【書評】徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと/ちきりん
……00.概要
誰もが「建築」との初めての接点は自宅であり、それを新しくしようと考えていると、新しい未来の暮らしにワクワクが止まらなくなる。
建築を生業としている人にとっては、この道を志そうとした時の原点はこんなところにある人が多いのでは無いでしょうか。
この本では、著者本人が住宅をリノベーションし、新たな暮らしに高揚しつつ、素人には分かりにくいことを解説し、顧客目線で何にきおつけるべきかを伝えることを目的としている。
建築の専門家として、顧客目線から書かれた本書から学んだことをまとめてみました。
……01.ディテールを気にするのは建築家だけ
「神は細部に宿る」ともいうだけあって、建築設計者は、ディテールに相当なこだわりを持っているのだが、ここが最も顧客との熱量に差が生まれるポイントである。正直に言って、顧客が大切なのは「使いやすさ」「パッと見たかっこよさ」だ。それがあれば十分なのです。
ですから、設計者は建築を難しく考えすぎているのかもしれません。人を幸せにできる建築って案外簡単なものなのかもしれませんね。
……02.設計者の役目は、お客様の建築専門的知識量に応じて言葉の位を揃えて説明してあげること
建築を仕事にしてきた人ならわかるように、建築の専門性は底なしに深く、つまり素人には分かりにくいです。ですから、最低限必要な専門知識をお客様の理解できる言葉に直して説明してあげる必要があります。
本書より、お客様目線で認識したいであろう情報は以下かと思いました。
①〈全体像〉リノベ・リフォームの違い
本書P11 マンションのリノベ・リフォーム規模レベル より引用
上記の図のように、どの程度の規模の更新を希望するかによって、できる範囲が決まります。余談ですが、⑦は私が付け加えましたが、私は⑦と新築を主に仕事としておりました。
②〈スケジュール感〉設計から竣工までの全体像。お客様はいつまでに、何を決めるのか。設計者はどのタイミングで何を検討しているのか。
④〈ご要望に対して、出来ること、出来ないこと〉構造躯体形状(スリーブ、スラブ段差、梁柱、耐力壁)、建築基準法、管理組合、PSの位置、電気容量等が絡んでいるということ
④〈お金の話〉見積もりの内訳
お客様は詳しいことがわかりませんから、お互いに信頼し合いながらプロジェクトを進めていくために、丁寧に説明していくことが大切かと思いました。
……03.その中でも最も大切なこと
本書ではビジネスタイプを「等価値交換型」と「共同プロジェクト型」の2つに分類しています。
前者は、お金を払う代わりに、等価の価値を提供することで成り立っているビジネス ex)小売業
一方で後者は売り手と買い手が共同して価値をうみ、生み出された価値を共に分け合うビジネス。ex)医療
医者は専門知識や技術を提供しますが、患者が言われた薬を飲まなければ何の効果も得られません。医者と患者の協力によって共に直していきます。
リノベも共同プロジェクトであるということを、お客様にしっかりと認識してもらうこと!!これは、私の実体験からもとても大切です!!
具体的になぜ良いかというと、リノベには着工後に解体してみないとわからないことがたくさんあります。問題が発生して、その都度共に考えなくてはなりません。「お金を払っているのだから、問題が起こるなど許さない!建築のプロなのだから、良いものを提供しなさい!」と認識されてしまっては、うまく進みません。ですから、設計者側が、共同プロジェクトであることを教育しなくてはなりません。
……04.自分の強みをお客様に伝えてあげること
東京には様々なリノベ会社・設計事務所があります。その中でたった1社を選部わけですから、強みが何かを明確に伝えましょう。
◯土地・不動産探しが得意か
◯デザイン性の高いプランを設計できるか
◯竣工後のアフター保障が充実しているか
◯経験が豊富か
◯金融機関との交渉に慣れているか
◯住宅の設備を安く仕入れられるか
◯お付き合いのある施工業社があるか etc.
お客様は依頼する企業の選択基準を各々持ってるはずですから、強みを理解してもらうことで、お互いが求め合うことがマッチできるはずです。
……05.最後に
上司からもよく言われておりましたが、デザインに正解不正解はありません。設計者がどれだけお客様の立場に立って、一緒に考えられるか、また、お客様がどれだけ設計者を信頼できるかが大切です。本書でいう、共同プロズエクト型ビジネスです。
答えのない仕事で大切なのは、知識よりも何よりも人間性なのですね。
再認識させていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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