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読んだ本

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読んだ本について書いた記事をまとめます。月に2〜3回更新します。
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記事一覧

バイブスヤバめの小説『みどりいせき』を読んでほしい。

この小説を一言で表すならば、「読む大麻」だろうか。 始めは難しく読むのに苦しんだ場面もあったが、読み進めるうちにその独特の文体が癖になり、読み終わるころには、早く次回作を読みたいと思うようになっていた。 もちろん、この評価は小説の内容に引っ張られてのものだったことは言うまでもないが、それを除いても著者である太田ステファニー歓人の文体には依存性があると言わざるを得ない。 どのページを開いても著者にしか書けない文学があって、『みどりいせき』でしか読めない物語があった。 さ

2023年、買ってよかった本5選

2023年がもうすぐ終わろうとしています。本年も私はたくさんの本を購入して、読んだり積んだりしてきました。 ということで今回は今年買った本の中で買ってよかったと思う本を5冊紹介します。中には読んでない本もありますが、それも含めて「買ってよかった本」として紹介します! 1.石川淳の自選作品これは初夏の頃に神保町を訪れた時に発見して購入した本になります。石川淳は私が大学の授業で出会ってから、一番好きな近代文学の作家となりましたが、なかなか書籍化されておらずあっても講談社文芸文

小説「君のクイズ」が100倍面白くなる動画2選

「君のクイズ」小川哲の「君のクイズ」は、クイズとミステリーを結びつけたな小説です。物語は、生放送のTVクイズ番組「Q-1グランプリ」その決勝戦、最後の1問から始まります。 主人公、三島玲央の対戦相手・本庄絆は、優勝が決まる最後の問題で、文章がまだ一文字も読まれていないのに正解を導き出し、優勝しました。三島はこの謎を解明するために、自らの記憶を掘り起こし、決勝戦の全問を再検討します。 この小説はクイズプレーヤーの思考と世界を体験することができ、読者に知的興奮とエモーショナル

「いただきます」の前に読む 『初めての動物倫理学』

肉を食べるのはもうやめよう。これは本書の帯文に当たるが、これを読んで皆さんはどのようなことを思うだろうか? 「またヴィーガンがなんかいってるよ、」 「やりたい奴だけやってればいいじゃん。」 「何を言われようと私は肉を食べ続けるぞ!」 などあまりいい印象を持たれない方も少なくない、あるいは多数なのではないだろうか。 実を言うと私もこちらの立場で、なぜ何千何万年と続けてきた食肉を突然辞めるのか、絶滅の危機に瀕している動物ならまだしも、食べるために繁殖している動物を食べるため

数か漢字が嫌いでも……『数になりたかった皇帝』

具体的で、目に見えない。だからこそ「数」は面白いのだと、この本を読んで思った。 「具体例をあげてください」と言われると、真っ先に何か数字を探したくなる。売上はいくら上昇したのか、有意な相関関係があるのかどうか、実際に何人がその意見に賛同したのか、いつしか具体的なもの=数字と思っている人も多いかもしれない。 しかし、数字そのものを見ることはできない。そこに3人いたらたちまち「3」が現れるわけでもなく私の財布の中に「24329」が直接収まっているわけでもない。 言われてみれば

読んだら本が読みたくなる!? 『物語のカギ: 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント』渡辺 祐真/スケザネ

突然ですが、皆さんは積読されていますでしょうか、買ったけど時間がなくて読めていない本はもちろん、ちょっと読んでみたけど書いてあることが難しくて諦めてしまった本が1冊や2冊眠っているのではないでしょうか。 特に後者は一度失敗体験をしてしまったため、もう一度読む気が起きにくいことでしょう、もちろん私も冒頭10ページしか読まずに本棚の隅の番人となってしまった者たちがたくさん存在しています。 しかしそんな本達を読みたいと思える本に出会えました。 それが今回紹介する、 『物語のカギ

その黄金律以外から学べ!?現代アートの使い方

ある日Amazonのビジネス書ランキングに驚愕のタイトルが鎮座していた。 なんとも有益そうなタイトルで、 「この1冊あれば他はいらない」という言葉からも著者の自信が窺える。 しかし内容を見ると、例えば 教え23 ひとつのことをやり続ける  のあとに、 教え24 ひとつのことをやり続けない と矛盾した教えが並んでいたりする。 このような内容や著者のSNS等を見るとわかるが、本書は筆者の主観のみに基づく科学的な根拠のない主張や、一部の人を扇動させて成功を収めている筆者

買ってわかった『独学大全』内容以外のここが良い

いまや20万部以上売れている『独学大全』ですが、 そのボリューム(788ページ、3000円超)から、 「買っても読めない/使いこなせない」 と購入をためらっている方も多いのではないでしょうか、 これは私も同様で、流行りに乗じて購入したものの 読み始めるのに数ヶ月、読み終わるのにさらに数ヶ月と この本に一年近い時間をかけました。 しかし、読んでいない数ヶ月にもこの本には多くの学びがありました。 そんな内容以外の買ってよかったところを紹介します。 本棚の見栄え私が本書を購入

聖夜に悪口本を二冊読んだが病んでない。

12月24日の夜、私の手元には二冊の本があった。白・黒・金の3色の表紙に、「悪口」という聖夜に似つかわしくない二文字が共通している。 世間の人々が大切な人と過ごしている中、悪口を読む。なんて性格の悪い人かと思っただろうか、私も思った。しかし、読了後は意外にも嫌な気分ではなく、性格が悪くなったような自覚もない。 悪口本① 教養悪口本著者は、「(たぶん)世界で唯一のインテリ悪口専業作家」を自称される堀口見さん(https://twitter.com/kenhori2)人気急上昇