました」良介たちは、良源上人と安子に丁寧に挨拶をした。
「君たちがおみくじを引けなかったのは残念だが、仏の教えを信じ、まっすぐに生きれば、きっと良いことがあるだろう」
「それでは、さようなら」良介たちは別れを告げた。
「さあ、次は良源上人に関する大事な出来事があった時代へ行きましょう。『吉むすび』を出して、良源上人のことがさらに分かる時代へ向かうわよ。さっき良源上人が教えてくれた呪文を唱えましょう」
「オン・アロリキャ・ソワカ」
 
三、角大師
三人は再び別の時代へとやって来た。
「ここはいつの時代?」と良介が尋ねる。
「また、良源上人に会えるのね。楽しみだわ。それに安子様にもまた会えるかしら?」海は良源上人と安子に再会できることを期待してワクワクしていた。
「実はね…」ミクは深刻そうな顔で話し始めた。「安子様はもう亡くなられているの」
「えっ!」良介と海は愕然とした。
「さっき、『君たちに言えないことがある』と言ったのを覚えてる?」ミクは悲しそうな顔をして続けた。
「あっ!」良介と海は、その言葉を思い出した。
「安子様はあの後、三男四女を授かったわ。これは良源上人が言っていた通りだった。そして息子は冷泉天皇となり、安子様は皇后として成功したの。でも、良源上人が言ったように『他の人にも優しくしなさい』という教えを守れなかった。安子様は、村上天皇が従妹の藤原芳子様を迎え、その美しさに嫉妬してしまった。そしてある日、安子様は壁の穴から土器の欠片を投げつけるようなことをしてしまったの。それが日常的になってしまい、結局、三十八歳の若さで産後の具合が悪く、亡くなられたのよ」ミクは安子の波乱に満ちた人生を語った。「でも、安子様は自分の子供たちに対して、兄弟間で順位争いをしないようにと言い遺されたわ。おかげで、関白になる順番でも兄弟の争いは起こらなかったの」
「そうなんだ…。あの安子様がそんなに若くして亡くなるなんて、ショックだよ」良介は、友達のように接してくれた安子を思い出し、悲しんだ。
「みんなで安子様のために黙とうし、成仏を祈りましょう」ミクはそう提案し、三人は静かに黙祷した。
良介と海は、学校で起こったある出来事を思い出していた。それは同級生の芳雄と安男のことだった。芳雄は勉強もスポーツも万能で、先生からも好かれている優等生タイプの生徒だ。それが原因で、クラスメイトの安男は次第に芳雄に対して嫉妬心を抱くようになっていた。
芳雄がテストで90点以上を取ると、先生は「今回も頑張ったな」と笑顔で褒めるが、一方の安男は50点以下になることが多く、先生から叱られることが多かった。「遊んでばかりいないで、ちゃんと勉強しろよ」と。そんな状況が続くと、安男の中で芳雄への嫉妬心が膨らみ、ついに意地悪をしてやろうという気持ちが生まれた。
ある日、芳雄が学校の廊下を歩いていると、安男が足を引っ掛けて芳雄を転ばせようとした。しかし、芳雄は運動神経が良いため転ばずに済んだが、振り返って「危ないな!」と言いかけたものの、安男は無視して立ち去った。それをきっかけに、安男は友達と一緒に芳雄を無視するようになり、芳雄は次第に孤立感を抱くようになった。
良介と海は、安子様が芳子様に嫉妬して土器の欠片を投げたエピソードが、安男と芳雄の関係と重なるように感じていた。そして、これから二人が再び仲良くなれば良いのに、と心の中で願った。
 
いかがでしたか、また次回よろしくお願いいたします。
題字、絵:瀬良田尚美

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