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見ることを支えること


Lさんの多様で深い興味関心のひとつひとつが、私をいろいろな気づきに導きました。

私は見ることの支援に興味を持ってきました。お子さんを取り巻く環境を工夫することによってお子さんが直面している「見えにくさ」が軽減されていく過程に、ヒトの可能性の大きさも感じていました。

Lさんは自分で姿勢を変えたり頭を動かすことが難しかったので、興味関心の塊のLさんにとって「周囲」は「知りたい」で満ちているだろうな思うようになりました。Lさんが私に提示した課題だと感じていました。

ある日、Lさんは自宅近くのバス停から路線バスに乗って近くの駅まで行くことになりました。バスに乗っている間、Lさんは天井の方を見続けることになるので、「きっと周囲の景色を知りたがるだろうな」と思いました。

そこで、YouTubeでそのバス路線の「前面展望風景」を検索すると、やっぱりちゃんとありました。交通ファンは偉大です。その動画を自宅近くから駅までの展望風景に編集してiPadの画面を見せる「予習」をすることにしました。

交通機関の風景動画はかなりの確率で見つかるのですが、問題はストレッチャー型の車椅子で「歩いて」出かけるときでした。Lさんはやはりずっと空を見ることになってしまいます。

いろいろと情報を収集した結果、Amazon Fire 7タブレットとパソコン用のウェブカメラを使うと、リアルタイムでタブレットの画面にカメラの映像を映すことができそうだということがわかったので早速トライ。結果、安価なシステムでリアルタイムで周囲の状況をLさんに見せることができるようになりました。

必要は発明の母。すべてLさんの強い興味関心の賜だと思いました。

以降、スクーリングで学校に行くときも、校外学習に行くときも、修学旅行のときも、常に周囲の視覚的な情報をLさんの目前に提示できるようになりました。

その後、新しいAmazonのFire 7タブレットではウェブカメラを認識しなくなったことから、アクションカメラの画像をWi-Fi接続でiPadの画面に提示するシステムに更新しました。今では他のお子さんも同じシステムを使って周囲の状況を見て確認できるようになりました。

きっかけを作ったのはLさんでした。

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