M.エンデと佐藤真理子

M.エンデの短編小説集「鏡のなかの鏡 Der Spiegel im Spegel」に収録された一篇、「世界旅行者は遍歴を続けることにした Der Weltreisende beschloss, seine Wanderung」について。

「世界中を旅して満たされることのなかった旅行者」が、アジア人の娘に導かれて、「とうとう彼が見るということを始めた」という筋立て。

意識の変容と精神の解放を主題にしている掌編だけど、エンデの実生活を知っている身からすれば、これは彼と彼の再婚相手である佐藤真理子との出会いを描写した文章であるようにもみえる。

「(自らは)所有不可能なもののコレクションの、分不相応な所有者とされている」と語る彼女と、彼女を「しるしと奇蹟を支配する、いと優しきご婦人」と尊敬する彼氏とが、たまらなく愛おしい。

これは、私が大好きな物語だ。
(2023.11.23)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?