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原付ライダー青春グラフィティ (5)

5.公道でも原付2スト車が面白かった

 個人的にはミニバイクレースの改造クラスへの参戦はあきらめたが、公道用のマシンもそれなりにチューンアップして楽しむことができた。ミニバイクレースが流行っていたおかげで、多種多彩な公道マシン用のチューニングキットやボルトオンの改造パーツが、あらゆるショップから売り出されていた。

 自分は、ミニバイクレースで遊んだ後に残ったGR80にボアアップキットを組み込み、チャンバーを交換し、ビッグキャブに替え、リヤにカヤバのガスショックを装着し、その他諸々をパーツ交換、公道向けに耐久性重視の控えめのチューンをしてしばらく乗っていた。GRはミニトレより燃料タンクがちょっと大きい分、使い勝手が良かった。GRの角形の燃料タンクは7リットルもあって、普段使いの中で給油回数が少なくて済んだ。この改造GRに乗って奥多摩や奥秩父あたりによく日帰りツーリングに行った。奥多摩有料道路(現・奥多摩周遊道路)や秩父のグリーンラインのコーナーで、大きいバイクを追っかけ回して遊んでいた。チャンバーは、効率だけを追求すると音がうるさくなり、公道では近所迷惑になる。当然ながら、多少のパワーダウンを承知でサイレンサーを装着した。それでもかなりうるさかったかもしれない。周囲に迷惑をかけただろうと、現在は反省している。

 ところでこのボアアップしたGR80、ちょっと長い直線があればメーター読みで100km/hを軽く超えた。、まあ実測で何Km/h出ていたのかはわからないが、加速・最高速ともにかなり速かった。街中で飛ばすと面白かった。若気の至りとは言えバカなことをやっていたものだ。今考えると本当に反省しきりである。

 いずれにしても、ミニバイクレースに参加するにしても公道用にチューンするにしても、4ストよりは2ストの方が面白く、しかもチューンが簡単で安上がりだったことは確かだ。

 ただ、当時はミニバイクレースの10インチ以下クラスでは4ストのモンキーやDAX、ヤマハのシャリイなんかが走っていたし、そしてS2クラスでもXE75改で参戦している人がそれなりにいた。FLクラスでも海外向けのマシンだったXR75を時々見かけた。一定数の4ストミニバイクマニアがいたわけだ。特にモンキーの改造は盛り上がっていたと思う。だから、公道用の4ストのチューニングパーツもかなり市販されていた。しかし、パワーと戦闘力を求めるなら2ストマシンに手を加える方が、圧倒的に簡単で対費用効果が高い。出来上がったマシンの性能も格段に高かった。遊んだり改造したりする対象としても、4ストの小排気量車にはほとんど興味が湧かなかった。

 2ストエンジンのパワーアップの基本は単純で、「ボアアップ」と「チャンバーの交換」そして「シリンダーのポート加工」の3つだ。2ストのミニマシンは、これらの部分にちょっと手を加えるだけで、乗ると一瞬で体感できるほどのパワーアップと加速が得られたのだ。1980年頃に発売されたミニトレの最終型、確か6.3馬力になってモノクロスサス、CDI点火を採用したモデルだが、これをノグチの市販ボアアップキットとチャンバー、ビッグキャブでチューンすると簡単に13馬力以上になり、走れば110km/hは出た。

 「2ストマシンはピーキーで乗りにくい」と思っている人も多いかもしれない。しかし、原理的には同じ排気量のバイクなら2スト車の方が4スト車よりも低速トルクがある。たまたま80年代初頭に登場した2ストの原付スポーツバイクなどが、比較的高回転型の出力特性と多段クロスミッション搭載でパワーバンドが狭いピーキーな味付けでセッティングされていたから、そんなイメージがついたのだろう。しかし、90~125ccクラスのフルサイズの市販マシンなどは、同じ馬力なら絶対的に4スト車よりも2スト車の方が中低速トルクがあって、街乗りでもツーリングでも運転は楽だった。


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