深き淵へ

夢のなかで私は、世界が広すぎ、深すぎることが悲しくて泣いていた。

世界の一番奥深くにある最大の秘密に手を伸ばし、握り締めたと思った瞬間に、それはもっと大きな秘密の鍵にしか過ぎないことが判り、自分のものにはできなかった喪失感に打ちひしがれて、地面に手を突き涙を流し続けていた。

魚を掴んだと思った途端、それは手をすり抜けて広い海へ泳いでいってしまった、という感じでもあるな。

「掴んだと覚えし魚 手を離れ 深き淵へと泳ぎ去りけり」(あとり)

これを逆の視点から見れば、そう簡単に相手の手に落ちてたまるか、ということだな。
(2024.4.18)

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