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物理的に誤った夢

古い書庫に迷い込んだ夢を見ていた。

そこは熱帯地方であるらしい。
植民地様式の白い建物の奥には半ば崩れかけた一角があり、破れた屋根から床面へ強い日射しが射し込んでいる。
傾いた書棚やひび割れた机の上には、それでも大きく傷んではいない様々な書物が山積みにされて、薄く埃を被っている。

そのなかの一冊を手に取れば、それは大判のモノクロ写真集で、日に焼けた褐色の背表紙には剥がれかけた金文字で「マレイシア」と記されている。

開いて見た頁に載っていた写真の、その内容とは。

白壁の高い場所から一本の横棒が張り出しており、そこには長いロープが掛けられている。
その一端には、化粧の濃い金髪の欧米人女優が縛り付けられており、もう一方には剣歯虎のような汚れた猛獣が繋がれている。

猛獣は女優に襲いかかろうとするが、一定以上の距離まで近付くとロープが張って相手は宙に吊り上げられ、爪を立てることができない。
喚き叫んで足をばたばたさせる女優。
諦めて猛獣が離れると、ロープが伸びて女優の足が地に着き、走って逃げようとするが、猛獣は気付いて襲おうとする、その繰り返し。

あれ、物理的におかしいな、両者が近付いたときに一方の足が地面を離れているのなら、離れたときにはもっと高い位置へ吊り上げられなければならないはずだ、と、その写真を見ながら考え込んでいる、そんな夢だった。
(2022.6.1)

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