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環太平洋の補陀落渡海

「補陀落(渡海)」の語は、観音菩薩の浄土とされるཔོ་ཏ་ལ་(サンスクリット)から来ており、チベット・ポタラ宮の名の由来でもあるという。

行ったら帰れない片道の旅である補陀落渡海は、死後の楽園が南の海上にあるという思想に基づくものだけど、環太平洋の海に面した地域では、遺体を船に乗せて流すという慣習を持っていた民族はいないのかしらん。

この件に関する論考を見つけた。ミクロネシアには実際に遺体を海へ流していた地域があるようだけど、他地域の多くの民族にも形式的な舟葬としての習慣はあったものだと。
とすると、補陀落渡海とは、仏教伝来以前の習慣と観音信仰とが習合したものだといえるのかもしれない。https://manyo.jp/ancient/report/pdf/report10_15_sea_and_grave.pdf

なお、この論考を書いた人が所属している(財)元興寺文化財研究所とは、1967年に設立され、文化人類学・文化財に関する研究を行っている民間では唯一の公益法人だという。
このような組織が長期にわたる活動を継続できるというのは、東北の辺境に住まう私には想像もつかないことだな。

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