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【とよおかこども音楽クラブ】2023.5.5滞在制作日記/出石神社幟回しを観に行く

「とよおかこども音楽クラブ」では、昨年惜しまれつつも解散した「但馬民族芸能応援隊」の元メンバーの方からお話を聞き、豊岡に古くから伝わる芸能やお祭りについて、実際に観に行き、そこで聴こえた音や見たものをヒントに、作曲家である日本相撲聞芸術作曲家協議会ののむろん・つるみん・もみーとともに新しい曲をつくって演奏してみる活動を行っています。
今回は、2023年5月5日に観に行った出石神社の幟回しについてレポートします!

2023年5月5日、こどもの日。
この日は日本相撲聞芸術作曲家協議会(略してJACSHA/ジャクシャ)の鶴見さんと、KIAC橋本、とよおかこども音楽クラブリーダーの中学生Iさんとでリサーチへ行きました。

11:40 鶴見さんとKIACエントランスに集合、出石神社へ。
Googleマップでは出石神社まで約30分と出る。出石の街中よりも近い。風が強い。幟は風に振られそうだけど、大丈夫なのかしら、と話しながら出石へ向かう。

12:20 出石神社の駐車場に到着。
駐車場から歩いて境内へ向かうと、宮内センターというところに人が集まっていて、カラフルな幟が立てかけてある。前日に但馬民族芸能応援隊の資料で予習していたから、資料に掲載されていた写真と同じ幟と装束を身に付けた人たちがいて、テンションがあがる。中学生の女子たちが、竹笛(竹ボラというらしい。竹の筒に穴をつくって法螺貝のような音がするようにした手づくりの笛)の練習をしていて、音が聞こえる。

12:35 神社の入口に広場になっている公園があって、ブランコや滑り台やシーソーがある。公園の真ん中が土俵にできそう。

公園の端に、豊岡出身で「治水の神様」と言われている沖野忠雄のめちゃくちゃ大きな碑が立っている。でかすぎて驚いて裏側の説明をみんなで読む。豊岡藩のお金でパリへ留学して土木の勉強をして、淀川や大阪港の工事に携わった方だそう。

12:45 幟回しは13時からなので、先にお参りをすませる。お参りをすると、拝殿前の狛犬の角が1本だった。
手水舎がセンサー式。「近づくと水が出ます」という貼り紙。

12:58 徐々にみんなが拝殿前に集まってくる。幟も拝殿前に移動。門をそのままくぐれないので、横にして男性2人で担いで拝殿前に運ぶ。

テレビや新聞の取材陣。特に何のアナウンスもなく、幟回しが始まる。
よく見ると、持ち運べるタイプのスピーカーから、録音された男性たちが唄う幟回しの唄が流れていて、それにあわせて5旗の幟をそれぞれ2人ずつ男性が持ち、リズムにあわせて幟を持ち上げながら円を描いてゆっくりと廻りながら、フレーズの合間に地面をドンドン、と鳴らす。幟の担ぎ手の円の内側に竹法螺の笛の中学生がこれも円になって中央を向き、笛を吹いている。

13:00 拝殿前でのパフォーマンスはあっという間に終わって、みんなでぞろぞろと次の場所に移動する。誘導棒を持った男性スタッフが誘導してくれる。まだ中学生ではない小さい子たちやおばあさん、装束の人たちの家族など、ぞろぞろと付いていく。

境内での幟回しのあとは、旧家や庄屋屋敷跡などかつての有力者の家があった場所、その年に男の子が生まれた初節句のおうち、辻や村境(道路のまんなかや橋の上など)を順番にまわって全く同じパフォーマンスをする。初節句のおうち以外は、場所も順番も決まっている様子。

もともとこの行事は伝統的には中学生男子が幟を担いで、竹法螺の笛も中学生男子が吹くという決まりだそうだが、男子が少ないため、笛は中学生女子が吹いている。担ぎ手も中学生は1人しかいないらしく、他は参加している中学生のお父さんらが代わりにやっているそう。今年は初節句のおうちが1軒。

13:35 中盤あたりでそのおうちで幟回し。おうちの前には立派な鯉のぼりがあがっている。あそこかなあ?と話しながら付いていくとご近所の方々も現れる。赤ちゃんは生まれたばかりとのことで、幟回しの最中ずっとすやすや眠っている。お父さんが赤ちゃんを抱っこして、ご家族みんな正装で幟回しのひとたちをお出迎え。ハレの日!というかんじ。テレビの取材も。

14:00 さらに進むと、行く先々でご近所のお年寄りが出て来て、にこにこ。一緒にぞろぞろ移動する人と出迎える人たち、村に古くから伝わる行事ならではのアットホームなかんじ。

幟と装束を30年ぐらい同じものを使い続けていたためにとても年季が入っていたが、昨年新調したそう。

色とりどりの幟と深緑の装束の子どもたちが山に囲まれた畦道を進んでいく様子は、華やかで春っぽい。村境の山側での幟回しの道中では、行き帰りに出石の平野が見渡せる。この行事の由来と言われている「アメノヒボコ伝説」を思わせる風景。

道中に鶴見さんが地域の方とお話したところによると、中学生が体調不良で1人欠員となり、笛で急遽参加した大人の女性がひとり。練習は一昨日1回あったのみで、ほぼぶっつけ本番だそう。「鳴っていません。酸欠です。」とのこと(爆)
笛はこんなかんじ。

14:30 出石神社に戻ってくる。
戻ってくると、拝殿で先程幟回しでお祝いした初節句のおうちのご祈祷が行われている。幟回しチームも、終わるのを待って、幟を降ろして一度休憩。境内では、ご祈祷が終わるのを村のみなさんが待っている。このあと赤ちゃんの名前が地域の人たちに披露されるよう。

神社の由来を見ていると、出石神社は土木の神様をおまつりしているみたいだった。

14:40 ご祈祷が終わったらしく、宮司さんがマイクを持って挨拶。赤ちゃんのお

名前披露。赤ちゃんのお父さんお母さん、両家祖父母が揃って晴れ着でお辞儀。

宮司さんの合図で最後に再び拝殿前で幟回しの奉納。
幟回しはシンプルで毎回やることは一緒なのだが、私には最後の回が一番みんなの息があっているように見えた。

14:45 幟回しの奉納が終わり、行事が終了。
例年ならこの後餅まきがあるそうだが、感染対策のため今年は中止とのアナウンス。子どもたちには手渡しでお祝いのお菓子が配られる。

帰り際におばあさんが「幟が綺麗になってええわ~。私が小さいときからある行事でね。一緒に廻ってみる時間はなかったけど、ちょっとだけでもみたいと思って来たの。」ととても嬉しそうに話しかけてくれる。

14:55 出石神社を後にして、城崎へ。

16:15 KIAC着。但馬民俗芸能応援隊の資料から幟回しの資料を探して、みんなで見る。15年前の幟回しの写真がある。

16:30 竹法螺笛のような音が出せるかもと、空き瓶を吹いてみる。傘を幟の代わりにして、3人で幟回しを真似してうたって、音を出してみる。

幟回しの歌は意味不明な歌詞もあるけど、わかりそうな部分もあるので、自分たちなりに解釈して替え歌を創作してみることに。

*幟回しのうたは1番から3番まである。それぞれ一番最後のフレーズが異なり、3番までで1曲になっている。起承転結的なストーリー性がありそう。
*「3べんまわって勝負しろ」という歌詞が特徴的。
*誰かが名乗りをあげて自己紹介し、何かと戦っている歌?という解釈。

17:50 できた曲をみんなで演奏。録音してみる。

リサーチに参加した中学生・Iさんの感想▽
歌の歌詞がとてもおもしろかったです。歌詞の1部の「バーヤーナ」の意味が特に気になります!また、このお祭りにアメノヒボコがどう関係しているのかをもっと知りたいと思いました。

(レポート:スタッフ橋本)



参考文献
豊岡市の祭礼・年中行事等調査報告書
2017、豊岡市歴史文化遺産活用活性化事業実行委員会
195-197頁


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