気づかない
先日、駅付近に用事があり、そこを
歩いていた。天候は良いが風は強い。
駅構内に差し掛かると、同じ様なタ
イミングで構内に入る人を見かけた。
傍らにはワンコがいる。
盲導犬だ。
ワンコは、ハーネスを持つ人に沿い
その人に馴染んだ歩みを見せていた。
ハーネスを持つ人の指示は重要であ
るが、ワンコの能力も大切である。
僕にはそれ以上に、盲導犬ワンコの
存在が、涙が溢れるほど嬉しい。眺め
ているだけで胸が熱くなる。
盲導犬ワンコのように
誰かに沿い、人生の殆どを捧げるな
んてこと、僕には到底出来ない。
そのワンコの行く手には人だかりが
あった。皆、下を向いてスマホ。盲導
犬には気付かないのか、道を空ける素
振りもない。
そんな場面でも、ワンコは取り乱さ
ず、静かに歩んでゆく。