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手に指文字を入れると嬉しそうに笑った Iさん

1983年から2021年3月まで特別支援学校に務めていました。2021年3月に定年退職。運動やコミュニケーションに大きな制約があるお子さん(重度重複障害児という表記には違和感を感じるようになりました)からとても多くのことを学びました。そのことを書き綴っていきたいと思います。

学生時代に50音の指文字を覚えました。指文字はそれぞれ由来があるのでとても覚えやすいです。

運動に制約があるお子さんの中に、視覚をうまく活用することが難しいお子さんが少なくないことを知ってからのことでした。記号としてのことばの存在をわかりやすく伝える手がかりとして指文字を用いることにしました。

子どもに話しかける際に、手の中に指文字も入れて伝えるのです。手がかりになるかどうか確信はないのですが、指文字を使わなければ手がかりはないということになってしまいます。全くないよりわずかでもあった方がいい。それに指文字は道具立てを必要とせず「ただ」だし。

そんなことを始めてから、Iさんに変化がありました。指文字を手に入れるときに嬉しそうに笑うのです。

ただ話しかけられるのとは違うのだなと思いました。指文字を形ではなく、自分に話しかけてるという実感かもしれません。聞こえることばのリズムと手に感じる触覚のリズムが合うからなのかもしれません。もしかしたら、形の違いに気づいているかもしれません。

とにかく喜んでくれるので続けて取り組んでいました。後にわずかな手がかりでも意味があることに確信を持てるようになりました。

喜んでくれたのは Iさんからの「応援」だと今でも思っています。


補記:50音の指文字表を見たい場合はこちらへ。https://happylilac.net/sk1805311413.html

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