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鋸とハンドル

せん定作業は自動車の運転と同じだというのが、私の持論だ。

この枝をどう切ろうかと考えながら進めているうちに、その流れを身体が覚え、そのうち樹の全体を見ただけで、鋸や鋏を持つ手がひとりでに動くようになる。

せん定には約8ヶ月のシーズンオフがあって、冬の始めに再開してからは、何本か切らないと勘が戻らない。きっと大脳の新皮質ではなくて、小脳あたりが覚えている技なのだろう。

そして、りんごの品種を切り替えてせん定をするときには、違った車種の自動車のハンドルを持ったときのような緊張感がある。例えば軽自動車からトラックへ、オートマ車からマニュアル車へと乗り換えるような。
このときは明らかに、小脳よりも大脳を使う頻度が増している気がする。

「北斗」から「ふじ」へ、そして「陽光」へ。
花芽の付く枝の質、新梢の太さと柔らかさ、果台枝が出やすいかそうではないのか。それらすべてに品種による違いがあって、それに合わせて切らなければならない。そして、その年の花芽の量に応じた枝の切り戻しの加減もある。

変量の多い方程式を瞬時に解くようなものであり、その結果からは複雑なアルゴリズムが生成して(そして、小脳に書き込まれて?)いるのだろう。
これらをAIに代行させたりということができるのだろうか。

農研機構は、せん定ロボットの開発を目標にしたハードとプログラムの開発をもう20年来続けているはずだけど、今に到るまで実用に耐える商品が出来上がったという話を聞かない。

これが最近のAI技術の向上によってブレイクスルーを迎えることがあったりするのだろうか?私には見当も付かない。
(2023.2.2)

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