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年頭に当たって

 明けましておめでとうございます。どちらさまも健やかに輝かしい新年をお迎えになられたことをお祝い申し上げます。旧年中は様々な面で大変お世話になりありがとうございました。令和6年も引き続きよろしくお願いいたします。
 
 さて、昨年は首長専門情報誌『首長マガジン』を創刊させていただき、年内には第2号もお届けすることができました。この雑誌は、首長経験者を中心に自治体経営において遭遇する判断や決断について首長自身がどのように悩み苦しみ悶えながら答えを絞り出していったかという点を中心に共有できる知を炙り出して提供することで、常に孤独な判断や決断を迫られる首長に対する支えとエールになればと思い、わが国の民主制度の基盤となる地方自治を厚くするために創り出したものです。新型コロナウイルス感染症が猛威を奮うなかで注目された首長の重要な役割を再認識しつつ、責任を全うできるように首長に対する多彩な情報を提供することとしています。
 
 第2号に対しても、「非常に読みごたえがあった」「中身がありすぎ」「読み込んでいたら会議に遅れそうになった」などのポジティブな感想がたくさん寄せられていますし、中には「部長が欲しいと言っている」「職員に読ませたいので回覧した」「秘書が読みたくなって市長より先に読んでいた」など、これまでヴェールに包まれてきた自治体経営のノウハウを共有する新しいプラットフォームとして順調な滑り出しができたのではないかと考えております。自治体と同じように経営体である企業経営にも参考になるところもあるのではないかと関係方面とは情報交換を重ねている一方で、ここだけの話を重視する首長に対して一般的ではない企業情報をダイレクトに伝えたいという企業のみなさんにも誌面をご利用いただければとも考えています。地方創生や公民連携などでご興味をお持ちの企業があればご連絡ください。
 
 大晦日に飛び込んできた目立たないなかでも大きなニュースとして、ロシア海軍黒海艦隊がセヴァストポリ軍港を放棄するのではないかというブルームバーグの情報がありました。昨年4月に黒海洋上で艦隊旗艦であるミサイル巡洋艦モスクワを喪失したあと、昨年末12月26日のフェオドシヤ港での強襲揚陸艦ノヴォチェルカッスク被弾まで少なくとも20隻もの軍艦を失うに至りました。また、セヴァストポリの黒海艦隊司令部も巡航ミサイルの直撃を受け、同地の脆弱性が露呈したことで軍港から艦船を撤退させ始めたということです。これが事実であるとするとクリミア半島の防衛はほぼ不可能となり、2014年のクリミア侵攻が無為に期しかねません。しかも、アブハジアに海軍基地を建設しようとしたところグルジアが反対したということなので、ロシア大統領選挙も控えた今年のウクライナ情勢は複雑さを増していくと言えます。
 
 一方で、タイムズは英米が紅海で船舶に対する無差別攻撃を繰り返すイエメンの反政府勢力フーシ派の拠点に対して空爆を行う姿勢だと伝えています。実際に大晦日には米軍がフーシ派の武装ボート3隻を沈めていますが、地上のミサイル基地への空爆となるとサウジアラビアの反応も厳しくなるでしょうし、ハマスの襲撃に端を発したイスラエルによる非対称戦が中東の不安定性をさらに拡大してくるでしょう。昨年9月に最高値を付けた原油価格が下落傾向で、中国の不動産バブルの崩壊などを受けて今年も引き続き低位で安定すると予想されていましたが、今後一気に急上昇する可能性もあり、注視が必要です。
 
 その中国は昨年末の30日に習近平主席が人民解放軍指揮下の海警局に対して尖閣諸島について「1ミリたりとも領土は譲らない。釣魚島の主権を守る闘争を不断に強化しなければならない」と述べたとされています。海警局としては、今年は毎日必ず尖閣周辺に艦船を派遣し、必要時には日本漁船に立入検査をするという計画を策定したそうで、海上保安庁や海上自衛隊にも緊張が高まります。東南アジア諸国とともに海上の自由と法治を守る姿勢を示す必要があります。若者の高い失業率を生み出す中国経済の失速が習近平指導部の足元を不安定なものとしていますし、そのためにも31日夜の新年演説で台湾について「祖国統一は歴史の必然であり、台湾海峡両岸の同胞は手を携え、心を合わせ、民族復興の偉大な栄光を分かち合うべきだ」と統一政策を掲げ続けなければならなくなっています。北朝鮮は31日に韓国を敵国認定して武力統一の可能性を示しましたが、台湾では今月13日に総統選挙があり、中国は3月5日に全国人民代表大会を予定しています。こうした政治日程を見ながら経済の先行きを予想していかなければなりません。
 
 こういう厳しい国際情勢下であるにもかかわらず、わが国の政界では自民党安倍派、二階派を中心に各派閥の裏金づくりに関して年末に東京地検特捜部が強制捜査を開始しました。これまで権力の中枢を担ってきた政治家に一斉に疑惑の目が向けられており、捜査の先行きによってはいわゆるパージ状態となり、政治がこれまでとは違う方向に流れていく可能性もあります。検察の捜査は政治資金規正法上の記載の有無で議論がされていますが、問題は裏金が政治資金としての目的以外にも使える金を非課税で流通させていることであり、税制に対する国民の信頼喪失につながることで、わが国の根幹を揺るがす重大な事件なのです。しかし、野党側も日本維新の会は関西大阪万博の事業費高騰問題で失速しつつあり、分裂を繰り返す旧民主党に対する国民の視線も冷たく、政界再編には程遠いことが国民の政治に対する失望感を高めています。だからといって下を向くのではなく、政治を自らの手に取り戻す絶好の機会に国民自身が自らの手で未来をつくる気概を持たなければならないでしょう。
 
 その第一歩は、憲政の基盤であり民主主義の学校である地方自治を確かなものとして行くことです。身近な政治にすら関わらないのに国政を論じても思いが届くことはあり得ません。今年は衆議院の解散総選挙が当面遠のいたのとは対照的に、1月の大津市長選挙から始まり、2月の京都市長選挙や前橋市長選挙、3.月の対馬市長選挙、4月の徳島市長選挙や目黒区長選挙、5月の小田原市長選挙や御坊市長選挙、6月の沖縄県議か議員選挙や港区長選挙、7月の東京都知事選挙や河内長野市長選挙、印西市長選挙、門真市長選挙、綾瀬市長選挙、鹿児島県知事選挙、そして「恥を知れ!」の安芸高田市長選挙と注目の地方選挙が目白押しです。ぜひ身近な選挙に注目するだけでなく参加してください。

 今年は甲辰(きのえたつ)の年です。甲は十干の最初であり、硬い種から芽吹く、成長するという意味がありますし、空想の生き物である辰には縁起物や栄える、整うという意味があります。ちなみに、AIに甲辰とはどういう年なのかを聞いてみると、「甲辰は、干支の一つで、干支の組み合わせの41番目になります。甲辰の年は、西暦年を60で割って44が余る年となります。陰陽五行では、十干の甲は陽の木、十二支の辰は陽の土で、相剋(木剋土)となります。2024年は甲辰の年で、成長・開運の年とも言われています。活気にあふれる芽吹きの年とも表現されています。」ということでした。60年前の昭和39年は東京オリンピックが開かれ、東海道新幹線や名神高速道路が開通してわが国の高度経済成長を力強く支えた年でした。その60年前は明治37年、日露が開戦し、厳しいながらも戦線を拡大し、その後の戦勝と世界3大国への階段を上る基盤を創り出した年でもありました。その60年前は天保14年から弘化元年に改元されましたが、欧米のアジア侵略に際してオランダ国王が江戸幕府に対して開国を勧告し、フランス共和国の軍艦が琉球に来航するなど幕府体制の転換を促し始めた年でした。いずれも世の中の変化が大きくなる年であるとも言えるでしょう。
 
 今年は、ぜひとも古い知恵を大切にしつつ最新の情報を取り入れながらそれらを総合的に咀嚼し、新しい展開につなげて面白いことを開始できる年となればと思います。そのためには多くのみなさんの知恵や力がつながる必要があります。旧年に倍するおつきあいを賜り、みなさんとともに地方から日本を元気にしてまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

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