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昔のコンデジで遊ぶ (2) ~たまにはスマホではなくコンデジで撮ってみよう…

 前稿「昔のコンデジで遊ぶ (1) ~15年以上前のデジカメの使い途を探る… 」を書いた後に、このnoteで「昔のコンデジ」「古いコンデジ」で検索してみたら、たくさんの記事がヒットした。いろいろと読んでみたが、古いコンデジを使うことがけっこう流行ってるらしい。中でも、意図的にCCD搭載機種を選んでその発色を楽しんでいるデジカメユーザーが多いことに驚いた。いや、オールドコンデジがちょっとしたブームになっているなんて、全く知らなかった。かつて長くデジカメサイトを運営していたが、ここ十年ぐらいの界隈の動向には全く無関心だったわけだ。何にしても古いコンデジなら手許に何十台もあるので、完動品に限っても全部売り払ったらけっこうなお金になりそうだ。もっとも、絶対に売らないけど… 

 さて、前稿では2000年代中頃から2010年代初期に発売されたコンデジ3機種、富士フイルム「FinePix F200EXR」、ニコン「Coolpix P5000」、同じくニコンの「Coolpix P330」を取り上げた。
 今回も同じような時代に発売された普及価格帯の3機種、ニコン「Coolpix P50」、リコー「R10」、カシオ「EX-Z2000」の動作を確認して起動し、実際に使ってみた。
 ちなみに前稿、本稿を含めて取り上げた機種の選択に意味はない。そこら辺に転がっている昔のデジカメの中から、バッテリーを充電して起動したものから適当に選んだだけだ。


■ニコン Coolpix P50

 Coolpix P50は、2007年に発売された普及価格帯のデジカメだ。発売当時の実勢価格は2万円台前半である。撮像素子は有効810万画素の1/2.5型原色CCD、28~102mm相当(35mm判換算)、F2.8~5.6の光学3.6倍ズームを搭載している。特筆すべきは、電源が単3電池×2本だという点だ。むろん、ニッケル水素電池も使える(設定メニューにアルカリ電池かニッケル水素電池かを指定する項目がある)。今回の撮影に当たっては、フル充電したパナソニックのエネループ(2000mAh)2本を使った。3日間持ち歩いて100枚ほど撮影したが、電池切れを起こすことはなかった。
 普及機にも関わらず、広角側が28mmからというのもいい。前項で書いた同じ年に発売された上位機種のP7600が広角側35mmスタートだから、この価格で28mmが使えるのは画期的だった。さらに広角側のF値が2.8と明るいのもいい。光学ファインダーも備えている。
 
 デザインは、お世辞にもスマートとは言えない。一見して小さいし軽いのだが、けっして持ち歩きやすい形状ではない。何よりも本体に厚みがあり、単三電池2本の収納部分でもあるグリップ部の出っ張りが大きい。ポケットに入れるとかなり嵩張るし、カバンに入れるとゴロゴロする。100均で探しても適当なケースがない。
 そして、今回撮影してみていちばんストレスを感じたのが背面の液晶画面だ。暗くて画質が悪い。晴天の屋外で撮影していると、液晶画面がほとんど見えない時がある。画面の明るさを指定でいるが、明るくしても輝度が上がるだけで、見難さはあまり改善されない。光学ファインダーで撮影しようとすると、グリップしている手の指がファインダーにかかってしまい視野に入って邪魔になる。
 
 このP50も購入当時は国内外の旅行時に持って行き大量の写真を撮った。使い捨てのアルカリ電池が使えるというのは、旅行時には安心感がある。それで画質は「良い」というか、旅行の記録としてなら「可もなく不可もない」画像を得られたと記憶している。
 今回P50で撮影してみて、あらためて記憶に間違いがないことがわかった。安価な、しかも800万画素とは思えないほどきれいな画像が撮れる。現在使っているスマホ(Xiaomi 12T Pro)で撮った画像と較べて解像感、シャープネスに欠けるのは当たり前だ。またスマホのカメラが吐き出す「見栄えを意識した画像」に慣れてしまうと、何ともメリハリのない画像だと感じる。前稿のCoolpix P5000の項目でも書いたが、「眠たい画像」と思うかもしれない。しかし、普通に風景や人物を撮影している限り、発色は非常にナチュラルで色の再現性も悪くない。
 
 P50は、買った当初からコスパ(画質/価格比)のいい製品だとは思っていた。2007年当時は既に1000万画素オーバーの製品が何機種もあった時代に、800万画素の低価格機種だ。また、コストダウンのためか1/2.5型という受光面積が狭いCCDを使っている。しかし、画素数を抑えているからこそ、1/2.5型で受光面積が狭い撮像素子でも、そこそこのレンジ感がある画像が撮れる。逆光でも夜間撮影でも致命的な破綻がない。ただし広角端28mmの撮影では、周辺の減光はほとんどないもののタル型の歪みがかなり目立つ。ただ、この程度なら個人的には許容範囲だ。逆に、この口径の小さいズームレンズで28mm撮影時の歪みをこの程度に抑えているとなれば、さすがニッコールレンズだと褒めたいぐらいだ。
 
 良いところばかり書いたが、所詮は17年前の安価な800万画素のデジカメである。細かい欠点を挙げればきりがない。先に逆光時にも致命的な破綻はない…と書いたが、さすがに極端な逆光には耐えられない。また夜間撮影時に画面内に明るい光源が入る時なども難しい。暗部や明部がつぶれることは、当然ある。また、手振れ補正があまり効かない。電子式手ブレ補正を採用しているが、油断して適当に撮っていると、けっこう手振れ写真を量産してしまう。そして発色が良いと書いたが、画素数やセンサーサイズの限界から、細かい諧調表現は苦手だ。
 また、マニュアル設定があると言っても、絞りはF2.8とF5.6の2種でしかもNDフィルターを使ったもの。当然ながら被写界深度のコントロールはできない。もっとも。極小画素のCCDに小さなレンズでは、被写界深度のコントロールなんて無意味だ。F2.8でもピントが合う範囲は広く、背景をボカすことは不可能である。
 
 こうして今使ってみても、P50は良心的な機種だと思う。さすがニコンが作った普及機だ。コストダウンを図りながらも、押さえておくべき基本性能はちゃんと満たしている。ある意味で「手抜きのない」製品だ。中古製品を安価に入手出来たら、遊んでみるのも悪くない。ただ、今回10数年ぶりに発掘して使ってみたP50は、電池交換時に日付を含む設定情報が消えてしまう。内臓のバックアップ電池(コンデンサ)が経年劣化でダメになっていた。交換は無理で、おそらく修理は不可であろう。古いデジカメを使う時には、内臓電池の寿命には要注意である。

街角 by P50
逆光 by P50

■リコー R10

 R10は2008年、15年前に発売されたデジカメだ。撮像素子は1/2.3型有効1,000万画素CCD。レンズは焦点距離28~200mm(35mm判換算)、F3.3~5.2の光学7.1倍ズーム。GR DIGITALⅡにも搭載された「電子水準器」を備えている。また、背面の液晶モニターも3型と大きくて表示画質もよい。発売当初の実勢価格が5万円程度だから、普及機というよりは少しハイクラスの製品に位置づけられるだろう。
 
 露出補正、ホワイトバランス、ISO感度、画質など、ともかく設定項目が多いカメラだが、その多彩な設定項目を使いこなすために「ADJ./OKボタン」なるものを用意している。背面のちょうど親指が触れる位置にあるADJ./OKボタンは、十字キーになっているレバーとプッシュボタンを組み合わせたもので、これで目的とする機能を選択して決定していく。また、ADJ./OKボタンを押すと表示されるメニューに、任意の機能を割り当てることもできる。使いこなすには慣れが必要だ。ちなみにシャッター速度や露出のマニュアル設定機能はなく、露出制御はオートのみだ。光学ファインダーはない。
 
 今あらためてこのR10を手に取ってみると、古さを感じない端正なデザインに驚く。余計なで出っぱりがない直線的な形状で、薄くてポケットにすっぽり入る。その分、グリップには少し難があるかもしれない。ボディ前面には金属的な質感があって、非常にいい。高級感がある…とまでは言わないが、安っぽさは全くない。カッコいいデジカメだ。
 R10が発売された2008年には既に2代目のGR DIGITALが発売されており、僕自身もR10購入時点ではGR DIGITALⅡを使っていた。それでもR10を購入した理由は、やはり28~200mmの光学7.1倍ズームを搭載しているからで、特に望遠端の200㎜は、旅行記録のために持ち歩くには魅力だった。
 
 さてこのR10で実際に撮ってみた画像だが、文句なしに素晴らしい。現在使っているスマホ(Xiaomi 12T Pro)で撮った画像と較べても、ほぼ遜色がない。シャープネス、解像感も十分だし、発色はいたってナチュラルで諧調表現も豊かだ。1/2.3型CCDにしてはノイズも少ない。そして、望遠端の200㎜で撮っても歪曲収差はあまり気にならないし、解像感も大きく損なわれることはない。絞り優先モードはないが、望遠端付近で近距離から撮れば、背景を整理することができる。または広角側でマクロ撮影してもボケで背景を整理することが可能だ。オートのみのコンデジとはいえ、慣れればけっこう意図した画像を得ることができる。背面の液晶もこの時代のコンデジにしてはクリアで、光学ファインダーがなくとも問題はない。CCDシフト方式の手ブレ補正機能は、さすがに望遠端では注意が必要だが、広角から標準の常用域での撮影ならかなり効果的だ。ともかく、欠点らしい欠点がない、驚くほどよいコンデジだ。
 
 SNSやブログ向けの画像だけでなく、発売から15年経った今の時代に旅の記録などに使ったとしても、問題なく良い写真が撮れる。間違いなく「今も使えるカメラ」である。
 スマホだけの写真撮影に飽きた人が、一度デジカメというものを使ってみようと思った時、R10ならかなり高い満足感が得られるだろう。露出補正、ホワイトバランス、ISO感度、画質などの細かい設定項目を駆使して、様々な撮影対象、撮影条件に対応して「意図的なカット」を狙うことも可能だ。ただし、きれいな写真が撮れる…という面だけで比較するならば、最新のスマホによる撮影画像を上回ることはできないことも確かだ。

街角 by R10
街角のバイク  by R10
夜景  by R10

■カシオ EX-Z2000

 EX-Z2000は、2010年に発売されたデジカメだ。撮像素子は1/2.3型有効1,410万画素のCCD。レンズは35mm判換算の焦点距離26~130mm、F2.8~5.6の5倍ズーム。マクロモードでは5cmまで接近できる。手ブレ補正機構はCCDシフト式だ。露出のマニュアル設定機能はなく、基本はプログラムAEのみ。発売当時の実勢価格は4万円を切り、3万円台の後半だった。特筆すべきはバッテリーの持ちが異常にいいことだ。リチウムイオン充電池「NP-110」を使うが、撮影可能枚数は約580枚と当時発売されたコンデジの中では群を抜く。僕も日常記録、旅行記録時の長時間のバッテリーライフを目当てにEX-Z2000を購入し、特に海外旅行時に持ち歩いて大量の写真を撮った。だからこの機種の機能や操作性、そして「クセ」については、かなり深く理解しているつもりだ。
 
 このEX-Z2000の売りは、従来のコンデジにない高画質を実現する「ダイナミックフォト」という画像処理エンジンと、シーン認識機能を備えた「プレミアムオート」だ。しかし、僕はEX-Z2000を長期間愛用しながらも、これら2つの機能をほとんど使ったことがなかった。ダイナミックフォトについては、夜景、逆光、青空、夕日などのシーンに加えて、顔の有無、被写体の動き、被写体の位置、三脚使用の有無などをカメラが自動で分析。露出、感度、フォーカス、手ブレ補正、階調表現、カラーバランス、ノイズリダクションなどを最適に設定する。しかしダイナミックフォトにすると、撮影後の処理によって記録時間が少し長くなるので、そのタイムラグが嫌だった。それに、メーカーが言うほど高画質とも感じられなかった。プレミアムオートや画像メイクアップ機能などは、もともと興味がないので特に使った記憶はない。
 
 日常記録や旅行記録時には、その大半を通常のプログラムオートで撮影していたが、ともかく「無難にきれい」な画像が得られる。先に書いたリコーR10と同様、現在使っているスマホ(Xiaomi 12T Pro)で撮った画像と較べても、ほぼ遜色がない。シャープネス、解像感も十分だ。一方で、このEX-Z2000発色は「ナチュラル」とは言い難い部分がある。全体的に見て「青み」が強い感じがする。画像内の「青」や「緑」が少し強調されるのだ。もしかするとこれは個体差に起因するもので、僕が持っているEX-Z2000固有のものである可能性もある。何を撮っても「あっさりした」色味で、いい意味でも悪い意味でも、あまりクセや特徴がない絵が撮れる。
 
 まあ、発色について個人的に引っかかる部分があると書いたが、撮影画像を普通に見る限り大きな問題ではないだろう。ともかく、EX-Z2000は、オートでパシャパシャ撮って、きれいな写真が撮れるコンデジであることに異論はない。撮影条件を選ばず、あまりにも簡単に破綻のない画像が撮れるので、ある意味では面白みのない製品だ。そしてバッテリーの持ちについては、文句なしに凄い。1回のフル充電でこれほど撮れるコンデジを僕は知らない。「普通にきれいな画像が撮れて、抜群にバッテリーの持ちがいい」…という理由だけで、このデジカメは使う価値がある。さらに付け加えれば、小型軽量で非常に持ち歩きやすい形状だ。ジャケットのポケットやカバンの片隅に放り込んでおいても、邪魔にならない。
 
 ところで、2010年当時、カシオのデジカメというのは、カメラ専業メーカーの製品と較べると「高画質」というイメージがあまりなく、写真好きのデジカメユーザーからは、一段低く見られがちな傾向にあったと思う。しかし考えてみれば、カシオ は「QV-10」という民生用カメラとして初めて液晶モニターを内蔵したエポックメイキングな25万画素のデジカメを、他社に先駆けて1995年に発売したメーカーである。デジカメの製品化には並々ならぬ意欲を持ったメーカーであったことは確かだ。
 カシオのデジカメは、興味深い製品が多くある。このEX-Z2000以外に僕が使ったカシオ製品となると、2002年に発売された200万画素のカード型デジカメ「EX-S2」「EX-M2」が忘れられない。パンフォーカスだが、なかなかきれいな写真が撮れる。またパンフォーカス故に合焦時間がゼロで、撮影時間が短いことが気に入り、いつもポケットに入れていた。

街角 by Z2000
街角の夜景 by Z2000

 こうして15年前の古いコンデジで撮影してみて、あらためて思ったことがある。普段スマホだけで撮影している人が、初めてデジカメで写真撮影をしたいと思いたったら、高価なミラーレスや高級コンデジを買う前に、中古で安価なコンデジを購入して「カメラでの撮影」を楽しんでみるといいかもしれない。本稿で紹介した各製品の中古なら、メルカリなどで上手く探せば5000円以下で手に入るだろう。3機種の中で最も機能が劣る800万画素のニコンP50だって、マニュアル撮影も可能だし、いろいろと画質設定も可能だ。各種カスタムフィルターも搭載している。フォーカス位置や範囲も変更できる。露出計測エリアも変更できる。確かに、露出とシャッタースピードの組み合わせを細かく変更して被写界深度をコントロールする…なんてことはできないが、様々な機能を使いこなすことで、それなりに「意図的な画像」を作ることも出来る。800万画素の画像ながらSNSやブログで使うには必要十分な画質の絵が撮れる。単三電池で動作するので、専用バッテリーも充電器もいらない。形状だって、けっしてスマートではないが、コロッとしていて可愛い。さほどお金をかけずに、毎日遊べるおもちゃが手に入るはずだ。

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